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⾼⾎圧の改善に「適度な運動」が効果的なメカニズムが判明 ヒト・ラットで臨床試験

 公開日:2023/07/14
「適度な運動」が高血圧を改善するメカニズムを解明

国立障害者リハビリテーションセンターらの研究グループは、ラットを用いた実験とヒトの成人を対象とした臨床試験の結果、「適度な運動が高血圧を改善するメカニズムを発見した」と発表しました。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

研究グループが発表した内容とは?

国立障害者リハビリテーションセンターらの研究グループが発表した内容について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回紹介するのは、国立障害者リハビリテーションセンターらの研究グループが実施した研究で、イギリスの科学誌「Nature Biomedical Engineering」に掲載されています。研究グループは「運動で頭部に適度な衝撃を与えることで脳内間質液の流動が起き、脳内の細胞に力学的刺激が与えられて機能調節がおこなわれる」という分子の仕組みが、死亡リスクファクターとの高血圧の予防あるいは改善においても重要な役割を果たしているかを、動物・細胞実験に加えて、高血圧のヒトを対象とした臨床試験で検証しました。

研究グループは、麻酔をした高血圧ラットの頭部に1Gの衝撃がリズミカルに加わるよう、毎秒2回頭部を上下動させると脳内の組織液が流れて、細胞に力学的刺激が加わる状態をつくりました。この状態を1日30分間、2~3週間以上続けた結果、高血圧改善効果が認められたとのことです。また、1日30分間の運動を4週間続けた場合も、血圧を上げるタンパク質「アンジオテンシン受容体」の発現低下が確認されました。さらに、高血圧のヒトに頭部への物理的衝撃を適用した結果、高血圧が改善すると世界で初めて明らかになりました。

研究グループは「今回の研究の成果から、運動によって頭部に適度な物理的刺激を与えることが、脳、さらには身体の健康維持に役立つ可能性が考えられます」とコメントしています。

今後の展望は?

国立障害者リハビリテーションセンターらの研究グループが考えている今後の展望を教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

研究グループは「今回の研究によって、適度な運動による身体への物理的衝撃で脳内間質液の流動の促進することが、代表的な生活習慣病である高血圧症に対して重要な役割を果たすことがヒトでも示された」ということを強調しています。がん、認知症、うつ病、糖尿病などの疾患・障害に「適度な運動」が有効であることは統計的に証明されていますが、長年理由はわかっていませんでした。

研究グループは、「骨・関節・神経の病気や怪我などで、運動したくても運動できない人にも適用可能な擬似運動治療法の開発につながる可能性がある」という展望を語っています。

今回の発表内容への受け止めは?

国立障害者リハビリテーションセンターらの研究グループが発表した内容の受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

適度な運動が高血圧の治療や予防に有効であることは知られています。しかし、その確固たる理由は未だ明らかではありません。今回のラットを用いた基礎研究をヒトへの臨床研究に応用したトランスレーショナルリサーチの最大のメリットは、十分な運動ができない人でも、例えば階段を下るなどの簡単な日常生活動作で頭を上下させることで、高血圧の改善につながる可能性があることを示唆した点であると考えます。また、その効果は一定期間持続する点も挙げられます。

症例数が少ないのと、症例ごとの食生活の影響などのバイアスの存在などの限界はあるでしょうが、臨床研究として高く評価されると考えます。

まとめ

国立障害者リハビリテーションセンターらの研究グループが、「ラットを用いた実験とヒトを対象とした臨床試験をおこなった結果、適度な運動が高血圧改善をもたらすメカニズムを発見した」と発表したことがわかりました。適度な運動が健康に有益なメカニズムであるがわかったことは、健康な社会を目指す中で注目を集めそうです。

この記事の監修医師