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【人間ドック】オプション検査の選び方 「年代別」に専門医が説明

 更新日:2023/03/27
【人間ドック】オプション検査の選び方を専門医が年代別に説明

人間ドックを受ける際に、悩むのがオプション検査の選び方。検査機関によってさまざまな検査項目を用意しており、「どれを受けたら良いのかわからない!」という人も多いのでは? そんなとき、指針となるのが年代。年齢によって受けるべきオプション検査の内容が変わってきます。では具体的に、どうやってオプション検査を選べば良いでしょうか。宇都宮セントラルクリニックの瀬尾先生に教えてもらいました。

瀬尾 弘司先生

監修医師
瀬尾 弘司(宇都宮セントラルクリニック 常勤医師)

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1990年獨協医科大学医学部卒業。獨協医科大学病院の心臓・血管内科教室に入局し、内科学全般および循環器研修を行う。1997年より栃木県保健衛生事業団にて循環器領域の予防医学を担当すると同時に、宇都宮セントラルクリニックにおいて冠動脈を中心とした循環器領域の画像診断やCMC(会員制メディカルクラブ)の顧問医として勤務している。

人間ドックではどんなことがわかる?

人間ドックではどんなことがわかる?

編集部編集部

人間ドックを受けると、どんなことがわかるのですか?

瀬尾 弘司先生瀬尾先生

人間ドックでは、全身の詳しい検査を行うことによって、さまざまな病気を早期に発見したり、病気のリスクについて調べたりすることができます。検査で見つかった病気の治療を開始したり、生活を見直したりすることで、病気を早く治したり、発症を未然に防いだりすることが期待できます。

編集部編集部

調子が悪くて検査を受けるのとは違い、まだ発症していない病気や、自覚症状のない病気を見つけるために検査をするのが人間ドック、ということですね。

瀬尾 弘司先生瀬尾先生

そうです。病気になると、すぐに症状が現れる場合もありますが、病気の種類によっては自覚症状がほとんどないまま、気づかないうちに進行するものもあります。たとえば、糖尿病、高血圧、脂質異常などの生活習慣病や慢性腎臓病、がんは病気の初期には症状が現れにくいもの。病気が進行すると、治療の方法が限られたり、治療の負担が大きくなったりすることも少なくありません。そのため、人間ドックを受けることで、自覚症状のない早期のうちに病気を見つけることができれば、少ない負担で治癒できる可能性が高まるといえます。

編集部編集部

早く見つければ、治療も軽いもので済むということですね。

瀬尾 弘司先生瀬尾先生

そうです。また、人間ドックによって病気そのものが見つからなかった場合にも、さまざまな検査の結果から、自分がどの程度健康であるかを知ることができます。もし、気をつけるべき項目が見つかれば、その結果に基づいて日ごろの生活を見直すことで、病気の発症を予防できる可能性があります。

編集部編集部

人間ドックではどんな検査を行うのですか?

瀬尾 弘司先生瀬尾先生

通常、人間ドックで調べる検査項目は50〜100。企業や自治体が行う健康診断で調べる項目は大体10〜15ですから、人間ドックではかなり詳細に健康状態をチェックすることができます。

編集部編集部

人間ドックでは、具体的にどのような検査項目があるのですか?

瀬尾 弘司先生瀬尾先生

一般に、基本的な健康状態をチェックするベーシックな検査と、それに追加して行うオプション検査に分かれています。個人の必要に応じてオプション検査を追加することもできます。

編集部編集部

ベーシック検査だと、どんな検査項目があるのですか?

瀬尾 弘司先生瀬尾先生

身体計測、血圧、心電図、眼科検診、聴力検診、呼吸機能検査、胸部X線、上部消化管X線または上部消化管内視鏡、尿検査、便検査、腹部超音波検査、血液検査、診察などが一般的です。

30代 オプション検査の選び方

30代 オプション検査の選び方

編集部編集部

ベーシックな人間ドックに、どんなオプション検査を追加すれば良いのでしょうか?

瀬尾 弘司先生瀬尾先生

考え方はいくつかあります。まず、現在なんとなく自覚症状がある場合は、その部位をきちんと調べる検査をオプションで追加するのも選択の目安となります。たとえば、「咳がでる」「呼吸が苦しいときがある」などの症状がある場合は、胸部X線検査だけでなく、胸部CTを行い、より精密に肺や気管支の状態を調べると、より詳細に健康状態を確認できます。ただし、一般的に自覚症状がある場合には人間ドックではなく、保険診療の適用となるのでご注意ください。

編集部編集部

なにも自覚症状がない場合は、どうしたら良いのでしょうか?

瀬尾 弘司先生瀬尾先生

家族など近親者がなんらかの重大な病気にかかったことがある場合は、もしかしたら、そうした体質を遺伝的に引き継いでいるかもしれません。特に、がんや心疾患、脳血管疾患などの一部には、遺伝性のものもあります。念のため、そうした心配がないか、がん検診PET検診を受けたり、心臓ドック脳ドックを受けたりすると良いでしょう。

編集部編集部

それ以外の場合は、どのようにオプション検査を選択したら良いでしょうか?

