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「弁膜症」を発症すると現れる自覚症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/05/19
「弁膜症」を発症すると現れる自覚症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

弁膜症という病気をご存じでしょうか。弁膜症とは、何らかの原因で心臓に存在する4つの弁に問題が生じ様々な症状を引き起こす病気です。

弁膜症の初期はほとんど自覚症状がないため病気に気づきにくいことが難点です。弁膜症が進行すると命に関わることもあるため早期に治療を行わなければなりません。

ここでは、弁膜症で表れやすい症状から原因・検査・治療方法などについて詳しく解説していきます。ぜひ、参考にしてください。

熊谷 靖司

監修歯科医師
熊谷 靖司(歯科医師)

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熊谷歯科医院 院長

弁膜症の症状と原因

医師の心電図

弁膜症とはどのような病気でしょうか?

弁膜症とは心臓の血液が逆流したり血液の流れが妨げられたりする病気です。
心臓は右心房・右心室・左心房・左心室という4つの部屋があります。この4つの部屋がそれぞれ一定のリズムでポンプ運動を行うことで血液は全身を循環します。
血液の逆流を防いでいるのが各部屋についている「弁」です。弁は全部で4つあり、血液の流れに合わせて開閉します。
4つある弁の中でも僧帽弁と大動脈弁で弁膜症は起こりやすいといわれています。弁が十分に開かなくなった状態が狭窄症、弁の閉じ方が不十分になった状態が閉鎖不全症です。
狭窄症では血液の流れが妨げられ、閉鎖不全症では血液が逆流しやすくなります。

弁膜症にみられる症状を教えてください。

弁膜症にみられる症状として次の3つがあります。

  • 心不全
  • 不整脈
  • 感染性心内膜炎

1つ目は心不全です。弁膜症になると正常な心臓のポンプ運動が妨げられるため、心不全の症状を来すことがあります。心不全は息切れ・むくみ・体重増加などが代表的な症状です。
2つ目は不整脈です。一部の弁膜症は病状の悪化に伴い不整脈を併発する可能性があります。不整脈では、動悸や息切れなどの症状がよく表れます。
3つ目は感染性心内膜炎です。感染性心内膜炎とは、弁に細菌が付着し感染を起こした状態です。稀な病気ですが、弁膜症の方は発症リスクが高いといわれています。感染性心内膜炎の症状は高熱・関節痛・筋肉痛・腰痛などです。

発症の原因を教えてください。

弁膜症の原因は種類によって異なります。主な弁膜症の種類は次の4つです。

  • 僧帽弁狭窄症
  • 大動脈弁狭窄症
  • 僧帽弁閉鎖不全症
  • 大動脈弁閉鎖不全症

それぞれの原因について解説していきます。まず僧帽弁狭窄症です。僧帽弁狭窄症はリウマチ熱の後遺症が主な原因となります。
次に大動脈弁狭窄症です。大動脈弁狭窄症の主な原因は動脈硬化といわれています。食生活・生活習慣・加齢によって動脈硬化は起こりやすいです。
次は僧帽弁閉鎖不全症です。僧帽弁閉鎖不全症も大動脈弁狭窄症と同様に主な原因は動脈硬化といわれています。
最後に大動脈弁閉鎖不全症です。大動脈弁閉鎖不全症の原因は大きく2つあります。1つは先天性の異常、もう1つは大動脈の病気です。

弁膜症は心不全になりやすいのでしょうか?

弁膜症は心不全の原因の1つとされています。そのため、弁膜症は心不全になりやすいといえます。
心不全とは、心臓のポンプ機能が正常に働かなくなった状態です。弁膜症になると血液の流れが妨げられたり逆流したりします。すると、心臓が一定のリズムでポンプ運動を行えなくなってしまうため心不全になりやすいです。
心不全では、息切れや足のむくみが初期症状としてよく表れます。
このような症状が表れた場合には、病院を受診するようにしましょう。

弁膜症の自覚症状

心臓

弁膜症には自覚症状はあるのでしょうか?

弁膜症は、初期には自覚症状がない場合があります。しかし、動悸・息切れ・むくみなどの症状は比較的早期に表れやすいです。
そのため、このような症状が表れた場合には一度病院で検査を受けるようにしましょう。弁膜症の症状は緩やかに表れるため、症状に気づかず病院を受診しないケースも多々あります。
しかし、症状が進行すると治療効果が得られにくく、命に関わる場合もあります。動悸・息切れ・むくみなどの症状には十分注意しましょう。

どのような検査で弁膜症と診断されますか?

