「2型糖尿病は“ドライフルーツ”で予防できる」食べるほどリスク低下 新たに判明
中国の西安交通大学らの研究グループは、「ドライフルーツの摂取と2型糖尿病の関連を検討したところ、ドライフルーツ摂取量の増加に伴い2型糖尿病リスクが低下した」との結果を発表しました。この内容について中路医師に伺いました。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
研究グループが発表した内容とは?
中国の西安交通大学らの研究グループが発表した内容を教えてください。
中路先生
今回発表された研究は、中国の西安交通大学らの研究グループが実施したもので、研究成果は学術誌「Nutrition and Metabolism」に掲載されています。
研究グループは、「UK Biobank」から42万1764例のドライフルーツ摂取データを、「IEU OpenGWAS」から症例群6万1714例と対照群59万3952例の2型糖尿病のデータを取得して、解析をおこないました。その結果、ドライフルーツの摂取量が多いほど2型糖尿病リスクが低く、ドライフルーツ摂取量が1日1.275個増加するごとに糖尿病リスクは低下することが明らかになりました。
研究グループは、今回の結果について「本研究は、ドライフルーツ摂取が2型糖尿病に有益であるというエビデンスを提供するものである。したがって、ドライフルーツの適度な摂取は、一次予防につながる可能性がある」と結論づけています。また、メカニズムは十分に解明されていませんが「ドライフルーツに含まれるビタミンE、ナイアシン、コリン、葉酸といったビタミン類や、マグネシウム、カリウム、カルシウム、リンといったミネラル類、フェノール類、カロテノイドなどの生理活性物質が、リスク低下に重要な影響を及ぼしている可能性がある」とも指摘しています。しかし、その一方で「今回の結果はヨーロッパ人のデータによるものであり、ほかの集団には当てはまらない可能性がある」と研究の限界も指摘しています。
2型糖尿病とは?
今回の研究テーマとなった2型糖尿病について教えてください。
中路先生
2型糖尿病は、糖尿病の中でも患者数が最も多いタイプです。遺伝的な理由によるインスリン分泌の能力低下に加えて、生活習慣の悪化に伴うインスリン抵抗性が起こり、インスリンが相対的に不足した場合に発症します。
一般的に生活習慣病と呼ばれる2型糖尿病ですが、インスリン分泌の能力低下が鍵を握ります。生活習慣が乱れることだけではなく、2型糖尿病患者は糖尿病になりやすい遺伝的な理由を持っているとも言えます。ゲノム解析では2型糖尿病の要因となる多くの遺伝子が報告されており、中でも「KCNQ1」という遺伝子は、日本人の2型糖尿病発症に強く関連していることが分かっています。
2型糖尿病の治療方法は、インスリン療法やインスリン以外の薬物療法、GLP-1受容体作動薬という注射薬などです。
研究グループが発表した内容への受け止めは?
中国の西安交通大学らの研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。
中路先生
本研究の限界として、「ドライフルーツは、健康を気にする人が多く食べるため、そもそも2型糖尿病のリスクが低いのではないか」がという点が挙げられると思います。しかし、いずれにしてもドライフルーツには、ビタミン・ミネラル・食物繊維が多く含まれており、それらを適度に摂取することで2型糖尿病のリスクを低下させる可能性を示唆したことは、大変有意義な研究結果と言えると思われます。
まとめ
中国の西安交通大学らの研究グループは、「ドライフルーツの摂取と2型糖尿病の関連を検討したところ、ドライフルーツ摂取量の増加に伴い2型糖尿病リスクが低下した」との結果を発表したことがわかりました。ドライフルーツをめぐっては、砂糖を多く含むという懸念も指摘されていますが、今回の2型糖尿病との関連に関する研究結果は注目を集めそうです。