瀬尾 弘司先生瀬尾先生

まずは、年代と性別で考えます。たとえば女性の30代は、乳がんや子宮頸がんの発症リスクが高くなる時期。そのため、乳腺エコーやマンモグラフィなどの乳がん検診を受けたり、子宮頸がんの細胞診を受けたりすると良いでしょう。検査機関によってはそうした検査項目がパッケージになったレディースドックや婦人科検診もあるので、利用すると良いでしょう。

編集部編集部

なんとなく、人間ドックはある程度の年齢を重ねてから受けるものといいうイメージがありました。30代でも受けたほうがいいのですね。

瀬尾 弘司先生瀬尾先生

30代後半くらいから体調を崩し始める人も少なくありません。特に30代後半はまだ若く体力もあり、無理がききやすい年齢です。そのため、疲労やストレスが溜まって体調を崩す人も多いのです。さらに、喫煙や飲酒の習慣があれば、肺や肝臓の機能低下も気になります。生活習慣や嗜好に応じて人間ドックを受けましょう。

40代以降は、どんなオプション検査を受けるのがお勧め?

40代以降は、どんなオプション検査を受けるのがお勧め?

編集部編集部

オプションを追加するには、どのように考えたら良いのでしょうか。

瀬尾 弘司先生瀬尾先生

40代は、本格的な定期受診が必要な年齢となります。特に各種がん、心臓病、脳卒中リスクはしっかりチェックしましょう。具体的には、胸部CT検査、脳卒中リスクを調べる頭部MRI検査、心臓病などの心疾患リスクをチェックする心臓MRI検査、全身のがんをスクリーニングするPET-CT検査が挙げられます。

編集部編集部

がんについて調べるにも、PET-CT検査や腫瘍マーカーなど、さまざまな種類がありますよね。どのように選べば良いでしょうか?

瀬尾 弘司先生瀬尾先生

まずは、人間ドックに対する予算も関係してきます。たとえばPET-CT検査を受ける場合は、大抵15万円程度かかります。しかし、1cm以上に育った固形がんは全身に渡って見つけることができますから、部位を問わずがんが心配な人は受けると良いでしょう。同じく、がんのリスクを見つける検査として腫瘍マーカーがありますが、必ずしも異常値が出たからといって、がんというわけではなく、体質的に腫瘍マーカーが異常値になってしまう人もいます。腫瘍マーカーはがん診断の補助的なもの。CTやPET-CT、MRIなど他の検査と組み合わせて使用することをお勧めします。

編集部編集部

50代はどのようなオプション検査を受ければ良いでしょうか?

瀬尾 弘司先生瀬尾先生

現代社会では、50代はまだ現役で活躍している年代です。生活習慣病やがん以外にも、不整脈や狭心症に注意しながら、調子を崩しやすい体の部位や、現れやすい症状に対するオプション検査を追加しましょう。重点的に体の状態を調べ、病気のリスクに備えることが大切です。また、女性は更年期を迎える年代のため、体が不調に陥りやすくなります。たとえば、骨粗しょう症の危険性など、体の変化には気を配るようにしてください。

編集部編集部

60代以降はいかがでしょうか。

瀬尾 弘司先生瀬尾先生

日常的に体のメンテナンスを行うことが予防にもつながっていくことを理解し、三大疾病のがん、心臓病、脳卒中の発症を防ぐように意識して健診を受けましょう。男性は前立腺がんを発症する確率が高くなるのが60代といわれており、認知症などの不安要素が高まる年代でもあります。定期的な検査を継続して受診していくことが、これからの疾患リスクを抑えるために大切です。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

瀬尾 弘司先生瀬尾先生

せっかく人間ドックを受けても、その検査結果で注意喚起がされているにもかかわらず、放置してしまう人も少なくありません。病気が見つかった場合や、異常が指摘された場合は、早期発見することができたと捉え、自己判断しないで専門医の診断を受けるようにしましょう。また人間ドックの結果では、経年的な変化をみることも大切。毎年の検査結果を比較してみることで、「中性脂肪が増えてきた」「血圧が上がってきた」「肝臓の数値が悪くなってきた」などの変化がわかり、日常生活の改善につなげやすくなります。人間ドックは受けっぱなしにせず、きちんと毎日の健康管理に生かすようにしましょう。

編集部まとめ

人間ドックを受けたあと、結果が郵送されてきても、ちらっと見て引き出しにしまいっぱなしという人も多いのではないでしょうか?人間ドックの意義は「受けること」よりも「その結果を生活に生かすこと」にあります。必要に応じて医療機関を受診したり精密検査を受けたりして、人間ドックが発するサインを見逃さないようにしましょう。

医院情報

宇都宮セントラルクリニック

宇都宮セントラルクリニック
所在地 〒321-0112 栃木県宇都宮市屋板町561-3
アクセス JR宇都宮駅からタクシーで30分
JR宇都宮駅からバスで30分「ことぶき会館入口」下車し徒歩10分
診療科目 内科・脳神経内科・消化器科・循環器内科・呼吸器アレルギー内科・リウマチ科・ペイン外来・乳腺外科・放射線治療科・セカンドオピニオン外来・パーキンソン外来

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