「人間ドックの内容」とは?基本的な検査内容から追加できる検査コースまで解説!【医師監修】

人間ドックの内容とは?基本的な検査内容から、追加できる検査コースまで医師が徹底解説

監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
人間ドックとは?
人間ドックは、病気の早期発見や予防を目的とした総合的な健康診断です。通常の健康診断よりも詳しい検査が行われ、さまざまな病気のリスクを評価します。人間ドックは、日帰りから宿泊型まで多様なプランがあり、自分の健康状態に合わせて選ぶことができます。
今回の記事では、人間ドックの基本的な内容から追加オプションまでご紹介します。
人間ドックの基本的な内容
身体計測
身体計測では、身長、体重、BMI(body mass index:体格指数)、腹囲などの基本的な体のサイズを測定し、肥満や痩せすぎのリスクを評価します。
内臓脂肪CT検査では、お腹をCTで撮影し、内臓脂肪面積を測定します。正常では100㎠未満です。内臓脂肪型肥満や、皮下脂肪型肥満などの測定をします。
血圧測定
血圧測定では、高血圧や低血圧のリスクをチェックし、心臓病や脳卒中の予防に役立てます。
高血圧はサイレントキラーと呼ばれるように、それ自体ではほとんど症状がありません。しかし、脳血管障害(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血)や、心疾患(狭心症や心筋梗塞)、腎機能障害などが合併症として上がります。そのため、注意が必要です。
心電図
心電図は、心臓の電気活動を記録し、不整脈や心筋梗塞などの心疾患を早期に発見します。
心臓は筋肉でできた臓器で、心臓の筋肉である心筋を流れる微量の電気信号を記録したものが心電図です。
心臓の拍動やリズムの異常(不整脈)、心肥大、心筋の虚血(きょけつ;狭心症や心筋梗塞など)がわかります。
眼科検診
眼科検診では、視力検査や眼底検査を行い、白内障や緑内障、糖尿病網膜症などの目の病気をチェックします。
その他、眼圧検査も行われることがあります。これは、目に風を当てて、眼球の中の圧力、すなわち眼球の硬さを測定します。
眼圧が低い場合には網膜剥離(もうまくはくり)や外傷、高い場合には高眼圧症、緑内障などが疑われます。
聴力検診
聴力検診では、聴力の低下や難聴の有無を確認し、必要な場合は早期の治療が勧められます。
主に1000Hz(低音域)と4000Hz(高音域)の聴力を調べます。
呼吸機能検査
肺活量や気道の健康状態を測定し、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息のリスクを評価します。
1秒率の低下、つまり閉塞性(へいそくせい)換気障害では、肺気腫や気管支喘息、慢性気管支炎などが疑われます。
肺活量比の低下、つまり拘束性(こうそくせい)換気障害を来す疾患には、肺線維症や間質性肺疾患、気管支拡張症、胸膜疾患などがあります。
胸部エックス線
胸部エックス線検査は、レントゲン検査とも呼ばれます。
肺炎や気胸、肺気腫といった肺の異常の他、心肥大や大動脈の異常、脊柱の側弯症や骨折などを検出することができます。
CT検査と比べると、放射線被ばく量が少なく、短時間で検査できることが特徴です。
胸部単純エックス線検査の被ばく線量は、約0.06mSvです。
上部消化管エックス線(上部消化管内視鏡)
上部消化管エックス線検査や上部消化管内視鏡検査は、上部消化管検査です。
上部消化管エックス線検査は、バリウムを用いて食道や胃・十二指腸上部(上部消化管)に異常がないかどうかを調べるレントゲン検査です。
胃・十二指腸潰瘍や胃のポリープ、胃がん、食道がんなどの検出に有効です。
検査の注意点としては、検査後に十分に水分を取り、便が固まらないようにすることがあります。
上部消化管内視鏡検査は、カメラを装備したスコープを鼻や口から挿入し、食道や胃、十二指腸を観察します。ポリープやがん、胃粘膜の萎縮や逆流性食道炎の程度などを診断することが可能です。
必要な場合には、組織をとる生検を行い、悪性かどうかを調べることも可能です。また、鎮静薬を使い、苦痛を和らげる方法もあります。
腹部超音波検査
肝臓、胆のう、膵臓、腎臓といった内臓の状態を超音波で確認し、肝硬変、胆石、膵炎、腎臓病などの異常を早期に発見します。
血液検査
血液検査は人間ドックの中でも重要な検査の一つで、血液中の成分を詳しく分析することで、さまざまな病気の早期発見やリスク評価を行うことができます。
血液一般検査 | 内容 |
---|---|
