糖尿病になってしまった…足を切断しないためにチェックするポイントを解説
自分やご家族が糖尿病と診断された場合、重症化すると身体に様々な合併症が起こります。代表的な合併症に足病変があり、そこから切断という道をたどる方がいます。この記事では、足の切断は予防できるのか、できるとしたらどのような対策があるのかを、フットケアの研修を受けた看護師の嶋谷さんに伺いました。
監修:
嶋谷 裕美(看護師)
看護専門学校卒業。院病棟、急性期総合病院外来など合わせて20年以上のキャリアを持つ。看護師の仕事を続けながら、webライターとしても活動。臨床経験を活かし、健康増進などに関する記事を執筆している。糖尿病性足病変看護従事者研修修了。
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糖尿病の数値をよくする
編集部
糖尿病を放置していると足を切断することになってしまうと聞いたことがありますが、本当なのでしょうか?
嶋谷さん
糖尿病にかかった方の全員が切断になるわけではありません。糖尿病性足病変は予防できる合併症であり、血糖値の値を正常値に近い状態で保っている方は、合併症を起こしにくいのです。
編集部
詳しく教えてください。
嶋谷さん
糖尿病の合併症は血糖値のコントロールが悪くなるほど起こりやすくなります。足病変は、糖尿病の患者さんにおこる足のトラブルをいい、胼胝(たこ)や足の変形、炎症などが起こります。ひどくなると組織の一部が壊死してしまい、足の切断に繋がる場合があります。高血糖が続くと全身の血管が炎症を起こしやすくなり、足病変の悪化もしやすいのです。血糖値をよい状態にしておくことは、足の切断を防ぐのに最も有効な対策なのです。
編集部
血糖のコントロールをよくするにはどうしたら良いのですか?
嶋谷さん
食事はバランスよく、3食をよく噛んでゆっくり時間をかけて食べましょう。出来れば20分以上かけて食べると、食べているうちに血糖値が上昇し、食べ過ぎを予防できます。さらに、ウォーキングなどの運動も週に3回以上おこなうことをお勧めします。関節の痛みなど健康に不安がある方は、主治医と相談しながら運動の方法を探しましょう。
編集部
食事や運動だけでよくなるのでしょうか?
嶋谷さん
それだけでなく、糖尿病の定期受診は欠かさずおこない、内服や注射は指示通りにおこないましょう。糖尿病は、痛みや辛さを感じにくく、通院の中断をする方がいらっしゃいます。この中断してる時に、一気に病状が悪化する方も少なくありません。一度診断された糖尿病は、「治癒をして一切通院が不要になる」ということは無いのです。必ず決められた受診日や治療は継続しておこなうようにしましょう。
足の切断を防ぐためには
編集部
具体的にどんなことをしておいた方がいいのですか?
嶋谷さん
糖尿病があり、血糖値の高い状態が続いていると、足の小さな切り傷、虫刺されのあと、深爪などから感染が広がり、足病変になる危険性があります。傷や湿疹などがあった場合は、小さい段階で消毒や軟膏処置をしてすぐに治すように心がけましょう。対処の仕方が不安な場合は皮膚科を受診するのがお勧めです。
編集部
水虫は関係ないですよね?
嶋谷さん
水虫や湿疹など、皮膚の炎症がもとで、感染を起こし、足病変になる方もいます。皮膚の病気はとにかく早めに治療をしましょう。高齢の方で足の親指の爪が厚くなっている方は、水虫である恐れがあり、高齢になるほど水虫にかかっている方は多くなります。皮膚を削って検査をすればすぐに診断できますので、自分が水虫かどうか不安な方は、普段かかっている主治医か皮膚科医に相談してみましょう。
こまめな観察とケアが重要
編集部
網膜症があって自分の足がよく見えないのですが、どうすれば良いでしょうか?
嶋谷さん
糖尿病の合併症である網膜症の方や、高齢のため白内障にかかっている方は、視力が低下して自分の足が十分に観察できないこともあります。このような場合は、見えていない状態で爪切りをすると大変危険です。周囲の家族や医療スタッフなどによく見えていないことを伝え、定期的に足を観察してもらいましょう。
編集部
体が硬くて足先まで手入れができない場合はどうすれば良いでしょう?
嶋谷さん
糖尿病の病歴が長い高齢の方には、腰痛があったり体が硬かったりして腰を曲げられず、足の手入れがうまくできないという方もいらっしゃいます。このため、定期的に入浴をしていても、実は足を十分に洗えていない場合もあります。十分に洗えていないかかとの角質が肥厚してひび割れて傷になり、出血した傷口から感染を起こす恐れもあります。このような場合、フットブラシなど床に置いて足をこすれる道具などを利用する、ほかの人に手伝ってもらうなどしましょう。高齢で介護認定を受けている方は、受けている介護サービスの範囲内(デイサービスでの入浴など)で保清のケアをしてもらえるでしょう。
編集部まとめ
糖尿病で足を切断しないために出来ることをお伝えしました。まずは血糖値の値を抑えることが一番ですが、なかなか思う通りにはいかないこともあるでしょう。まずは主治医の指示通りに通院し、治療を継続しましょう。また、足病変は小さな傷や皮膚の炎症が始まりとなってしまうこともあります。自分の足をしっかり観察し、自分の足に関心を向けて保清等に留意してお手入れを続けていきましょう。