糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンの働きが不足することで、血液中のブドウ糖が高い状態が続く病気です。初期には自覚症状が乏しいこともあり、健康診断で初めて気付く方も少なくありません。高血糖が続くと、網膜症や腎症、神経障害だけでなく、心筋梗塞や脳梗塞などにつながることがあります。女性は、妊娠や出産、更年期といったライフステージの変化が血糖に影響することがあります。妊娠中に血糖の異常を指摘されたり、閉経前後に血糖が上がりやすくなったりすることもあります。また、外陰部のかゆみや月経の乱れなどが受診のきっかけになる場合もあります。
この記事では、糖尿病の基本的な知識を確認しながら、女性にみられやすい症状や、発症しやすい時期について解説します。
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【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科
糖尿病の基礎知識

糖尿病とはどのような病気ですか?
糖尿病は、インスリンの働きが足りなくなることで、血液中のブドウ糖が高い状態が続く病気です。インスリンは膵臓から分泌され、ブドウ糖を身体の細胞に取り込んで、エネルギーとして使う手助けをしています。この働きが弱くなると、血液中に糖がたまりやすくなります。
糖尿病にはいくつかの種類があり、自己免疫などが関わる1型糖尿病と、体質に加えて食事や運動などの生活習慣が関わる2型糖尿病がよく知られています。高血糖が続くと、目や腎臓、神経、血管に負担がかかり、網膜症や腎症、神経障害、心筋梗塞、脳梗塞などにつながることがあります。初期には症状が乏しいこともあり、健診で見つかる方も少なくありません。
糖尿病の原因を教えてください
糖尿病の原因は一つではありません。1型糖尿病は、膵臓の細胞が障害されてインスリンが出にくくなることが原因です。一方、2型糖尿病は、インスリンの効きが悪くなることと、必要な量を分泌しにくくなることの両方が関係します。そこに、食べ過ぎや運動不足、肥満、加齢、生活リズムの乱れなどが重なると、発症しやすくなります。特に内臓脂肪が増えると、インスリンが効きにくい状態につながります。糖尿病は、体質だけでも生活習慣だけでも決まる病気ではなく、いくつかの要因が重なって起こるものとして考えられています。
糖尿病は女性に多い病気ですか?
糖尿病が強く疑われる方の割合は、全体としては男性の方が高いと報告されています。一方で、女性も年齢とともに増えやすく、妊娠や更年期など、女性特有のライフステージが血糖に影響することがあります。妊娠中には妊娠糖尿病が見つかることがあり、その後の糖尿病発症につながる場合もあります。また、閉経後はホルモンの変化により、血糖や体重の管理が難しくなることがあります。そのため、女性は若い時期だけでなく、妊娠中や更年期以降も血糖の変化をみていくことが大切です。
女性にみられる糖尿病の初期症状

糖尿病の一般的な初期症状を教えてください
糖尿病は、初期のうちははっきりした症状が出にくい病気です。そのため、健康診断で初めて血糖の異常を指摘される方も少なくありません。ただし、血糖が高い状態が続くと、喉が渇く、水分をたくさんとる、尿の回数や量が増えるといった変化がみられることがあります。身体の中の余分な糖を尿として身体の外へ出そうとするためです。また、身体が糖をうまくエネルギーとして使えなくなることで、疲れやすさやだるさを感じたり、食事量が変わらないのに体重が減ったりすることもあります。
女性ならではの糖尿病の初期症状はありますか?
女性は、外陰部のかゆみや、腟カンジダ症などの性器の感染症をくり返すことがあります。これは、血糖が高いと酵母が増えやすくなり、感染が起こりやすくなるためです。また、月経不順がみられる場合もあります。月経不順そのものが糖尿病に特有というわけではありませんが、月経周期の乱れの背景に多嚢胞性卵巣症候群がある場合は、月経不順に加えてインスリン抵抗性を伴うことがあり、糖尿病とも関連することがあります。
糖尿病の初期症状と似ている症状を持つ病気はありますか?
あります。例えば、喉の渇きや尿の回数の増加は、尿崩症や副甲状腺機能亢進症などでもみられることがあります。体重減少や疲れやすさは、甲状腺機能亢進症でも起こります。更年期には、発汗、疲れやすさ、気分の変化などがみられ、糖尿病の症状と区別しにくいことがあります。症状だけで判断するのは難しいため、血液検査などで確認することが大切です。
糖尿病が疑われるときは何科を受診するとよいですか?
糖尿病が疑われるときは、まず内科を受診するとよいです。血糖やHbA1cの検査を行い、糖尿病かどうかを確認します。健康診断で異常を指摘された場合や、喉の渇き、多尿、体重減少、疲れやすさなどがある場合は、早めに受診するとよいでしょう。また、目のかすみがあるときは眼科、妊娠中や月経の乱れがあるときは産婦人科で相談することもあります。ただし、どこから受診すればよいか迷う場合は、まず内科で相談し、必要に応じてほかの診療科につないでもらう流れでも問題ありません。
糖尿病の発症リスクが高まるタイミング

妊娠中や更年期は糖尿病のリスクが高くなりますか?
はい。妊娠中や更年期は、女性にとって血糖が変化しやすい時期です。妊娠中は、もともと血糖に問題がなかった方でも、妊娠糖尿病が見つかることがあります。また、更年期にはホルモンの変化や体重の増えやすさなどが重なり、血糖が上がりやすくなることがあります。こうした時期は、体調の変化を年齢や妊娠の影響だけと考えず、必要に応じて血糖を確認することが大切です。特に、妊娠中に血糖の異常を指摘されたことがある方は、その後も注意してみていく必要があります。
妊娠中や更年期に糖尿病のリスクが高まる理由を教えてください
妊娠中は、胎盤から分泌されるホルモンの影響で、インスリンが効きにくくなります。多くの方は、それに合わせてインスリンの分泌が増えますが、十分に対応できないと血糖が上がりやすくなります。これが妊娠糖尿病につながります。一方、更年期においては、女性ホルモンの変化によって脂肪がつきやすくなったり、血糖を保つ働きが変わったりすることがあります。そこに加齢や運動不足などが重なると、糖尿病のリスクがさらに高まります。妊娠中も更年期も、身体の変化が大きい時期だからこそ、血糖の変化にも目を向けることが大切です。
編集部まとめ

糖尿病は、初期にははっきりした症状が出にくい一方で、高血糖が続くと目や腎臓、神経、血管に負担がかかり、さまざまな合併症につながることがあります。女性は、妊娠や更年期などのライフステージの変化が血糖に影響することがあり、一般的な症状だけでなく、外陰部のかゆみや感染症、月経の乱れなどが受診のきっかけになる場合もあります。
また、妊娠中に血糖の異常を指摘された方や、更年期以降に体重や体調の変化が気になる方は、血糖にも目を向けることが大切です。糖尿病は早めに気付き、必要な検査や治療につなげることで、その後の合併症予防につながります。健診結果で血糖を指摘されたときや、気になる症状が続くときは、そのままにせず内科や産婦人科で相談しましょう。