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「肺がん」になると現れる初期症状はご存知ですか?ステージについても解説!

 更新日:2023/03/27
「肺がん」になると現れる初期症状はご存知ですか?ステージについても解説!

肺がんという病気は誰しも聞いたことがあるでしょう。しかし、症状や治療法など知らない人も少なくありません。

肺がんは発見が遅れやすく、気が付いたころには進行していることもあるのです。早期発見のためにも症状などについて紹介します。

肺がんというと予後が悪いのではないかと心配する人も多いでしょう。しかし予後はステージによっても違います。

肺がんについて初期症状や進行速度・治療法・ステージ・生存率など詳しく解説するので参考にしてみてください。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

肺がんの症状とステージ

咳をするマスク姿のアジア人男性

肺がんはどのような症状がありますか?

肺がんの症状は以下のようなものがあります。

  • 痰(血痰)
  • 発熱
  • 呼吸困難
  • 動悸
  • 胸痛
  • 嗄声
    • 肺がんは風邪のような症状が表れるため誤解しやすく、進行してしまうこともあります。この症状があれば肺がん、という特徴的な症状はないので注意しましょう。進行するとがんが大きくなることにより気管が狭くなり、間質性肺炎を発症することもあります。また、胸に水がたまったり、肋骨や神経にがんが広がることで胸の痛みが生じたりすることもあります。
      初期症状で気が付かず、肺から別の場所に転移してから気が付く人もいるでしょう。脳に転移した場合はめまいや手足のしびれ、上大静脈にがん細胞が入り込み両腕が腫れるなどの症状が現れます。他にも肺以外の転移した箇所で痛みが生じてからがんと診断されることもあります。

どのような人が発症しやすいのでしょうか?

タバコを吸っている人は肺炎を発症する確率が高くなります。喫煙者は非喫煙者と比較し男性では4.4倍、女性は2.8倍肺がんになりやすいという報告もあります。また、1日当たりに吸うたばこの本数が多いほど肺炎になりやすく、禁煙を始めて期間が経つほど肺炎になる危険が低下するのです。
また、自分がタバコを吸わなくても周りに喫煙者がいることによって肺がんの発症率が上昇します。タバコ以外にも肺がんの発症に関係するとされている要因は以下のものがあります。

  • アスベスト
  • 飲酒
  • 家族歴

飲酒に関しては、喫煙者の中でお酒をよく飲む人のほうが発症率が高いとされています。しかし、タバコを吸わない人では飲酒量が肺がんの発症に影響するという報告はありません。また、家族に肺がんを発症した人がいる人は肺がんになりやすいなど、遺伝的要素が関係するとの指摘もあります。
肺がんは喫煙者以外にも発症することがあるので、非喫煙者で周りにも喫煙者がいないから安心というわけではありません

肺がんのステージについて教えてください。

肺がんのステージはTNM分類によって、Ⅰ期(ステージ1)・Ⅱ期(ステージ2)・Ⅲ期(ステージ3)・Ⅳ期(ステージ4)に分けられます。TNM分類は腫瘍の大きさなどによって段階分けされるのです。
T因子は腫瘍(Tumor)の大きさや広がり具合を表し、T0からT4に分けられます。Nは節(Node)を表しリンパ節への転移があるかを示しN0からN3の3段階、Mは他の臓器への転移(Metastasis)があるかどうかをM0からM1cで段階分けします。このTNMの分類を組み合わせて0期からⅣ期までステージに分けられるのです。

肺がんはどのくらいの速度で進行するのでしょうか?

肺がんは初期症状が風邪と似ており発見が遅くなってしまうことも多く、気が付いたころには進行していることがあります。
既に進行していると診断されてからより速く進行してしまうのです。また、小細胞肺がんは進行が速いなど肺がんの中でも進行速度が違います。

肺がんの治療と手術

吊り下げられた点滴バッグ

受診を検討するべき初期症状を教えてください。

肺がんの初期症状は咳や痰・熱など風邪や気管支炎など他の呼吸器疾患に似ています。しかし、風邪をひいていないのに咳や痰が2週間以上続く場合、また血痰が出る場合は病院の受診をおすすめします。また、発熱が5日以上続く場合も肺がんが疑われるので検査した方がよいでしょう。
場合によっては食欲不振や体重の減少などもみられますが、他の病気でもみられる症状なので自己判断は難しいでしょう。症状が現れてから検査すると進行していることもありますので、定期的に検査をうけることがおすすめです。

どのような検査を行いますか?