赤血球数(RBC) | 赤血球は酸素を全身に運ぶ役割を果たします。赤血球数が低いと貧血、高いと多血症の可能性があります。 |
白血球数(WBC) | 白血球は免疫機能を担い、感染症や炎症の有無を示します。数値が高いと感染症や炎症、低いと免疫不全の可能性があります。 |
血小板数(PLT) | 血小板は血液の凝固に関与します。数値が低いと出血傾向、高いと血栓症のリスクがあります。 |
貧血検査 | 内容 |
ヘモグロビン(Hb) | ヘモグロビンは赤血球に含まれる酸素運搬蛋白です。低値は貧血、高値は多血症を示します。 |
ヘマトクリット(Ht) | 血液中の赤血球の割合を示します。低値は貧血、高値は脱水や多血症を示します。 |
肝機能検査 | 内容 |
AST(GOT)/ALT(GPT) | 肝臓の健康状態を示す酵素です。高値は肝細胞の損傷を示し、肝炎や肝硬変の可能性があります。 |
γ-GTP | アルコール摂取や肝障害の指標となります。高値はアルコール性肝障害や胆道疾患を示すことがあります。 |
腎機能検査 | 内容 |
クレアチニン(Cr) | 腎臓の機能を示す指標です。高値は腎機能低下を示し、腎不全のリスクがあります。 |
血中尿素窒素(BUN) | 腎機能や蛋白質代謝の状態を示します。高値は腎機能低下や脱水を示すことがあります。 |
脂質検査 | 内容 |
総コレステロール(TC) | 血液中の全コレステロール量を示します。高値は動脈硬化のリスクを高めます。 |
HDLコレステロール | 善玉コレステロールとも呼ばれ、動脈硬化予防に重要な役割を果たします。低値は動脈硬化リスクを示します。 |
LDLコレステロール | 悪玉コレステロールとも呼ばれ、動脈硬化の原因となります。高値は動脈硬化リスクを示します。 |
中性脂肪(TG) | 血液中の脂肪の一種で、高値は動脈硬化や心血管疾患のリスクを示します。 |
糖代謝検査 | 内容 |
空腹時血糖(FBS) | 血液中の糖分量を示し、糖尿病の診断に用いられます。高値は糖尿病のリスクを示します。 |
HbA1c | 過去1〜2ヶ月間の血糖値の変動をみる指標です。 |
電解質検査 | 内容 |
ナトリウム(Na) | 体内の水分バランスや神経、筋肉の機能を維持します。異常値は脱水や腎機能異常を示します。 |
カリウム(K) | 心筋や骨格筋の機能に重要な役割を果たします。異常値は心臓や腎臓の問題を示すことがあります。 |
カルシウム(Ca) | 骨や歯の形成、筋肉の収縮、神経伝達に重要です。異常値は骨代謝や腎機能に関連する問題を示します。 |
その他の検査項目 | 内容 |
CRP(C反応性蛋白) | 炎症の程度を示す指標で、感染症や炎症性疾患の有無を確認します。 |
フェリチン | 体内の鉄の貯蔵状態を示し、鉄欠乏性貧血の診断に用いられます。 |
尿検査
尿の成分分析をすることで腎臓や尿路の健康状態を確認し、尿路感染症や腎臓病の早期発見に役立ちます。
便潜血検査
便に血液が混じっているか調べる検査です。これは、大腸がんのスクリーニング検査として行われます。ポリープや腸炎、痔でも陽性になることがあります。2回便をとってもらいますが、1回でも陽性になった場合には精密検査が必要です。
内科検診
内科検診では、医師による問診と診察が行われます。
眼瞼(がんけん)結膜や眼球結膜の評価、首の触診、胸部の聴診や腹部触診などが行われます。
総合的な健康状態を評価し、生活習慣の改善や必要な治療をアドバイスします。
その他の検査コースの内容
脳ドック
脳ドックは、脳疾患の早期発見や発症予防のためのオプションドックです。
MRI(magnetic resonance imaging;磁気共鳴画像検査)や、MRA(MR angiography; 磁気共鳴血管造影)等が検査項目に含まれます。
施設によっては、認知症検査も行っています。
脳ドックでは、無症候性脳梗塞や未破裂動脈瘤、頸動脈狭窄、虚血性脳白質病変、初期認知機能障害等があります。重症が疑われる場合には、脳神経内科等の受診が勧められます。
PET検診
PET検診(PETドック)は、悪性腫瘍(がん)や心臓、脳を調べるものがあります。ここでは悪性腫瘍を調べるものについて解説しましょう。
PET(Positron Emission Tomography、陽電子放出断層撮影)検査では、多くはFDG(放射性フッ素を付加したブドウ糖)を使います。
PET検診では、臓器や部位を問わず、全身のがんを原発巣や転移巣を含めて一度に検査できるという利点があります。
心臓ドック
