目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 糖尿病性足病変を予防する「フットケア」一体何をするの?

糖尿病性足病変を予防する「フットケア」一体何をするの?

 更新日:2023/03/27

糖尿病患者に対して行われるフットケア。聞いたことはあっても、実際に何をやっているか知っている人は少ないと思います。実は糖尿病患者に対するフットケアは、美容のフットケアとは目的が大きく異なります。今回は、糖尿病患者さんへのフットケア外来の目的や内容、どこでおこなっているのかなどをフットケア資格がある看護師の嶋谷さんを取材しました。

嶋谷 裕美さん

監修
嶋谷 裕美(看護師)

プロフィールをもっと見る

看護専門学校卒業。院病棟、急性期総合病院外来など合わせて20年以上のキャリアを持つ。看護師の仕事を続けながら、webライターとしても活動。臨床経験を活かし、健康増進などに関する記事を執筆している。糖尿病性足病変看護従事者研修修了。

フットケアは足の切断を予防することが目的

フットケアは足の切断を予防することが目的

編集部編集部

糖尿病と足の切断ってどう関係があるのですか?

嶋谷 裕美さん嶋谷さん

糖尿病に罹患し高血糖の状態が続くと、様々な合併症を起こしやすくなり、その中の代表的な合併症の一つに糖尿病性足病変があります。足病変とは、小さな傷などから、蜂窩織炎(ほうかしきえん)などの感染症などを起こす病態です。重症化すれば、切断を余儀なくされるケースがあり、場合によっては足から感染した細菌やウイルスが全身に回り、敗血症から死に至ることもあるのです。こうした合併症を予防する目的に作られたのがフットケアです。

編集部編集部

フットケアとはどのようなものですか?

嶋谷 裕美さん嶋谷さん

患者さんに対し、専門の研修を受けた看護師が足の観察、検査、指導、実際のケアなどをおこないます。検査や観察では足の神経障害・動脈硬化の有無と程度が評価され、この時に初めて胼胝(たこ)や靴擦れ、足の変形が発見されるケースもあります。

編集部編集部

実際のケアではどんなことをするのでしょう?

嶋谷 裕美さん嶋谷さん

足浴や踵の角質の手入れ、爪切り、胼胝の処置などをおこないます。ケアをしながら自宅でのお手入れ方法についても指導しますが、糖尿病性網膜症や白内障により視力が低下し、自宅での手入れに自信がない方は、フットケアで爪切りを依頼する方も多いのです。

患者さんは糖尿病の病名がついていることが条件の看護外来

患者さんは糖尿病の病名がついていることが条件の看護外来

編集部編集部

糖尿病の患者さんはフットケアを受けたほうがいいのでしょうか?

嶋谷 裕美さん嶋谷さん

糖尿病の患者さん全員がフットケアを受ける必要はありません。医師が病態やケアの状態などを見て総合的に判断して指示を出します。担当医から「フットケアを受けたほうがいいですよ」とすすめられたら、受診するようにしましょう。

編集部編集部

どういう患者さんが多いでしょうか?

嶋谷 裕美さん嶋谷さん

糖尿病の検査結果において血糖やHBA1Cの数値が高い人ですね。さらに、足のケアの方法が分からない人、たびたび感染を起こす人、自宅で足のセルフケアが十分におこなえない人に勧められます。ご本人の希望で、継続的にアドバイスを受けたい人も、場合によっては医師から指示を出して貰える場合もあります。他方、すでに足に感染を起こしていて、足病変を起こしており、入院のリスクが迫っている人に指示が出る場合もあります。

フットケア外来のメリット

フットケア外来のメリット

編集部編集部

フットケアはどこでおこなうのですか?

嶋谷 裕美さん嶋谷さん

糖尿病専門医が在籍していて、所定の研修を受けた看護師が常勤で勤務している病院の外来でおこないます。フットケアの対象患者さんは、「糖尿病の病名がついていること」が条件です。通院する病院は総合病院でもクリニックでも形態は問われません。しかし、病棟で入院中にはフットケア外来への通院はなく、病棟看護師が観察をおこないます。

編集部編集部

患者にとってどんなメリットがありますか?

嶋谷 裕美さん嶋谷さん

フットケア外来で観察したこと、処置の内容などはすべて主治医にも情報共有されます。患者さんは、医療従事者に観察してもらうことで、異常の早期発見、早期治療につなげられ、足の切断が予防できるのです。また、家でのケアの方法が分かります。

編集部編集部

フットケアは一生通わないといけないのですか?

嶋谷 裕美さん嶋谷さん

フットケアには一生通わなければいけない、ということはありません。自分で十分に足のケアや観察ができれば終了となることもあります。しかし、医師に進められた場合は、継続して通った方がよいでしょう。実際には、患者さん本人が希望して継続通院していることが多いのです。

編集部編集部

最後に読者へメッセージをお願いします。

嶋谷 裕美さん嶋谷さん

フットケアはもちろん大切ですが、それだけでなく日頃から糖尿病のコントロールをよくする生活を送ることが大切です。糖尿病の合併症は、体の細胞が高血糖にさらされ続けることで起きます。高血糖が長期間続くほど合併症は起こりやすいのです。足病変の予防は、フットケアと糖尿病の良好なコントロールで予防できます。

編集部まとめ

フットケア外来は、糖尿病の病名がついている患者さんに対し、糖尿病専門医がいる医療機関で研修を受けた看護師がおこなうものです。その目的は糖尿病性足病変による足の切断の予防。フットケアの内容は、検査や観察、セルフケアの指導などです。糖尿の合併症である足の切断は、正しい観察とケアによって防げるもの。フットケアで教わった観察やセルフケアは一つひとつ確実に実施していきましょう。

この記事の監修看護師