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気づいたら失明寸前!? 「糖尿病網膜症」は急速に重症化が進む 海外の研究で明らかに

 公開日:2024/06/14

シンガポール国立眼科センターらの研究グループは、「糖尿病網膜症の重症度ごとの滞在期間を調べた結果、発症までは約8年の猶予期間があるものの、軽症や中等症から重症への進行が1年以内と短いことが判明した」と発表しました。この内容について眞鍋医師に伺いました。

眞鍋 憲正

監修医師
眞鍋 憲正(医師)

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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。

研究グループが発表した内容とは?

シンガポール国立眼科センターらの研究グループが発表した内容について教えてください。

眞鍋 憲正 医師眞鍋先生

シンガポール国立眼科センターらの研究グループは、糖尿病網膜症の重症度の推移確率を検討する縦断コホート研究を実施しました。研究結果は学術誌「The Asia-Pacific Journal of Ophthalmology」に掲載されています。

研究対象となったのは、成人の2型糖尿病患者9481人です。追跡期間の中央値は2.91年で、追跡の合計は2万6822人/年でした。ベースライン時の重症度は、糖尿病網膜症なしが87.0%、軽症非増殖糖尿病網膜症が11.4%、中等症非増殖糖尿病網膜症が1.0%、重症非増殖糖尿病網膜症と増殖糖尿病網膜症の合計が0.6%でした。

年間の推移確率を見ると、症状が進行した場合では「糖尿病網膜症なし→軽症非増殖糖尿病網膜症」が6.1%、「軽症非増殖糖尿病網膜症→中等症非増殖糖尿病網膜症」が7.0%、「中等症非増殖糖尿病網膜症→重症非増殖糖尿病網膜症と増殖糖尿病網膜症の合計」が19.3%となりました。逆に症状が回復した場合を見ると、「軽症非増殖糖尿病網膜症→糖尿病網膜症なし」が55.4%、「中等症非増殖糖尿病網膜症→軽症非増殖糖尿病網膜症」が17.3%、「重症非増殖糖尿病網膜症と増殖糖尿病網膜症の合計→中等症非増殖糖尿病網膜症」が4.4%でした。

・各状態の平均滞在時間と死亡率
糖尿病網膜症なし:平均滞在時間8.18年で死亡率1.2%
軽症非増殖糖尿病網膜症:平均滞在時間0.82年で死亡率2.0%
中等症非増殖糖尿病網膜症:平均滞在時間0.82年で死亡率18.7%
重症非増殖糖尿病網膜症と増殖糖尿病網膜症の合計:平均滞在時間2.17年で死亡率30.0%

糖尿病網膜症とは?

今回の研究テーマになった糖尿病網膜症について教えてください。

眞鍋 憲正 医師眞鍋先生

糖尿病網膜症は糖尿病の三大合併症の1つで、目の網膜に起きる疾患です。糖尿病網膜症が進行すると、最悪の場合は失明のリスクもあります。

糖尿病網膜症は病状の進行によって「単純糖尿病網膜症」「前増殖糖尿病網膜症」「増殖糖尿病網膜症」の3段階に分けられます。単純糖尿病網膜症は、網膜の毛細血管が詰まったり、血管の一部が破れて出血したりしている状態で、薬による治療がおこなわれます。前増殖糖尿病網膜症になると、詰まった血管に代わる新しい血管の増殖が始まる状態になります。この段階では、レーザーで焼き固めて新しい血管ができることを防ぐ「光凝固治療」が実施されます。そして、増殖糖尿病網膜症になると、新生血管が増殖して出血を繰り返し、増殖膜ができます。出血が少ないレベルであれば光凝固治療、出血が多く光凝固治療で対応できない場合は手術がおこなわれます。

研究グループが発表した内容への受け止めは?

シンガポール国立眼科センターらの研究グループによる発表への受け止めを教えてください。

眞鍋 憲正 医師眞鍋先生

糖尿病網膜症を防ぐには、そもそも糖尿病にならないことが一番大事です。また、糖尿病になってからの期間が長ければ長いほど、糖尿病網膜症になりやすいとされています。そのため、日頃からバランスの良い食生活を心がけ、適度な運動をおこない、体重を管理することが重要です。

もし糖尿病になってしまった場合も薬による治療をおこない、生活習慣の見直しによる血糖コントロールをすれば、糖尿病網膜症になる確率を低くすることができます。高血圧や脂質異常症といったほかの生活習慣病も糖尿病網膜症の発症リスクとされているため、生活習慣の改善にも目を向けましょう。

まとめ

シンガポール国立眼科センターらの研究グループは、「糖尿病網膜症の重症度ごとの滞在期間を調べた結果、発症までは約8年の猶予期間があるが、軽症や中等症から重症への進行が1年以内と短いことが判明した」と発表しました。今回の研究結果で示された内容は、適切なスクリーニングをおこない、早期発見と進行監視をすることの重要性を浮き彫りにしました。

この記事の監修医師