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「成長ホルモン分泌不全症」の症状・原因・診断基準はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/04/03
「成長ホルモン分泌不全症」の症状・原因・診断基準はご存知ですか?医師が監修!

成長ホルモン分泌不全症とは、身長を伸ばしたり、体重を増やしたりする機能を持つ成長ホルモンの分泌が何らかの原因で少なくなってしまう病気です。

子どもの時期にこの病気にかかると低身長や低体重といった症状が現れます。また大人もかかることのある病気です。

今回はこの病気について、症状・原因・診断基準・治療方法を紹介します。

治療にかかる期間や、寿命との関係についても触れますのでぜひ参考にしてください。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

プロフィールをもっと見る
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

成長ホルモン分泌不全症の症状と原因

身長を測る子ども

成長ホルモン分泌不全症とはどのような病気でしょうか?

成長ホルモン分泌不全症は、成長ホルモン(GH)の分泌が不十分なことにより、身長の低下や発育の遅れを引き起こす疾患です。成長ホルモンは主に脳下垂体の一部である副腎垂体から分泌され、骨の長さ・筋肉量の増加・脂肪の代謝などに関与しています。
成長ホルモン分泌不全症は、主に脳下垂体の働きに関する異常や、GH受容体の欠損などによって引き起こされることが多いです。また成長ホルモンの分泌不足により身長が伸びないことを成長ホルモン分泌不全性低身長症、大人の成長ホルモン分泌不全症を成人成長ホルモン分泌不全症と呼んでいます。

症状を教えてください。

この病気は、成長ホルモンの分泌量が不足し、成長が遅れることを特徴としています。症状には、身長が低い・体重が軽い・骨密度が低い・筋肉量が少ない・脂肪量が多い・肌が薄く乾燥する・顔立ちが小さい・怠けやすい性格である・疲れやすい・免疫力が低いなどがあります。
思春期以降に発症する場合は性器成熟が遅れ、性欲が低下することも多いです。また成人になっても身長が低く筋肉量が少ないため、疲れやすく免疫力の低い状態が続きます。

発症する原因は何でしょうか?

この病気のよく知られている原因として、下垂体の腫瘍や下垂体の手術などによる成長ホルモンの分泌量減少が挙げられます。
ほか、成長ホルモンが不足する原因としては以下の通りです。

  • 先天性の成長ホルモン欠乏症
  • 脳性成長ホルモン欠乏症
  • 後天性の成長ホルモン欠乏症
  • 慢性疾患(糖尿病・肝硬変・腎疾患など)

大人が発症することもあるのでしょうか?

成長ホルモン分泌不全症は、子どもだけでなく大人にも発症することがあります。成人においては、主に下垂体の機能低下や、脳性成長ホルモン欠乏症により発症します。
成人において発症する場合、症状は低身長・筋肉量の減少・脂肪の増加・性的機能低下・疲れやすさなどが多いです。
成人においても治療が必要なため、症状が見られる場合は、内科医や内分泌専門医に相談することをおすすめします。

成長ホルモン分泌不全症の診断と治療

看護師と子供

診断基準を教えてください。

成長ホルモン分泌不全症の診断基準には、主に以下のようなものがあります。

  • 身体や心の症状:身長が低い・体重が軽い・骨密度が低い・筋肉量が少ない・脂肪量が多い・肌が薄く乾燥しやすい・顔立ちが小さい・怠けがち・疲れやすい・免疫力が低いなど
  • 血液検査:GH濃度が低値である
  • 下垂体機能検査:GH分泌量が不足していることが確認される
  • 脳脊髄液検査:GH分泌量が不足していることが確認される
  • インシュリン耐性試験:GH分泌量が不足していることが確認される

ただし、診断には個人差があり、1つの結果だけでは診断を確定できないため、症状や検査の結果を総合的に判断することが重要です。

治療方法を教えてください。

成長ホルモン分泌不全症の治療方法は、主に成長ホルモン補充療法です。この療法は、患者に適量の成長ホルモンを注射することで、成長ホルモンの欠乏を補うものです。
補充療法は通常、毎日または週に数回、長期間行われます。治療開始時の身長・体重・性別・年齢などによって、1日あたりの成長ホルモン量が異なります。
治療中は、GHの測定値や身長などを定期的に測定し、適切な量を維持するために調整することが必要です。また成長ホルモン補充療法に加えて、適切な栄養や運動などの健康的な生活習慣を身に付けることも重要です。

治療は何歳から始めるのでしょうか?

