【糖尿病治療】「誤った糖質制限は危険」な理由を医師が解説 正しい炭水化物の摂り方・食事療法とは?
「糖質制限でダイエット」など、糖質制限という言葉が広く一般的なものになっています。しかし糖尿病治療で糖質制限を行う場合、やり方を間違えるとかえってリスクになることもあるようです。一体、正しい炭水化物の摂り方とは? Clinic Le GINZA 銀座有楽町内科の山村先生にMedical DOC編集部が聞きました。
監修医師:
山村 聡(Clinic Le GINZA 銀座有楽町内科)
目次 -INDEX-
糖尿病になりやすい人の食生活 糖質(炭水化物)・お菓子・ビールの量が問題だった?
編集部
そもそも糖尿病というのはどういう病気ですか?
山村先生
簡単にいうと、摂取する糖質量に対してインスリンの働きが不足し、高血糖の状態が長く続いてしまう病気のこと。高血糖の状態が慢性的に続くと、自覚症状がほとんどないままに糖尿病網膜症や糖尿病腎症、糖尿病神経障害など重篤な合併症が起きることがあります。
編集部
なぜ、インスリンの働きが不足してしまうのでしょうか?
山村先生
糖尿病にはI型とII型があります。I型は自己免疫疾患などが原因となって、インスリンの分泌不足が起きるタイプ。II型は遺伝的な素因に加えて、過食や運動不足など、誤った生活習慣が原因となり、インスリンの作用が低下するタイプです。一般的に糖尿病というと、II型をさしていることが多いですね。
編集部
食事も大きな原因なのですね。どのような食事を続けると糖尿病になるのでしょうか?
山村先生
暴飲暴食による肥満は血糖値を乱高下させてインスリンの働きを弱めるため、糖尿病の大きな原因となります。また近年増えているのが、痩せ型なのに糖尿病を発症するケース。研究により、糖質を過剰に摂取するとメタボリックシンドロームのリスクが高まることが明らかになっており、メタボになると内臓脂肪が蓄積し、インスリンの働きが低下して血糖値が下がりにくくなります。そのため、メタボはII型糖尿病を発症する前段階と言われています。
編集部
パンやお菓子などをたくさん摂りすぎると糖尿病のリスクが高まるということですか?
山村先生
これまではエネルギーの過剰摂取や動物性脂肪の摂りすぎが、メタボにつながると考えられてきました。しかし近年では、摂取エネルギーが抑えられていても、ごはんやパンなどの糖質や砂糖を摂りすぎると、メタボのリスクが高まることがわかっています。また、「アスパルテーム」や「スクラロース」など人工甘味料の摂りすぎも、メタボとの関連性が疑われています。これらの人工甘味料は、ジュースやコーラ、お菓子などの加工食品に多く含まれています。
編集部
カロリーゼロのコーラも危険ということですか?
山村先生
名前にダイエットなどがつく甘い飲み物はアスパルテームやスクラロースが使われていることが多く、それらと糖尿病との関連性を指摘する声もあります。そのほか、ビールや日本酒、カクテルなど糖質が入ったお酒も血糖値を上昇させるので、飲み過ぎには注意が必要です。
糖尿病患者が間違った糖質制限をすることの危険性を医師が解説 血糖値が上がる? 糖尿病は悪化する?
編集部
糖尿病を治療するには糖質制限が良いと聞きますが、本当ですか?
山村先生
糖尿病の患者さんにとって、血糖値を乱高下させず、安定した状態に保つことは必要です。そのために糖質制限は非常に有用な手段となりますが、一方で、日本糖尿病学会からも見解が出されているとおり、長期間糖質制限をした場合、身体にどのような影響が出るのかについては、まだ科学的根拠が確立されていません。そのため、「糖尿病や予備軍の人にはあまり糖質制限をお勧めしない」という医師も少なくありません。
編集部
結局、糖尿病患者は糖質制限をしない方が良いということですか?
