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「脂質異常症」の原因・食事の注意点はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/05/03
「脂質異常症」の原因・食事の注意点はご存知ですか?医師が監修!

脂質異常症とは、脂質の中でも特に悪玉コレステロールや中性脂肪が多い状態を指します。

コレステロールや中性脂肪は、本来であれば身体の健康に欠かせない重要な物質です。

しかし、多すぎると動脈硬化を引き起こすなどの悪影響を及ぼす可能性があり、脂質異常症は決して軽視できない病気です。

今回は、脂質異常症について詳しく解説します。治療法や予防法についても取り上げるので、今後の参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

脂質異常症とは

体重計

脂質異常症とはどのような病気でしょうか?

脂質異常症とは、血液中の脂質が増えすぎて血液がドロドロな状態になる病気です。脂質の中には、コレステロール・リン脂質・中性脂肪・遊離脂肪酸の4種類があります。
どれも身体に欠かせない重要な物質です。コレステロールは細胞膜を構成したり、ホルモン・胆汁の原料になったりします。中性脂肪は体温を保持したり、クッションの役割をしたり、エネルギーを貯蔵したりするものです。
脂質異常症は、そのコレステロールと中性脂肪が異常に多い状態を指します。通常、血液中の脂質は一定の量に保たれるようにバランスが取られているものです。しかし、食事から摂取される脂質の量が多かったり、身体の中で上手に脂質を処理できなくなったりすると基準値から大きく外れた状態になってしまいます。

高脂血症との違いを教えてください。

高脂血症は、脂質異常症の旧称です。2007年にガイドラインが改訂されたのに伴い、名称も高脂血症から脂質異常症へと変更されました。
この理由としては、コレステロールが高い方の中には悪玉コレステロールは正常なのにもかかわらず、善玉コレステロールが低いケースがあることが挙げられます。
この場合を高脂血症と呼ぶのは不適切であると判断され、脂質異常症へと名称変更されました。

どのような症状がみられますか?

症状はほとんどありません。一部ではコレステロールが沈着することでできる白い隆起物が、手の甲・瞼・ひじ・膝などに見られます。脂質異常症は自覚症状がないため非常に厄介です。知らず知らずのうちに血液がドロドロになり、動脈硬化を引き起こしてしまうケースも少なくありません。
他にも狭心症・心筋梗塞・脳出血・脳梗塞のリスクを高めることもあり、放置するべきではない病気といえます。しかし、自覚症状がないので危機意識が芽生えづらく、そのままにしてしまいやすいのが脂質異常症の問題です。

原因を教えてください。

主な原因は生活習慣です。主に食事面と運動面において指摘できます。例えば食べ過ぎ・アルコールの飲み過ぎ・運動不足といった不健康な状態は発症リスクを高めやすいです。
また、動物性食品を多く配合した高カロリーな食事も原因になります。少数ではありますが、上記に当てはまるような項目がなくても遺伝によって脂質異常症を発症することもあります。
他にも甲状腺機能低下症・肝臓病・糖尿病・高血圧といった他の病気が因子になるリスクもあるため、予防が非常に大切です。

脂質異常症の検査と治療

お腹周り

どのような検査で診断されるのでしょうか?

脂質異常症の検査は、基本的に採血による血液検査です。悪玉コレステロール・善玉コレステロール・中性脂肪の値を調べて診断を下します。
値を正確に調べるため、朝食前の空腹時に測定することが一般的です。診断基準は以下のように定められています。

  • 悪玉コレステロールが140mg/dL以上である
  • 善玉コレステロールが40mg/dL未満である
  • 中性脂肪が150mg/dL以上である

これらのうち、いずれかにでも当てはまる場合には脂質異常症と診断されます。他にも、遺伝性を検査するための家系内調査アキレス腱の厚さの検査などが行われることが多いです。

治療方法を教えてください。

治療は個々人の状態に応じて行われます。それぞれの症状の程度に合わせて目標値が設定されるため、その目標値に向けて治療を行う流れが一般的です。
症状が軽ければ、まずは生活習慣の改善から行います。いわゆる食事療法と運動療法です。食事療法では以下のような治療を行います。

