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「低血糖」になる原因はご存知ですか?医師が徹底解説!

低血糖

低血糖のときには、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる原因や対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

久高 将太 医師

監修医師
久高 将太 医師

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琉球大学医学部卒業。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。2022/5に新内科専門医試験受験予定。

「低血糖」症状で考えられる病気と対処法

低血糖とは①血糖が70mg/dl未満かつ低血糖症状がみられる状態、あるいは②血糖が54mg/dl以下のことを指します。低血糖症状といっても症状は1種類だけでなく、以下のように様々な症状があります。

  • 軽症~中程度(血糖値が50~70mg/dl)のとき
  • 冷や汗、不安感、動悸、頻脈、手の震え、顔色が悪いなど
  • 重症(血糖値が50mg/dl未満)のとき
  • 頭痛、眼のかすみ、強い空腹感、眠気、意識がもうろうとする、けいれんなど

上の数値はあくまで参考であり、症状が出る程度や種類、血糖値には個人差があります。症状が出現した際にはすみやかに血糖測定し、血糖値を確認する必要があります。低血糖の程度に応じて血糖を上げる処置や病院受診を考慮する必要があります。

低血糖で吐き気・気持ち悪さを伴う、異常な空腹感を伴う、冷や汗をかく症状で考えられる原因と治し方

吐き気や気持ち悪さ、冷や汗、強い空腹感がみられた時に低血糖を疑う必要があります。特に、すでに医師から糖尿病の診断を受けている、もしくは糖尿病の治療目的で内服薬やインスリン治療をしている方は低血糖が原因である可能性が高くなります。また、朝方や夜間などの空腹時間が長い場合や激しい運動時、飲酒時、入浴時にこれらの症状が起こった場合はさらに低血糖である可能性が高くなります。
低血糖の疑いがある場合は、まずはなるべく早くブドウ糖を摂取しましょう。具体的にはブドウ糖が含まれる物(アメや甘いジュース、ラムネなど)を口に入れるようにしましょう。また、インスリン治療中で、自己血糖測定をしている方は症状がある時の血糖値と、甘いものを食べてから30分後くらいの血糖値を確認するようにしましょう。
これらの低血糖症状は、多くは糖尿病の方がなりやすいのですが、一部には反応性低血糖(胃を切除した方や糖尿病予備軍の方にみられやすい症状)という病気が原因であることがあります。反応性低血糖の場合は、食後約2時間以内に低血糖症状がみられることが特徴です。糖尿病治療中の方で注意したいのがシックデイという状態です。シックデイとは発熱や下痢、嘔吐などの体調不良の時のことを指し、この状態の時はケトアシドーシスという合併症を起こすことで気持ち悪さや冷や汗がみられる可能性があります。
他にも低血糖を起こしうる病気として、頻度は低いものの副腎皮質機能低下症や成長ホルモン分泌不全症などがあります。いずれも体に必要なホルモンの分泌低下によって低血糖を起こしてしまう病気になります。
上記のような症状があり、低血糖症状が疑われる場合はまず甘いものを摂取することをお勧めします。ただし、低血糖の対応をした後も症状が改善しない場合や、症状が何回も繰り返し起こる場合は、総合内科や内分泌代謝・糖尿病内科がある比較的大きな病院を受診することをお勧めします。

低血糖で動悸や痙攣がおこる、眠気が強い、起きれない、集中が続かない、ボーっとする症状で考えられる原因と治し方

低血糖症状は軽いものであれば吐き気や強い空腹感などがみられますが、重症になると脳がダメージを受け、中枢神経症状という重い症状がでることがあります。脳は主に糖分で栄養されているため、血糖値が低い状態では脳の機能が低下してしまうとこのような症状が起こるのです。場合によっては本人が低血糖症状を自覚せず、周りの人からみて「様子がおかしい」ということで気づかれることがあります。
意識がもうろうとしていたり、強い眠気がみられる場合は身近にあるブドウ糖が含まれる甘いもの(飴やジュースなど)を摂取するようにしましょう。さらに重症化すると意識を失ってしまう恐れもあるので、運転中の方は車を停め、立っている方は一旦座ることをお勧めします。自分で動けないような状態の場合は近くの人に助けを求めましょう。
これらの低血糖症状は、血糖値が50mg/dl以下の重度な低血糖で起こりうる症状です。糖尿病の患者さんの中でも、2型糖尿病より1型糖尿病の方は重症低血糖を起こしやすいです。他に、重い低血糖を繰り返す場合に考えられるのがインスリノーマというホルモンの病気や肝硬変などといった病気になります。インスリノーマは、血糖値に応じて変化するはずのインスリンというホルモンが腫瘍から過剰に分泌され続けることで重症な低血糖が繰り返されてしまう病気です。肝硬変では肝臓の機能が低下し、糖分を肝臓に蓄えられないことや糖を新たに産生することができないことで低血糖を起こしやすくなります。
重症な低血糖を疑う症状がみられた時は甘いものを摂取し、すぐに症状が改善する場合は落ち着いたら近くの内科や糖尿病内科を受診するようにしましょう。自分で動けないような状態や、甘いものを摂取してもこれらの症状が続く場合は、救急車を呼んで総合病院を受診するようにしましょう。決して自分で運転したり、自転車に乗って移動することはしないでください。