山村先生
これまでお菓子やご飯、パンなどを大量に摂取していた場合には、摂取量を控えることは必要です。しかし、過剰なまでに摂取量を制限するのはかえって危険なこともあります。
編集部
なぜ、危険なのですか?
山村先生
たとえば、「一切糖質を摂取しない」という食事を続けると、エネルギー代謝が低下し、筋肉量が落ちてしまいます。筋肉量が落ちればますますエネルギー代謝が低下してしまいますから、太りやすい体質になってしまいます。つまり、せっかくダイエットで体重を落としても、リバウンドしやすくなってしまうのです。
編集部
糖質を完全に摂らないというのも良くないのですね。
山村先生
どれくらい糖質を制限できるかは個人差が大きいので一概には言えませんが、本来、糖質は人間の生命活動においてとても大切なものです。なかには、一切糖質を摂取せず低血糖の状態になり、頭がぼーっとしたり、ふらふらしたり、ひどい場合には意識障害を起こしたりする人もいます。このように、自己流で糖質制限を行うことは非常に危険です。行う場合は必ず医師の指導を受けるようにしましょう。
糖尿病になったらどんな食事療法が良い? 正しい糖質制限食・一日の糖質量や糖質ゼロ食品の効果は?
編集部
糖尿病になったら、どのような食事を心がければ良いのでしょうか?
山村先生
編集部
糖質の摂取量を少なく抑えるためには、どのように工夫したら良いでしょうか?
山村先生
個人差はありますが、たとえば白米に麦や雑穀を混ぜてみると、糖質を低く抑えることができます。また玄米は、白米に比べて血糖値を上げにくいため、主食を玄米にするというのも良いでしょう。あるいは、パンではなくオートミールを食べるというのも、糖質の摂取量を減らすのにお勧めの方法です。ただし、「ある人にとっては効果的でも、別の人にとってはそれほど効果がない」ということも多いので、まずは実際に試してみて、血糖値の変化を測定すると良いのではないかと思います。
編集部
「糖類ゼロ」の食品を摂取する、というのはどうですか?
山村先生
最近では飲みものでもお菓子でも、糖類ゼロと書かれた食品が多くなってきました。しかし気をつけなければならないのは、「糖類」はゼロであっても、「糖質」はゼロではないかもしれないということです。なぜなら、糖質は「糖類」と「糖類以外の糖質」に分けられるからです。つまり、糖類は含んでいないとしても、「糖類以外の糖質(たとえばでんぷんなど)」は含んでいるかもしれないのです。
編集部
では、糖類ゼロと書かれていても、油断はできないということですね。
山村先生
そうです。それに、糖類はゼロであっても脂質は豊富に含まれているかもしれませんから、たくさん飲食すれば肥満につながるリスクもあります。大切なのは、食べるものや飲みものにどれくらい糖質が含まれているのか理解すること。そのうえで食べ過ぎや飲み過ぎなど過剰摂取に気をつけるようにしましょう。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあれば。
山村先生
これまでお話ししたように、糖質制限の効果は非常に個人差があり、糖質制限がうまくいく人もいれば、反対に、症状を悪化させるという人もいます。本当に、自分は糖質制限が必要かどうか、まずは糖尿病内科で相談をしてみると良いのではないでしょうか。また、現在糖尿病や予備軍でなくても、「自分の糖質摂取量は適切なのだろうか?」「食事内容を見直した方がいいのではないか?」などの疑問を感じていたら、ぜひ糖尿病内科にご相談ください。食事は健康の基本。専門医から適切なアドバイスがもらえると思います。
編集部まとめ
現在糖質制限は糖尿病の治療としてだけでなく、「ダイエットにお勧め」など、メディアでも多く取り上げられています。しかし、確実な知識もないまま自己流に始めると、かえって健康を害することも。不安を感じたら専門医に相談し、助言を求めるようにしましょう。
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