弁膜症の主な検査方法は次の3つです。

  • 聴診
  • 心エコー検査
  • 心臓カテーテル検査

まずは聴診です。弁膜症の方のほとんどが健康診断などの聴診で心雑音の異常を発見されます。心雑音が認められた場合には、より正確に検査を行うために心エコー検査を行います。
心エコー検査は、弁膜症の重症度や手術が必要かどうか判断できる検査方法です。心臓カテーテル検査では、心臓の動脈の状態を検査できます。
動脈の状態から手術時期を判断できるため、手術をする上では重要な検査です。

弁膜症の治療方法を教えてください。

弁膜症の主な治療方法は外科手術、またはカテーテル治療です。外科手術では、胸を開き心臓を切開して弁の機能を回復させます。
弁の手術方法は弁形成術と弁置換術の2つです。弁形成術では、患者自身の弁を残して修復します。
一方、弁置換術は、異常を来している弁を取り替える方法です。カテーテル治療は、胸を開くことなく行える治療方法です。太ももの付け根や肋骨の間などからカテーテルを挿入し、治療を行います。カテーテル治療は外科手術に比べ体の負担が少ないことがメリットです。
最適な治療方法は患者の状態から医師が判断します。

手術をしないとどうなるのでしょうか?

弁膜症は必ずしも手術が必要な病気ではありません。無症状の場合、手術は必要ありません。
また、症状があっても合併症などがあり体が手術に耐えられない可能性があれば手術を行わない場合もあります。症状があるのに手術をしない場合生存率がぐっと下がります
手術に対し不安に思う方もいるかと思いますが、医師に手術を勧められた場合は手術を受けた方が良いでしょう。

弁膜症の予後

砂時計

弁膜症は治りますか?

弁膜症は自然治癒することはありません。保存療法として薬で治療することもありますが、薬では弁そのものは治せません。心不全が起きないよう心臓の負担を減らしたり自覚症状を軽減したりするにすぎないからです。
弁膜症を根本的に治すには手術が必要です。手術を行うことで、弁の機能は正常に戻ります。
しかし、完全に正常に戻る場合もあればそうでない場合もあるため必ずしも元通りになるわけではありません。心臓の機能が末期的になる前に手術をすると心臓の回復も期待できるため、早期に治療を受けることが重要です。

余命はどのくらいでしょうか?

弁膜症の余命は表れた症状によって異なります。胸の痛みが表れた場合は5年、失神した場合は3年、心不全になった場合は2年といわれています。
弁膜症の初期は無症状のこともありますが、動悸・息切れ・むくみといった症状は早期に表れやすいです。
早期発見・早期治療により余命は延ばせるため、症状が表れた場合にはすぐに病院を受診しましょう。

弁膜症と診断された場合の日常生活の注意点を教えてください。

弁膜症と診断されたら激しい運動は控えましょう。運動してはいけないというわけではありませんが、呼吸困難感や動悸などが生じない程度の運動に留めることが重要です。
推奨される運動はウォーキング・水泳・サイクリングなどです。競技はできるだけ避けるようにします。食事は塩分の制限を心掛けます。
塩分の摂りすぎは心臓に負担がかかってしまうからです。弁膜症と診断されたら、心臓に負担をかけないようにしましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

弁膜症は初期症状がない場合もあり気づきにくい病気ですが、放っておくと命に関わる病気です。弁膜症は自然に治ることはないため手術が必要です。手術によって弁膜症は治療可能なので、医師による適切な治療を受けましょう。
動悸・息切れ・むくみなどの症状は比較的早期に表れるため、このような症状がでたらすぐに病院を受診するようにしてください。

編集部まとめ

医師
弁膜症の症状・原因・自覚症状・検査・治療方法などについて解説しました。

弁膜症は動脈硬化などを原因に心臓の弁に異常を来し、心臓の血液の流れが妨げられたり逆流したりします。これにより心不全・不整脈・感染性心内膜炎などの症状が表れます。

自覚症状としては動悸・息切れ・むくみが早期に表れやすいです。しかし、無症状のこともあり健康診断などの場面で発見されることも多いです。

弁膜症は自然治癒することはありません。根本的に治療するには手術が必要であり、外科手術またはカテーテル治療が選択されます。

弁膜症と診断されたら激しい運動を控えたり塩分を控えたりして心臓に負担をかけないように気を付けましょう。

本記事が少しでもお役に立てば幸いです。

この記事の監修歯科医師