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赤肉を週2回以上食べると「2型糖尿病」リスク増加 ハーバード大学が発表

 更新日:2023/11/13

アメリカのハーバード大学らの研究グループは「牛や豚、羊などの赤色の肉(赤肉)を週に2食以上食べると、2型糖尿病の発症リスクを高める可能性がある」とした研究結果を発表しました。この内容について、中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

ハーバード大学らが発表した内容とは?

アメリカのハーバード大学らの研究グループが発表した内容について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回紹介するのは、アメリカのハーバード大学などの研究グループが実施した研究で、学術誌「The American Journal of Clinical Nutrition」に内容が掲載されています。研究グループは、牛や豚、羊などの赤色の肉、いわゆる赤肉の摂取と2型糖尿病の関連を調査しました。21万6695人の健康状態を、最長36年間にわたり追跡したデータを分析する形で調査は実施されました。

調査の結果、1日に赤肉を1食分食べるごとに、2型糖尿病の発症リスクが1.28倍上昇していたことがわかりました。赤肉を摂取する量の違いを調べると、1日に1.56~1.97食分の赤肉を摂取する人は、1日に0.26~0.45食分摂取する人と比べて、2型糖尿病の発症リスクは1.62倍でした。1日1食の赤肉をナッツや豆類などの植物性タンパク質に置き換えると、2型糖尿病のリスクは30%低下し、赤肉1食を乳製品に置き換えるとリスクは22%低下するという結果も出ました。また、肉の加工の有無によるリスクを比べてみると、加工済み赤肉の摂取で2型糖尿病の発症リスクが51%上昇し、未加工の赤肉の摂取で40%上昇しました。

研究グループは、今回の結果について「赤肉の摂取制限を推奨する食事ガイドラインを強く支持するものであり、それは加工した赤肉と未加工の赤肉の両方に当てはまります」とコメントしているほか、「我々の知見とほかの研究者の過去の研究結果を考慮すると、健康と幸福を最適化したい人々にとって、赤肉は週1食程度に制限するのが妥当であろう」とも述べています。

2型糖尿病とは?

今回の研究内容で登場した2型糖尿病について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

糖尿病の中でも、患者数が最も多いタイプが2型糖尿病です。遺伝的な理由によるインスリンの分泌能力低下に加えて、環境的素因としての生活習慣の悪化に伴うインスリン抵抗性が起こり、インスリンが相対的に不足した場合に発症します。一般的に生活習慣病と呼ばれる2型糖尿病ですが、鍵を握るのはインスリンの分泌能力低下が起きることにあります。また、生活習慣の乱れ以外にも、2型糖尿病患者は糖尿病になりやすい遺伝的な理由を持っているとも言えます。ゲノム解析では2型糖尿病の要因となる多くの遺伝子が報告されており、中でも「KCNQ1」という遺伝子は、日本人の2型糖尿病発症に非常に強く関連していることが明らかになっています。

今回の発表内容への受け止めは?

アメリカのハーバード大学らの研究グループが発表した内容に対する受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

本研究はアメリカ人を対象として、赤肉の食べる量が増えることにより、いかに糖尿病の発症のリスクが上昇するかをみた大変興味深い研究と思われます。しかし、一般的な食生活を送るアメリカ人を対象としているため、食生活が異なる日本人にそのまま当てはめるのは困難であると考えられ、今後の検討が必要です。

赤肉の過剰摂取は、糖尿病の発症以外にも肥満、心臓病、肝臓病、がんのリスクを上昇させることが、これまでの研究によって示されています。ただし、「赤肉をいっさい食べるべきではない」というわけではなく、野菜、魚、ナッツ、大豆などの推奨される食物の摂取を心がけ、バランスの良い食事を腹八分目でとることが病気の発症予防には重要であると考えます。

まとめ

アメリカのハーバード大学らの研究グループは「牛や豚、羊などの赤色の肉(赤肉)を週に2食分以上食べると、2型糖尿病の発症リスクを高める可能性がある」とした研究結果を発表しました。「健康な生活の基本は毎日の食事から」、こうした研究結果を献立作りに役立ててもいいかもしれませんね。

この記事の監修医師