女性が低血糖になる主な原因と治し方

女性は、月経周期によってホルモンバランスの変化が起こり、その影響で血糖値が変化しやすいことが言われています。特にエストロゲンは血糖を下げるホルモンであるインスリンを効きやすくする働きがあるとされています。低血糖との直接的な関連は明らかではありませんが、2型糖尿病の方で、閉経後の低血糖の発症頻度はエストロゲンの量によって異なるというような報告もありますので、少なからず関連性があると考えてよいでしょう。
他にも女性には妊娠・出産という特有のライフイベントが起こり得ます。お腹の赤ちゃんに栄養を与えやすくするため、妊娠中は妊娠していない時よりも血糖が低めになるのが通常です。こちらは病気ではないため、特別の治療は不要になります。
月経周期中の空腹感については少量の間食をすることで改善が期待できますが、間食の取りすぎは体重増加に繋がるので適度にしておきましょう。妊娠中に血糖値が低めになることで空腹感がみられる場合は軽い間食をとることで対応しましょう。ただしこちらも体重増加の程度によっては控えた方が良い場合がありますので担当医と相談してください。

男性が低血糖になる主な原因と治し方

基本的に、性別によって低血糖の起こしやすさや症状に大きな違いはないと考えてよいでしょう。しかし、男性の方が女性と比較して筋肉量や運動量が多いため、血液中の糖分を消費しやすいことが考えられます。その意味では女性より男性の方が低血糖を起こす機会が多いと考えられます。
体力を使うような運動をする場合は、運動前や運動後に少量の糖分を摂取することで低血糖症状を予防することが可能です。また、1日を通して低血糖を予防するためには朝・昼・夕の食事をしっかり食べることも重要です。

子どもが低血糖になる主な原因と治し方

子ども(特に生まれたての新生児)は血糖値を一定の範囲に安定させる機能が未熟であることから、大人よりも低血糖が起こりやすいとされています。さらに子どもは低血糖症状を周囲にはっきりと伝えることができず、機嫌が悪い、ぼんやりしているなどの症状で気づかれることがあります。
特別な病気がなくても、大人よりも低血糖を起こしやすい子どもにとって、おやつや間食をとることは重要です。大量に食べる必要はありませんが、糖分やタンパク質、カルシウムなどを含むおやつを食べさせてあげるとよいでしょう。
間食を食べさせても、あまりにぼんやりしている状態が続いたり、具合が悪そうであれば低血糖だけでなく他の病気が隠れている可能性がありますので、近くの小児科を受診するようにしましょう。

すぐに病院へ行くべき「低血糖」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

低血糖症状の中で緊急性が高く、重症であることを意味する症状は頭痛、めまい、意識障害、けいれんなどの中枢神経症状です。これらの症状があった場合は、ブドウ糖などの糖質を摂取した後に少し症状が改善したとしても、必ず医療機関を受診するようにしましょう。低血糖の原因の多くが糖尿病になります。そのため、糖尿病内科や救急科がある大きな病院を受診することをお勧めします。あまりに症状が重い場合は自分で病院に向かうのではなく、救急車を呼びましょう。

受診・予防の目安となる「低血糖」のセルフチェック法

  • ・糖分や間食をとっても低血糖症状が改善しない場合
  • ・意識が悪くなるような症状がある場合
  • ・けいれんが起こった場合

「低血糖」症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「低血糖」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

糖尿病

糖尿病とは、血糖値を下げるホルモンであるインスリンがうまく働かない、もしくはインスリンの分泌が低下していることが原因で血糖値が高くなってしまう病気³です。免疫機能の異常が原因で発症する1型糖尿病と、生活習慣や遺伝的な要因などによって発症する2型糖尿病、妊娠中に血糖値が高くなる妊娠糖尿病などがあります。
治療の基本は運動療法や食事療法を行ったうえで、飲み薬やインスリン注射によって血糖を下げることになります。現代の医療では完全に治癒することがない病気ですので、血糖値を正常に近い状態で落ち着かせることが治療の目的になります。
糖尿病は初期ではほとんど無自覚ですが、進行してくると喉の渇きや尿量の増加、体重の急激な減少、だるさなどが現れるようになります。このような症状が出た場合は糖尿病の疑いがあるので医療機関を受診しましょう。また、初期の糖尿病をみつけるためには定期的に人間ドックや健康診断を受ける方がよいでしょう。
糖尿病を疑った際には、内科や糖尿病内科を受診するようにしましょう。

甲状腺機能障害(甲状腺機能亢進症・甲状腺機能低下症)

甲状腺ホルモンは、全身の代謝をコントロールしているホルモンといっても過言ではありません。甲状腺ホルモンが過剰になると甲状腺機能亢進症といって代謝が活発になりすぎる病気になります。たとえばいくら食べても体重が減少する、下痢や発汗、動悸があるなどの症状がみられます。逆に、甲状腺ホルモンが低下すると甲状腺機能低下症といって代謝が落ちてしまう病気になります。この場合、低体温、むくみ、脱毛、徐脈などの症状がみられます。
上のような症状がある場合は病院で血液検査や甲状腺の超音波の検査をしてもらうとよいでしょう。この場合は内科、内分泌代謝内科(甲状腺内科)など専門科のいる病院を受診することをお勧めします。

「低血糖」になったときの正しい対処法は?

