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“初体験”が早いと「脳卒中」や「心筋梗塞」などの心血管疾患リスク増加 中国研究グループ発表

 更新日:2024/01/23
初交年齢が若いと一部の心血管疾患リスク増との研究報告

中国の浙江大学医学院らの研究グループは、「性行動と12種類のCVD(心血管疾患)との関連を調査したところ、8種類のCVDで初交年齢が低いほど発症リスクが上昇するという因果関係が認められた」との研究結果を発表しました。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

発表した研究内容とは?

中国の浙江大学医学院らによる研究グループが発表した研究内容について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

中国の浙江大学医学院らの研究グループは、性行動と12種類のCVDの関連性を調査しました。研究成果は学術誌「Frontiers in Cardiovascular Medicine」に掲載されています。

研究グループは初交年齢と性的パートナー数、そして狭心症、心房細動・心房粗動、アテローム性動脈硬化、大動脈解離、下肢深部静脈血栓症、心不全、高血圧、脳内出血、虚血性脳卒中、心筋梗塞、肺塞栓症、くも膜下出血といった12種類のCVDとの関連を調べました。

その結果、初交年齢と有意な負の関連が狭心症、心房細動・心房粗動、アテローム性動脈硬化、下肢深部静脈血栓症、心不全、高血圧、虚血性脳卒中、心筋梗塞で認められたことがわかりました。また、初交年齢が低いほど発症リスクが有意に高くなったということも明らかになりました。さらに、これらのリスクについては男女で差が見られ、初交年齢と狭心症、心房細動・心房粗動、アテローム性動脈硬化との関連は女性の方が男性よりも強くなることがわかりました。なお、性的パートナー数とCVDとの因果関係については、男女ともに認められませんでした。

不眠、高強度の身体活動を10分以上おこなった日数、テレビの視聴時間の3因子について解析すると、「これらの3因子が初交年齢とCVDとの関連を部分的に媒介していることがわかった」と研究グループは述べています。研究グループは「これらの危険因子を回避することが、CVDの新たな予防・管理方法になる可能性がある」とし、「初交年齢とCVDを関連付けるメカニズムは完全には解明されておらず、さらなる研究が必要である」ともコメントしています。

CVD(心血管疾患)とは?

今回の研究対象になったCVDについて教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

CVDとは、心臓や血管に関連した病気のことを指します。脳に血液を送っている血管が詰まる「脳梗塞(脳卒中)」、心臓に血液を送っている血管がふさがる「心筋梗塞」、または全身へ十分な血液を送ることができない状態の「心不全」などがあります。また、下肢の動脈が細くなり詰まってしまう「閉塞性動脈硬化症」などもあります。

これらのCVDのリスクになり得る因子として、一般的には下記が挙げられます。

①喫煙
②高血圧
③糖尿病(耐糖能異常を含む)
④脂質異常症
⑤慢性腎臓病(CKD)
⑥肥満(特に内臓脂肪型肥満)
⑦高尿酸血症
⑧加齢
⑨家族歴(実祖父母・実父母・血縁の兄弟姉妹の脳心血管病や生活習慣病の既往や合併)
⑩睡眠時無呼吸症候群

今回の研究内容への受け止めは?

中国の浙江大学医学院らによる研究グループが発表した研究内容への受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

「初体験が早いとCVDリスクが増加する」という大変興味深い趣旨の内容の論文です。しかし、欧州の既存のデータを用いた研究であり、アジアなどの文化圏で同じように当てはめるのは難しいことや、心血管疾患には様々なリスクが存在し、ほかの潜在的なリスク因子を見逃している可能性もあるため、さらなる検討が必要と考えられます。

その一方、不眠・運動不足・テレビ視聴が関連を媒介していることから、「初交の早さ」のみならず、適度な運動・十分な睡眠などが心血管疾患の予防に重要であることを再確認した論文として評価されると思います。

本研究のみでは、「初交年齢」と「心血管疾患」との直接の関連は不明と言えるので、さらなる研究が必要であると考えます。

まとめ

中国の浙江大学医学院らの研究グループは、「性行動と12種類のCVDとの関連を調査したところ、8種類のCVDで初交年齢が低いほど発症リスクが上昇するという因果関係が認められた」との研究結果を発表しました。2020年におこなわれた調査では、日本の死因の第2位に心血管疾患入っているので、今回の研究も関心を持たれそうです。

この記事の監修医師