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「2型糖尿病」はニンジンで防げる可能性 ニンジンの知られざる健康効果が研究で明らかに

 公開日:2025/02/03

南デンマーク大学らの研究グループは、2型糖尿病のモデルマウスでおこなった検証で、食事にニンジンを取り入れることが2型糖尿病患者における血糖調節の改善に寄与する可能性を示唆した研究結果を発表しました。この内容について本多医師に伺いました。

本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

研究グループが発表した内容とは?

南デンマーク大学らの研究グループが発表した内容を教えてください。

本多 洋介 医師本多先生

今回紹介する研究は、南デンマーク大学らの研究グループによるもので、その成果は学術誌「Clinical and Translational Science」に掲載されています。

この研究は、モデルマウスにおけるニンジン摂取の代謝効果を調べ、その基礎となるメカニズムを明らかにしました。マウスには「低脂肪食(LFD)」「高脂肪食(HFD)」「ニンジン粉末を10%添加した高脂肪食」の3種類を16週間与え、0週目と16週目に耐糖能(血糖値を調節する能力)を評価するために、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を実施しました。その結果、ニンジン粉末が含まれている高脂肪食を摂取したマウスは、高脂肪食のみを摂取したマウスと比較して、耐糖能の改善がみられました。また、腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の多様性が増加し、有益な細菌が優勢になることも確認されました。一方で、脂肪組織や筋肉の遺伝子発現には大きな変化がみられず、血糖値改善の主な要因は腸内細菌叢の変化である可能性が示唆されました。

今回の研究は、ニンジンに含まれる生物活性成分(例:ファルカリノールやファルカリンジオール)を活用した2型糖尿病向けの効果的な食事療法の可能性を示していますが、その作用メカニズムをさらに詳しく研究する必要があります。

今回の研究内容である2型糖尿病とは?

今回の研究テーマにもなった2型糖尿病について教えてください。

本多 洋介 医師本多先生

2型糖尿病は、血糖値を調整するインスリンの働きが低下したり、インスリンの分泌量が不足したりすることで、慢性的に高血糖状態になる病気です。遺伝的要因に加え、過食や運動不足などの生活習慣が重なることで発症すると考えられています。また、糖尿病には1型もあり、1型糖尿病は自己免疫疾患が原因でインスリンを分泌する膵臓の細胞が破壊される病気です。そのため、1型糖尿病患者はインスリンの自己注射が必要になります。

高血糖の状態が続くと、網膜症(目の病気)、腎症(腎臓の機能低下)、神経障害(手足のしびれや痛み)といった合併症を引き起こすリスクがあります。また、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患の発症リスクも高まります。

2型糖尿病の予防には、バランスのとれた食事、適度な運動、体重管理、そして禁煙が重要です。例えば、1日30分のウォーキングや野菜を意識的に多く摂る食生活が効果的です。これらの取り組みは糖尿病の予防だけでなく、健康的な体づくりにもつながります。ただし、2型糖尿病は生活習慣以外の原因が関係している場合もあるため、気になる症状があれば早めに医療機関で相談することをおすすめします。

研究内容への受け止めは?

南デンマーク大学らの研究グループが発表した内容への受け止めを教えてください。

本多 洋介 医師本多先生

ニンジン粉末が血糖や腸内細菌に対して好影響を及ぼすことが、今回の研究で示されました。今後、研究が進むにつれて、人間の場合にも同様の効果があるのか、その場合にはどれくらいの量を摂取したらいいかなどの報告が進んでくるでしょう。

一般的に糖尿病の予防・治療の面での食事療法では「野菜を摂りましょう」と言われるものの、どの野菜を選んだらいいのか、どれくらいの量を摂ったらいいのかなどの具体的な内容は栄養士さんに話を聞かないと詳細が分からないことが多いでしょう。今回の研究を経て、ニンジンが身体に良い影響を及ぼす可能性が示されたので、野菜を選ぶ場合や食事メニューを選ぶ際に悩んだ際は、ニンジンが含まれているものを選ぶといいかもしれません。

編集部まとめ

南デンマーク大学らの研究グループは、ニンジン摂取が2型糖尿病モデルマウスにおいて耐糖能の改善や腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の多様性向上に寄与する可能性を示唆しました。今回の研究結果から2型糖尿病の予防・改善につながる新たな食事の方法が見つかるかもしれません。一方で、2型糖尿病の予防には日常的な生活習慣の見直しが不可欠です。バランスのとれた食事、適度な運動、体重管理など、健康的な生活を心がけることが必要です。

この記事の監修医師