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糖尿病治療薬「SGLT2阻害薬」はどんな薬なのか 特徴や服用時の注意点を解説【薬剤師監修】

 更新日:2023/02/22
SGLT2阻害薬は糖尿病治療のどんな薬? 特徴や服用時の注意点を解説【薬剤師監修】

糖尿病治療薬のひとつであるSGLT2阻害薬は2014年から日本国内で使われるようになった薬です。比較的新しい薬ですが、近年、慢性心不全と慢性腎臓病の適応が追加され今後が期待される一方、ダイエット目的での不適切使用も問題になっている一面もあります。今回はSGLT2阻害薬について薬剤師の森本さんに詳しく解説していただきました。

森本 理恵子

監修薬剤師
森本 理恵子(薬剤師)

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明治薬科大学薬学部薬学科卒業。卒業後は大手調剤薬局に所属し様々な店舗を経験。その後地域密着型の調剤薬局にて在宅医療を経験。現在は派遣薬剤師として東京都や埼玉県の調剤薬局で従事する傍らライターとして活躍中。

血糖値を下げる糖尿病治療薬「SGLT2阻害薬」とは?

血糖値を下げる糖尿病治療薬「SGLT2阻害薬」とは?

編集部編集部

SGLT2阻害薬とはどのような薬なのですか?

森本 理恵子さん森本さん

血糖値を下げる薬で主に糖尿病の治療薬として使われています。糖尿病治療薬は、血糖値を下げるホルモンであるインスリン関連のものが多いですが、糖尿病の方の中にはインスリンが分泌されていない方や上手く使えない状態の方もいます。SGLT2阻害薬はインスリンの有無にかかわらず血糖値を下げる効果があり、多くの方に使われています。最近では適応が拡大し慢性心不全・慢性腎不全の治療薬として使われるものもあります。

編集部編集部

どのようなメカニズムで糖尿病や心不全に使われるのですか?

森本 理恵子さん森本さん

SGLT2とは尿細管に存在する「ナトリウム・グルコース共役輸送体」と呼ばれるタンパク質で、尿中のナトリウムとグルコースの再吸収という役割を担っています。そのため、健康な方の尿中に糖分は排出されません。SGLT2阻害薬はその働きをブロックし、尿中に糖を排出することで血糖値を下げます。また、尿中に糖が増えることによる浸透圧利尿や血中のナトリウムが減少する効果もあるため、血圧が下がり心臓への負担を軽減します。

編集部編集部

SGLT2阻害薬は何種類ありますか?

森本 理恵子さん森本さん

6種類あり、全て1日1回の服用です。利尿効果による夜間頻尿につながらないように朝服用する方が多いですね。錠剤だけでなく口腔内崩壊フィルム剤という唾液で溶けるシート状タイプもあります。効果に違いはありませんが代謝経路や半減期、構造がわずかに異なりその人に合った製剤を見つけていくことが必要です。

糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬はダイエット・減量目的でも服用できる?

糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬はダイエット・減量目的でも服用できる?

編集部編集部

SGLT2阻害薬を飲むとどのような効果がありますか?

森本 理恵子さん森本さん

HbA1cを下げる効果、血糖値を下げる効果があります。体に糖を貯蔵しないため、脂肪が消費され、体重が減少することもあります。また利尿効果もあるため血圧が下がることもあります。

編集部編集部

体重が減る効果があるようですが、ダイエット目的で服用してもいいのでしょうか?

森本 理恵子さん森本さん

SGLT2阻害薬は確かに体重減少の効果がありますが、医薬品のためダイエットでの服用は推奨されておりません。薬には副作用リスクがあり、糖尿病の方はリスクを上回る治療効果が期待されるため服用されています。また、最近の研究ではSGLT2は血糖値が高い方に多く出現していると言われているため、血糖値が正常な方に同等の効果があるとは言い切れません。糖尿病の方の体重減少は数ヶ月で2〜3kgと言われており、中には誇大広告もあるため注意しましょう。

編集部編集部

ダイエット目的で服用すると、どのようなリスクがありますか?

森本 理恵子さん森本さん

SGLT2阻害薬は医療用医薬品に分類されており、医師の診察を受ける必要があります。こうした医薬品をネットで入手した場合は個人輸入にあたる場合もあり、日本の医薬品医療機器等法に基づく品質や安全性が確認されていない薬になります。そのため、偽物の場合や健康被害を引き起こす成分が入っている場合もあり、問題が起こった場合は全て自己責任となります。飲んではいけない方もいるので自己判断で始めるには危険があります。

SGLT2阻害薬服用時の注意点を薬剤師が解説 副作用はある?

SGLT2阻害薬服用時の注意点を薬剤師が解説 副作用はある?

編集部編集部

薬といえば副作用が心配です。どのような副作用があるのでしょうか?

森本 理恵子さん森本さん

特徴的な副作用は尿路感染症です。尿中の糖分が増えることで細菌が増殖しやすくなっているからです。ほかには、利尿効果があるため尿量の増加や脱水などがあります。また、ほかの糖尿病治療薬と一緒に服用する場合は低血糖に注意が必要です。低血糖とは血糖値が下がり過ぎてしまう状態で冷や汗や動悸、手足の震えなどの症状が現れます。紹介した副作用はごく一部で、薬を飲み始めてから体調に変化があった場合は医師や薬剤師に副作用の可能性があるか相談してください。

編集部編集部

副作用を出さないようにすることはできますか?

森本 理恵子さん森本さん

尿量が増えるのを気にして水分を減らしてしまうと、尿路感染症や脱水につながってしまいます。予防のためにいつもより500ml多く水分をとるようにしましょう。排尿を我慢しないことも大切です。また、低血糖は、食事量の減少や過度な運動はエネルギーの供給と消費のバランスを崩すと、リスクが高くなります。低血糖を防ぐために毎日の食事の時間や運動量はなるべく変動しないようにしましょう。

編集部編集部

もし副作用が出た場合はどうすれば良いでしょうか?

森本 理恵子さん森本さん

尿路感染症は我慢してしまうと繰り返してしまったり、ひどい脱水になったりする場合があります。服薬の中止や点滴などの処置が必要となるため、我慢せず医療機関を受診してください。低血糖症状が出た場合は、すぐ飴などで糖分を補うようにしましょう。何度も低血糖を繰り返す場合は薬が合っていない可能性もあります。必ず低血糖の有無を処方医に伝えましょう。

編集部まとめ

SGLT2阻害薬は治療薬として人の健康に貢献してくれる素晴らしい薬です。しかし、健康な方が服用すると健康を害する危険性があります。気になったり、迷ったりした際には薬局やドラッグストアの薬剤師に相談しましょう。

この記事の監修薬剤師