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「大腸がん」とは?症状・原因・治療方法も解説!【医師監修】

 更新日:2023/06/30
「大腸がん」とは?症状・原因・治療方法も解説!【医師監修】

大腸がんは、日本人の発がん順位の3位のがんです。

多くの患者さんがおられますが、早期発見・早期治療で術後の生存率がとても高く回復する可能性の高いがんでもあります。

自覚症状が少ないため、発見が遅れることが多いがんですから積極的に検診を受けたり症状の有無を気にすることが大切です。

今回は大腸がんの原因や症状、そして治療法・がん検診について詳しく説明します。

武井 智昭

監修医師
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

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【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

大腸がんの原因と症状

お腹が痛い中高年男性

大腸がんはどのような病気ですか?

大腸がんは、大腸の内側の粘膜の部分に発生するがんです。
盲腸がん、結腸がん、直腸がん、虫垂がん等も大腸がんの一種となります。
ポリープからがんに変異するケースと正常な細胞が直接がんに変異するケースがあります。自覚症状が少ないことから、定期的な検診をおすすめしています。
便潜血検査などの簡単な検査から始めるとよいでしょう。

大腸がんの原因が知りたいです。

大腸がんの要因として考えられることは、運動不足・食物繊維不足・肥満・飲酒などが考えられます。
また、家族に大腸がんの発症歴がある場合は、リスクが高いとされています。
腸の病気の影響でがんになりやすいという事例もありますので、気を付けましょう。

腫瘍の位置によって症状は異なりますか?主な症状を教えてください。

盲腸・上行結腸・横行結腸などで発症した場合は、症状を発見しずらくがんが大きくなってから腹部のしこり・血便による貧血・体のだるさなどの症状が見られます。
下行結腸・S字結腸で発症した場合は、便通異常があり気づくことが多いです。症状が進むと腹痛などの症状が現れます。
直腸で発症した場合は、出口に近いため出血があることで気づく方が多いです。がんが進むと、腹痛や残便感が現れます。

早期の段階では無症状のことが多いのですね。

自覚症状がほとんどありません。がんが進行すると、血便・下血・下痢・便秘・残便感・腹痛・貧血・体重減少が見られます。

大腸がんの診断と治療方法

採便キット

受診の目安を教えてください。

大腸がんは、症状が現れにくいため、便鮮血検査などを年に1回以上、計画的に行うことが大切です。
しかし、実際には、多くの方は症状が現れてから病院に行くことが多く見られます。
この場合、大腸内視鏡が可能である専門の消化器科に相談することが必要です。

大腸がんを疑ったらどのような検査を行いますか?

便潜血検査の結果医師から精密検査を勧められたり症状が出ていたりしている状態でしたら、大腸内視鏡検査が必要です。
大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡(大腸カメラ)を挿入して観察する方法です。
直接観察するため、病変をはっきり確認することができます。また、3DCT検査が実施されることもあります。

病気の進行によって分類があると聞きます。

大腸がんは、その進行によって5つのステージが定められています。

  • ステージ0:がんが粘膜上にある
  • ステージⅠ:がんが大腸の壁にとどまっている
  • ステージⅡ:がんが大腸の壁にまで浸潤している
  • ステージⅢ:リンパ節への転移がある
  • ステージⅣ:他の臓器への転移がある

このように段階に分かれていますから、できるだけ初期の段階に発見するように日頃から気を付けること・検診を受けることを大切にしてください。

大腸がんの治療方法を教えてください。

がんの治療法には、内視鏡検査・手術・薬物療法・放射線治療・早期がんでは、内視鏡的な治療があります。
治療は患者さんのがんの進行度合い・体調・年齢・合併症などを考慮して決定されます。
がんが切除できる場合とできない場合で治療法を決めなければなりません。がんの進行の状況によって、適切な治療法を決定します。
内視鏡的治療では、盛り上がった腫瘍に対して行われる治療で、高周波電流により腫瘍を焼き切るポリペクトミー、盛り上がっていない2cm以下の腫瘍に対して行われる治療で、腫瘍ができている粘膜の下に液体を注入し、焼灼するEMR(内視鏡的粘膜切除術)、盛り上がっていない腫瘍で、EMRでは取れないような大きさの腫瘍が対象で、腫瘍ができている粘膜の下に液体を注入し、腫瘍を盛り上がらせてから、腫瘍の周囲を内視鏡の先端についた電気メスで焼き切り、粘膜下層からはがし取るESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)があります。