  • 総カロリー数を適正値に抑える
  • 野菜や果物を多く摂取するよう心がける
  • 肉類を控え、青魚を摂取するようにする
  • 悪玉コレステロールが高い場合には、卵・マヨネーズ・レバー・すじこなどを控える
  • 中性脂肪が高い場合には、炭水化物やアルコールを控える

運動療法では、持続的に運動するよう求められます。例えば、ウォーキング・ジョギング・水泳といった有酸素運動がおすすめです。1回につき30分以上を週3回から4回行うよう推奨されています。
食事療法と運動療法では目標値に近づけられなかった場合や重症の場合には、薬物療法へと踏み切ります。悪玉コレステロールが高い場合にはスタチン系薬剤・脂質吸収抑制剤を処方し、中性脂肪が高い場合にはフィブラート系薬剤が処方されるケースが多いです。
医師の指示に従いながら、目標値に近づけるようにしましょう。

治療薬はどのようなものがありますか?

治療薬は、血液中の脂質の値によって変わります。脂質異常症の中には、悪玉コレステロールが高い場合・中性脂肪が高い場合・善玉コレステロールが低い場合の3つのタイプがあるためです。
主に悪玉・善玉コレステロールの値が基準値と外れているタイプの場合には、スタチン系薬剤・脂質吸収抑制剤を使用します。中性脂肪の値が高い場合には、フィブラート系薬剤を使用します。
しかし、治療薬を処方して値だけ正常値に戻しても生活習慣が改善されなければ再発する恐れがあり、良い治療とはいえません。重症の場合を除き、まずは生活習慣を改善する治療から行われるケースが一般的です。

脂質異常症の予防と注意点

食事

脂質異常症は治りますか?

脂質異常症は治る病気です。しかし、長期戦になること継続的に生活習慣を改善し続ける必要があることは念頭に置いておいてください。脂質異常症は生活習慣と密接な関係があります。
例えば薬物療法で基準値に下がって治ったとしても、生活習慣が改善されていなければまた基準値から外れてしまうでしょう。一度基準値まで下がったからといって、気を抜かずに健康的な生活習慣を続けることが求められます。

予防方法を教えてください。

予防方法としては、生活習慣を改善することが最も効果的です。脂質異常症は、食事から摂取される脂質の量が多かったり、身体の中で上手に脂質を処理できなくなったりすることで発症します。
普段の食生活からバランスの良い食事を心がけ、メタボリックシンドロームにならないよう注意しましょう。アルコールや喫煙は控え、普段から運動する癖をつけておくことも大切です。

食事で注意することを教えてください。

食事では栄養バランスを考え、コレステロールを控えた食事を摂取する必要があります。例えば以下のような食品は控えた方が良いでしょう。

  • 豚肉
  • 牛肉
  • バター
  • チーズ
  • 卵黄
  • チョコレート
  • マヨネーズ
  • 魚卵
  • レバー
  • 揚げ物

逆に、以下のような食品は積極的に摂取するよう心がけてみてください。

  • 青魚
  • 野菜
  • 海藻
  • 大豆
  • 豆腐
  • 果物

洋食よりも和食中心の食事がおすすめです。ただ和食中心の食事は塩分量が多くなりやすいので、その点は注意してください。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

脂質異常症は自覚症状もなく、知らぬ間に様々な病気を引き起こす恐ろしい病気です。治療は長期戦になるケースが多いですが、生活習慣を改善することはご自身のためにもなります。
一度緩んでしまった習慣を引き締めるのは大変ですが、医師と一緒に目標値を目指して頑張りましょう。
きつい制限をかけてしまうと追い込まれて精神的にストレスを感じてしまうため、適度に楽しく行うことが大切です。周囲のサポートも借りながら、生活習慣を改善させましょう。

編集部まとめ

走る人
脂質異常症は生活習慣と深い関わりのある病気のため、長期的な自己管理が求められます。改善していくためには我慢を強いられることが多いかもしれません。

しかし、放置していれば動脈硬化・狭心症・心筋梗塞・脳出血・脳梗塞のリスクを高めることがわかっています。今後の健康のためにも、放置してはおけません。

自覚症状がないのでなかなか実感が湧きにくいですが、重篤な病気を発症する可能性があることを忘れず、早期発見・早期治療を心がけるようにしましょう。

この記事の監修医師