低血糖は血糖値が低くなるほど脳の機能が低下するような症状(中枢神経症状)が現れやすくなります。たとえば頭痛、意識が悪くなる、強い眠気、けいれんなどの症状です。これらの症状がある場合は病院を受診した方がよいでしょう。糖尿病ではない場合は軽い間食や糖分を摂取することで症状が緩和されるでしょう。早く症状を改善させるためには、同じ糖質を含む食べ物であってもご飯や麺類などよりも、ジュースや飴、ブドウ糖を直接摂取してしまう方が血糖値は速やかに上昇してきます。食事の取り方を工夫することで低血糖を起こりにくくすることができます。具体的には1日3回の食事をしっかりとることや、早食いをしないこと、お酒を飲むときは炭水化物を一緒にとることなどがあります。糖尿病でインスリン治療をしている方は、食事を取らない時はインスリンの量を減らすか、インスリンを打たないなどの対策が必要です。低血糖を起こすような糖尿病などのお薬を一切飲んでいない方は低血糖症状があった場合は糖分や間食をとって血糖値を上げるようにしましょう。高血圧など、糖尿病以外のお薬を飲まれている方は、低血糖症状があるからといって内服をやめてしまうと身体の他の部位に問題が出てくることがありえるので、自己判断で休薬することは避けた方がよいでしょう。低血糖を予防するためには、糖尿病や糖尿病予備軍にならないようにすることが一番です。そのためには適度な運動をし、食べ過ぎないことで肥満を防ぐ生活をすることが重要です。低血糖を疑う症状があった場合は、内科や糖尿病内科、もしくはそれらの科がある総合病院を受診することをお勧めします。

「低血糖」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「低血糖」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

糖尿病ではなくても低血糖になることはありますか?

久高 将太 医師久高 将太 医師

あります。糖尿病の初期の段階(糖尿病予備軍)や、インスリノーマや副腎皮質機能低下症というホルモンの病気、または肝硬変などの肝臓の病気があると低血糖が起こることがあります。

夜間・夕方に低血糖になりやすいのですが対処方法はありますか?

久高 将太 医師久高 将太 医師

低血糖が起きやすい時間帯にあらかじめ少量の間食を取ることが対策のひとつです。または、低血糖が起きやすい時間帯のひとつ前の食事(昼食や夕食)をゆっくり食べたり、炭水化物が多い食事を控えたりすることで予防できる可能性があります。

低血糖の症状が出たときにチョコレートを食べるの効果的ですか?

久高 将太 医師久高 将太 医師

血糖値を上げる効果はあります。ただし、チョコレートは糖分の他に脂質も含まれているので、ブドウ糖と比較するとゆるやかに血糖値を上げていく特徴があります。そして血糖値を上げる効果は少し長くなります。

低血糖になりやすい人の特徴は何でしょうか?

久高 将太 医師久高 将太 医師

一番は糖尿病の治療中の方が低血糖を起こしやすいです。そして加齢、早食い、肝機能障害なども低血糖のリスクを高めてしまう原因や特徴になります。

まとめ

この記事では低血糖ではどのような症状が起こるのか、またどんな病気が原因か、そしてどんな対策をしたらよいのかをご説明してきました。低血糖の主な原因は糖尿病に関連する病気や状態であることが多いです。低血糖だなと思ったら自分ですぐに対策できるよう日頃から準備しておきましょう。
 低血糖は日常の生活に影響を与えかねない症状です。低血糖を起こしうる病気を知っておき、当てはまる症状があった場合は医療機関を受診して原因を調べ、対策をとるようにしましょう。

「低血糖」で考えられる病気と特徴

「低血糖」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

糖尿病内科・内分泌内科の病気

低血糖のほとんどは内分泌機能の異常であるため、低血糖状態になった場合にはその原因が何か一度病院で検査しておくことが望ましいでしょう。

「低血糖」と関連のある症状

「低血糖」と関連している、似ている症状は14個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

「低血糖」症状の他に、これらの症状がある場合も「1型糖尿病」「2型糖尿病」「肝硬変」「副腎皮質機能低下症」「糖原病」「反応性低血糖」などの疾患の可能性が考えられます。
意識が悪い、痙攣があるなどの症状がある場合は、早めに医療機関への受診をおすすめします。

この記事の監修医師