【糖尿病患者の歯科治療】 受診の際に気をつけること・注意点を歯科医が解説
歯科医院を受診する人の中には、高血圧や糖尿病、心臓疾患などの持病がある人も多くいらっしゃいます。基本的に持病があっても歯科治療は受けられますが、受診の際にはいくつか注意しておきたいこともあるようです。そこで今回は「糖尿病」にスポットを当てて、糖尿病の人の歯科治療で気をつけたいことや治療を受けるメリットなどを、「いちやま歯科」の一山先生にお聞きしました。
監修歯科医師:
一山 茂樹(いちやま歯科)
治療にリスクはない? 糖尿病患者さんの歯科治療で注意すべきこと
編集部
糖尿病の持病があっても、歯科治療は問題なく受けられるのでしょうか?
一山先生
はい。糖尿病の人でも血糖のコントロールが良好であれば、健康な人と同じように歯科治療を受けることができます。ただし、そのときの病状や体調によっては、医科と連携して担当医に相談しながら治療をおこなうかの判断をする場合もあります。
編集部
血糖のコントロールというお話がありましたが、具体的に「これぐらいであれば問題なく治療が受けられる」という目安はありますか?
一山先生
血糖のコントロールを評価する目安に「ヘモグロビンA1c」という数値があります。この数値が7.0%以下であれば、歯科治療に問題はありません。また、歯石除去や抜歯など出血を伴う処置についても、ガイドラインでは「ヘモグロビンA1c6.9%未満または空腹時血糖が100~140mg/dl」を基準としています。一方で、ヘモグロビンA1cが8や9になってしまうと、医科の先生に相談して治療の可否を決めていく必要があります。
編集部
血糖のコントロールが上手にできていないと、やはり歯科治療で心配なリスクなどがあるのでしょうか?
一山先生
そうですね。糖尿病の人の場合、血糖値が高いと「感染を起こしやすい」「心臓血管系の障害」などの点がリスクでしょう。歯科治療は抜歯などの外科処置だけでなく、例えば歯石取りでも多少の出血はありますから、その傷口から感染した細菌が全身に巡るリスクがないとは言い切れません。したがって、歯科医院によっては治療前に簡易血糖値測定器で血糖値を確認する場合もあります。
編集部
ほかにも、歯科治療で起こり得るリスクはありますか?
一山先生
麻酔や治療によるストレスで血糖値が変動する場合もあるため、その点も十分配慮しながら治療をおこなう必要があります。
糖尿病患者さんが歯科治療を受ける際に気をつけること
編集部
お話しいただいた治療のリスクを踏まえて、糖尿病の人が歯科医院を受診する際に気をつけておきたいことを教えてください。
一山先生
まず、自分が糖尿病とわかっているのであれば、必ずそのことを歯科医師に伝えるようにしてください。また、その際には「糖尿病連携手帳」など普段の血糖値がわかるものや「お薬手帳」なども持参するようお願いします。
編集部
まずは自身が糖尿病であることを伝えることが肝心なのですね。
一山先生
はい。これは糖尿病に限らず、ほかの持病を持っていても同じことが言えます。現在の健康状態を正しく伝えておけば、歯科医院側もそれを踏まえて治療体制を整えますし、必要に応じて医科と連携して治療を進めることも可能になります。したがって、患者さんが安心して歯科治療を受けるためにも「歯科医に伝える」という点だけは忘れないようにしてください。
編集部
治療当日に気をつけておきたいことはありますか?
一山先生
治療当日は血糖の変動を防ぐために空腹時は避け、治療前に必ず食事をとるようにしてください。また、インスリンや血糖値を下げる薬なども通常どおり服用していただくようお願いします。加えて、治療中に低血糖になった場合に備えて、ブドウ糖や飴、糖分を含む飲料などを持参しておくと安心です。
糖尿病患者さんが歯科治療を受けるメリット
編集部
糖尿病患者が歯科治療を受けると、どのようなメリットがありますか?
一山先生
※糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン2014
https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_diabetes.pdf
編集部
つまり、歯周病をしっかり治療すれば糖尿病の悪化も防げるわけですね。
一山先生
※歯周病菌のアルツハイマー様病態誘発に関与する原因酵素を特定
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/141/
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
一山先生
今回は歯科治療に関する話でしたが、むし歯や歯周病はなる前に「予防する」ということが最も重要です。したがって、治療のときだけ受診するのではなく、異常がないときにも定期的に歯科医院を受診して、検査やクリーニングを受けることも忘れないようにしましょう。
編集部まとめ
糖尿病の持病がある人でも、血糖のコントロールが良好(ヘモグロビンA1c7.0%以下)であれば、通常どおり歯科治療は受けられるとのことでした。糖尿病の人の場合、むし歯や歯周病になるとすぐに進行してしまう可能性があるため、早い段階で治療を受けてこれらの病気の重症化を防ぐことが肝心です。なお、歯科医院を受診する場合は、自身が糖尿病であることを担当医に伝えて、現在の病状がわかる糖尿病連携手帳やお薬手帳などを必ず持参するようにしましょう。
医院情報
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診療科目 | 歯科 |