大腸がんの予後とがん検診の重要性

車椅子の男性と介護士

大腸がんの予後について知りたいです。

大腸がんでは、進行の度合いによって予後の生存率が異なります。ステージと3年生存率・5年生存率は次の通りです。

  • ステージ0:3年生存率93.0%、5年生存率90.5%
  • ステージⅠ:3年生存率87.9%、5年生存率79.8%
  • ステージⅡ:3年生存率76.1%、5年生存率64.3%
  • ステージⅢ:3年生存率83.4%、5年生存率72.0%
  • ステージⅣ:3年生存率18.3%、5年生存率10.3%

ここでもお分かりになると思いますが、早期発見・早期治療が予後を伸ばすということです。

手術によって日常生活にどのような影響がありますか?

手術は、内視鏡による手術と外科的手術に分かれます。
内視鏡手術はカメラを大腸に入れて患部を切除するため体への負担が軽く、治療後1週間前後で日常生活を送れるまで回復可能です。
この復帰には、患者さんの状態や術後のリハビリの状況によって多少の差はあると考えてください。
進んでリハビリや運動を行ってもらいますが、激しい運動は数ヵ月は我慢しなければなりません。

大腸がんを予防する方法はありますか?

がん予防には、禁煙・節酒・食生活・身体活動・適正体重の維持の5つの生活習慣に気を付けて生活することが大切であるとされています。
この5つを実践している人と1つ以下の場合を比べると、男性で43%・女性で37%がんになるリスクが低くなることが示されています。
禁煙については、自分でタバコを吸わないことはもちろんですが、人が吸っている煙を避けることも大切です。
節酒は、アルコールの摂取量によってがんになるリスクが高くなることが分かりました。
1日のアルコール摂取量(エタノール量に換算)が23g未満の人に比べて、46g以上の場合40%発がんのリスクが高くなります。
食生活の見直しから考えると、減塩がとても大事です。1日の食塩の摂取量は、男性8.0g未満・女性7.0g未満を推奨しています。
減塩とともに取り組みたいことが野菜・果物をとるということです。1日の野菜摂取量は350gを目標することが推奨されていますから、積極的に取り組みましょう。
身体運動については、毎日60分程度の歩行程度の運動が推奨されています。適正体重も生活習慣の中に気を付けることが必要です。
その基準となる値に「BMI値」といわれる数値があります。この数値は自分でも簡単に計算できますから、時々基準値になっているかどうかを確認することができます。
体重(kg)÷[(m)×(m)]=BMI値で計算してみましょう。男性の標準値は21~27で、女性の標準値は21~25です。
このように自分でできる予防法がありますから、定期的に確認しながら体調管理に気を付けてください。

早期発見のために大切ながん検診について教えてください。

日本では、「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」で法律として検診方法が決められています。
男女ともに40歳以上は年に1回、便潜血検査を行うことが推奨されている制度です。
検診では、体の状態や家族の病歴などの聴取があります。便潜血検査は2日分の便を採取して検査に出し、その結果と合わせて精密検査が必要な場合は知らせてくれます。
「要精検」となった場合は、大腸内視鏡検査などの精密検査の受診を行いましょう。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

大腸がんは、完治が望めるがんです。早期発見で治療に移った患者さんの90%以上の方が回復しています。
そのために、定期的な検診と日常生活での注意点をしっかりと守ることが大切です。
多くの大腸がんの患者さんが早期発見・早期治療で日常生活を取り戻しています。
自分も家族も大腸がんについてもっと知って、不安なときはかかりつけのドクターに相談しましょう。

編集部まとめ

医者に来た中高年男性

大腸がんは自覚症状が少ないがんです。そのため、なかなか初期の段階で気づくことが少ない病気でもあります。

しかし、多くのがんの中で早期発見・早期治療によって90%以上の方が回復している病気です。

ただ不安になったりおびえたりするのではなく、治すために取り組みましょう。日常の生活改善や体質改善を進めることで、発症を予防したり軽減させることができます。

そのためにも、定期的な検診や不安なときに進んで診察を受けるようにしましょう。大腸がんで悩む患者さんも周囲の人も、まずは病気について知るところから始めましょう。

この記事の監修医師