この病気の治療は、子どもの時期から始めることが一般的です。成長ホルモンの治療は成長期間中に行うことで、成長を促進し、身長を伸ばせます。
成人においても治療が必要なため、診断された場合は早めに治療を受けることをおすすめします。治療方法としては、成長ホルモンの注射剤を毎日投与する方法が一般的です。注射量や投与方法は、患者さんに合わせて調整します。
また、治療を受けている間は、医師の指導に従って適切な栄養や運動をすることが重要です。成長ホルモン欠乏症は慢性の病気であり、終身治療が必要なため、継続的に医師の指導下で治療を受け続けることが重要です。

治療期間を教えてください。

この病気の治療は、一般的に終身継続することが必要です。子ども期においては、成長期間中に行うことで、成長を促進し身長を伸ばせます。子ども期の治療は一般的に、成長期の終了まで継続することが推奨されています。
成人においても、成長ホルモンの欠乏が原因で症状が出ている場合は、終身継続することが必要です。ただし治療期間は個人差があり、治療を受ける期間は医師の指導に従って調整することが重要です。

成長ホルモン分泌不全症の予後

医療イメージ

成長ホルモン分泌不全症は完治するのでしょうか?

成長ホルモン分泌不全症は、原因によっては適切な治療を受けることで、成長や体型などの症状を改善できます。例えば、基礎疾患(脳腫瘍など)による成長ホルモン分泌不全症の場合、基礎疾患の治療をすることでGH分泌が改善することがあるのです。
また、成長期に成長ホルモン補充療法を受けることで身長が増加し、体型や疲れやすさなどの症状も改善できます。ただし成長期を過ぎると、成長ホルモン補充療法の効果は著しく低下するため、成人後には成長ホルモン補充療法は通常必要ありません。
なお、成長ホルモン補充療法は長期間継続することが必要であり、治療を中止した場合には症状が再発することがありますので気を付けましょう。

成長ホルモン分泌不全症は寿命に影響するのでしょうか?

成長ホルモン分泌不全症は、身長や体重などの成長に影響を与えますが、寿命に直接的な影響はありません。
ただし成長ホルモンの欠乏が原因で免疫力が低下し、疲れやすくなったり脂肪が増加したりすることで、心臓病や糖尿病などの生活習慣病にかかりやすくなる可能性があります。
また成人においては、性機能低下や疲れやすさなどの症状が続くこともあり、生活の質に影響を与えることも多いです。そのため、早期に発症した場合は早期の治療を受けることで、症状を軽減し、健康な生活を送れます。

成長ホルモン分泌不全症を治療しないとどうなりますか?

この病気を治療しない場合、子ども期においては成長が遅れ、身長が低いままとなってしまいます。また成人期においても症状が残り、身長が低くなる・筋肉量が減少する・性的機能低下・疲れやすくなる・などが見られることが多いです。
成長ホルモンの欠乏が原因で免疫力が低下し、疲れやすくなったり脂肪が増加したりすることで、心臓病や糖尿病などの生活習慣病にかかりやすくなる可能性もあります。
また、成人においては性機能低下や疲れやすさなどの症状が続くこともあり、生活の質に影響を与えることがあります。成長ホルモン分泌不全症の治療を受けない場合、症状が長期にわたって残り、生活の質に影響を与えることが少なくありません。
早期に発症した場合は、早期の治療を受けることで症状を軽減し、健康な生活を送れます。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

この病気は命や寿命に関わるものではありませんが、GH欠乏による子どもの低身長・低体重は成長期を過ぎるとホルモン投与による治療が難しく、生涯に渡って悩むことになりかねません。
また、成人の成長ホルモン分泌不全症は生活の質を大きく下げることになります。お子様の成長やご自身の身長の伸び・疲れやすさ・肥満などでお悩みの場合は、早めに医師に相談し早期治療に取り組みましょう。

編集部まとめ

小児科の医師
成長ホルモン分泌不全症は、成長ホルモンの不足によって身長が伸び悩んだり、体重が増えなかったりといった症状が現れる病気です。

子どもだけでなく、大人にも発症する可能性があり、大人の場合は体重増加や疲れやすさが症状として現れます。

命や寿命に関わる病気ではないですが、身体の成長を阻害し生活習慣病に繋がるおそれもありますので、早めの発見と治療が大切です。

お子様の成長や、ご自身の身体の不調について気付いたことがあれば、早めに病院にかかって検査を受けましょう。

この記事の監修医師