肺がんの検査は胸部CT検査や胸部X線検査を行います。X線検査では腫瘍がはっきり見えず見逃してしまうこともあるため、正確に肺がんがあるかどうか診断するためにはCT検査が重要です。また、喫煙者の人には喀痰細胞診を行います。

肺がんの治療方法を教えてください。

肺がんの治療は薬物療法・放射線療法・手術を組み合わせて行います。複数の治療法を組み合わせることを集中学的治療と呼び、肺がんの治療において重要な治療戦略です
肺がんの治療は細胞型で分類され、非小細胞がんと小細胞がんに分けて考えられます。非小細胞肺がんの治療は手術を選択されることが多いです。再発予防のために薬物療法を手術後に行うこともあります。しかし、年齢や合併する病気の影響で手術が選択できない場合は放射線療法が選択されます。また、手術で完全に腫瘍が取り切れなかった場合などでも放射線治療が選択されるでしょう。
体調が安定していれば放射線療法と薬物療法を同時に行うこともあります。小細胞肺がんの治療は薬物療法がメインです。早期の場合は手術も行うことがあり、限局型は放射線療法も併用して行われることもあります。限局型は範囲が狭く放射線治療が行えますが、進展型は放射線治療ができる範囲を超えているため薬物療法がメインになります。
また近年、肺癌の治療では細胞障害性抗癌剤に加え,分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が導入されてその進歩は目覚ましいですが、症状や苦痛が速やかに改善されることは難しく緩和ケアの介入が必要です。緩和ケアというと「末期の患者さんの治療」というイメージがありますが、早い時期からがんの治療と同時に緩和ケアをおこなうことで、患者さんやご家族の生活の質(QOL)を保つことが可能です。

手術をする場合はどのくらいの時間がかかりますか?

手術を行う場合は1・2日前に入院することが多く、入院期間は10日程度です。しかし、体調などによって入院期間は変動します。
また、手術に合わせて薬物療法など行う場合は入院期間が変わる可能性もあります。手術時間は一般的に2時間から4時間程度です。手術時間は切除する範囲が広いと長くなるでしょう。

肺がんの予後

医療や健康の疑問

ステージごとの生存率を教えてください。

下記はステージごとの5年生存率です。

  • ステージ1は81.6%
  • ステージ2は46.7%
  • ステージ3は22.6%
  • ステージ4は5.2%

肺がんの5年後生存率は男性29.5%・女性46・8%・全体34.9%と他のがんと比較しても低いです。

肺がんと診断された場合の余命を教えてください。

肺がんと診断された時の余命はステージによって違います。また、人によって個人差があるので断言できません。ステージ4の平均余命は11ヶ月という報告があります。肺がんによる死亡だけでなく、脳卒中などが原因で亡くなった人も含めたデータです。タバコを吸う人は脳卒中や虚血性心疾患なども発症しやすくなるため肺がん以外の疾患で亡くなる人も多いのです。
ステージ1Bは53ヶ月・ステージ2Aは37ヶ月・ステージ2Bから3Bは20ヶ月前後といわれています。ここでの平均余命は患者全員の生存期間を足して人数で割ったものではありません。100人同じ病気の人がいたとき50人が亡くなる時期を示しています。また、小細胞肺がんは治療しても生存率が低く進展型の場合は余命平均1年程度しかありません。あくまで平均なので長く生きる人もいればもっと早く亡くなってしまう人もいます。

再発することもあるのでしょうか?

肺がんは他のがんと比べても再発率が高いといわれています。ステージ1の非小細胞肺がんでも再発率が約20から30%もあるといわれるくらい高いです。これは肺は血管やリンパ管が豊富で転移しやすいことが関係していると考えられています。
中でも脳に転移しやすく、最初の治療で完全にがん細胞を取り除けなかった場合は血管やリンパ管に乗って転移や再発を起こします。再発のほとんどは2年以内に起こり、5年経つと再発率は大幅に減るため5年間は検査などで早期発見に努めることが大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

肺がんは早期発見が重要で、早期発見すれば完治することも不可能ではありません。進行度によって余命が大きく変わるため、できるだけ早期に治療に入ることが大切です。
肺がんはタバコが主な原因なので禁煙など行うことで予防できる可能性があります。しかし、タバコを吸わないから100%肺がんにならないわけではないため、定期的に検査することがおすすめです。

編集部まとめ

問診票を持つ男性医療従事者 診察する

肺がんは初期症状が風邪などの呼吸器疾患に似ており自己判断が難しいです。そのため診断が遅れ予後が悪くなることもあるようです。

リンパ管や血管などが多く通る場所であるため転移しやすく、気が付いたころには脳などに転移していることもあります。

がんの範囲によって放射線療法が行えないなど治療の選択肢も減ってしまうことがあるのです。特に50歳以降に発症しやすくなるため、毎年検査を行うようにしましょう。

この記事の監修医師