心臓ドックは、運動負荷や長時間の心電図観察によって、日常活動や運動中の評価を行います。運動負荷心電図検査では、自転車エルゴメーターなどの装置で運動をしている最中の心電図記録をとります。また、ホルター心電図検査では、日常生活中に心電図を24時間記録します。このような検査では、虚血性心疾患や不整脈をより早く発見することが可能です。
また、心臓超音波検査では、心臓の形や動きを痛みなどなく観察することができます。
胃がん検診
胃がん検診は、男女ともに50歳以上の方は2年に1回受けることが推奨されています。
胃がん検診で今のところ胃がんによる死亡を減らせるとして科学的に証明されているのは、胃X線検査と胃内視鏡検査です。
施設によっては、ヘリコバクターピロリ抗体検査やペプシノゲン検査など、ピロリ菌感染の有無などから胃がんリスク判定を行なっているところもあります。
大腸がん検診
大腸がん検診は、男女ともに40歳以上の方は年に1回受けることが勧められています。
大腸がん検診の基本は、便潜血検査です。その他、大腸内視鏡検査や大腸CTなどが受けられる施設もあります。
肺がん検診
肺がん検診は、男女ともに40歳以上の方について年に1回受けることが推奨されています。
たばこをたくさん吸うハイリスクの方に対しては、肺のエックス線検査に加えて喀痰細胞診(痰をとって悪性の細胞が無いかをチェックする検査)が勧められます。
最近では、低線量CTという被ばく線量を通常のCTの1/3以下に抑えられる検査もあります。
メンズドック
メンズドックは、基本的な健康診断の項目に加えて、男性特有の前立腺がんや前立腺肥大といった病気の発見を目的としていることが多いと考えられます。
医療機関ごとに多少は異なるものの、PSA(前立腺特異抗体)検査や、前立腺の超音波検査・MRI検査などもあります。
レディースドック
レディースドックは、基本的な健康診断の項目に加えて、子宮がん検診や乳がん検診を加えたコースです。女性ホルモンの値をチェックする項目が追加されていることもあります。
女性専用のフロアが用意されていたり、女性医師並びにスタッフは女性のみ、などの用意がされていたりするクリニックもあります。
婦人科検診
婦人科検診は、一般的には子宮がん検診のことを指すことが多いです。
がんのほかにも、子宮筋腫や卵巣嚢腫といった婦人科系の疾患がないかを調べることもでます。
乳がん検診
40歳以上の女性の方は、2年に1回乳がん検診を受けることが推奨されています。
乳がん検診では、乳房エックス線検査(マンモグラフィ)が乳がんによる死亡リスクを下げることが示されています。若い方で乳腺が発達している方などでは、乳房の超音波検査を加えることが望ましい場合もあります。
子宮がん検診
子宮がんは、大きく分けて子宮の入り口にできる子宮頸がんと子宮の奥にある内膜にできる子宮体がんの2つに分けられます。
子宮頸がん検診は、子宮頸部細胞診という子宮頸部を専用の器具でこすって細胞を採り、調べる検査が効果的といわれています。
一方、子宮体がんに対しては子宮頸がんのようながん検診として推奨されているものがあるわけではありません。子宮の入り口から超音波検査を行うことで、子宮体がんの見落としがないような検査を行えると考えられます。
「人間ドックの内容」についてよくある質問
ここまで人間ドックの内容について紹介しました。ここでは「人間ドックの内容」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
女性と男性の人間ドックの内容の違いは何ですか?
木村 香菜 医師
女性と男性の人間ドックの内容は基本的には同じですが、女性には乳がん検診や子宮がん検診などの婦人科系の検査が追加されることが多いです。男性には前立腺がん検査などが含まれます。
人間ドックは日帰りですか?宿泊ですか?
木村 香菜 医師
人間ドックは日帰りプランと宿泊プランがあります。日帰りプランは時間が限られている方に適しており、宿泊プランはより詳しい検査を受けたい方におすすめです。
まとめ 定期的な人間ドック・健康診断で体調を評価しましょう
人間ドックは、健康を維持するための重要な手段です。定期的に受診することで、病気の早期発見や予防が可能になります。各検査の結果をもとに、必要な治療や生活習慣の改善を行いましょう。
「人間ドック」の異常で考えられる病気
「人間ドック」から医師が考えられる病気は29個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
血液内科の病気
腎臓内科の病気
人間ドックでは、さまざまな病気がわかります。異常が見つかった場合には、専門医を受診するようにしましょう。