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「肝硬変」の初期症状・アルコール以外の原因はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/10/10
「肝硬変」の初期症状・アルコール以外の原因はご存知ですか?医師が監修!

肝硬変は、肝臓の組織が硬くなり機能が低下する病気です。ウイルスの感染やアルコールの過剰摂取によって引き起こされ、命に関わる合併症を引き起こす危険があります。

肝硬変は初期に無症状の場合があり、発見が遅れてしまうと重症化する場合もあるので注意が必要です。原因や症状について理解し、早期発見の参考にしてみてください。

早期に治療すれば予後も良好です。どのような治療があるのか、どんな症状が現れると危険なのかも解説します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

肝硬変はどんな病気?

お酒で乾杯

肝硬変はどんな病気ですか?

肝臓の細胞がウイルスの感染やアルコールなどにより破壊と再生を繰り返すことで、硬くなり機能が低下している状態を肝硬変といいます。
ウイルスやアルコールなどの影響で肝臓に炎症が起こると、修復する際にコラーゲンというたんぱく質が増加し肝臓全体に広がってしまいます。
悪化すると腹水や肝性脳症・食道静脈瘤などを起こし、余命にもかかわる病気です。初期症状が現れにくく気づきにくいため、検査による早期発見が重要です。

原因が知りたいです。

原因はウイルス感染やアルコールなど以外にも下記の原因があります。

  • B型肝炎ウイルス
  • C型肝炎ウイルス
  • アルコール性肝障害
  • 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)
  • 原発性胆汁性胆管炎
  • 自己免疫性肝炎
  • 薬物中毒
  • 胆汁うっ滞
  • 寄生虫などの感染

C型肝炎による肝硬変が最も多く全体の約50%といわれています。次にアルコール性肝障害が約20%、B型肝炎が約10%です。

初期症状にはどんなものがありますか?

肝硬変の初期段階では炎症が起きている部分を他の部分で補うため、機能が維持され症状が出ないことが多いです。そのため発見が遅れてしまうことが多々あります。
症状が現れる場合もあり、肝硬変の症状は下記のようなものがあります。

  • 食欲の低下
  • 吐き気
  • 体重の減少
  • 倦怠感
  • 疲労感
  • 筋攣縮
  • 手掌紅斑
  • 蜘蛛状血管腫

上記の症状が現れたら病院の受診をおすすめします。

肝硬変の合併症があれば教えてください。

肝硬変は合併症を発症しやすく予後に大きく関係してきます。

  • 食道静脈瘤
  • 胃静脈瘤
  • 肝性脳症
  • 腹水
  • 突発性細菌性腹膜炎
  • 筋けいれん
  • 門脈肺高血圧症(PoPH)
  • 血小板減少
  • かゆみ

肝臓が硬くなることで血管の圧力が高くなり、静脈瘤が発生することがあります。破裂してしまうと大出血を起こすため、手術での対応が必要な場合もあります。
また、肝機能の低下によってアンモニアなどの老廃物が処理できなくなることで脳症になる可能性も高まるのです。他にも腹水などは悪化すると呼吸困難を起こすなど、命にかかわる合併症が多くあるので注意しましょう。

肝硬変の治療方法

ウイルス検査

治療方法にはどのようなものがありますか?

肝硬変を完全に治療することはできませんが、肝炎ウイルスに対する治療薬や合併症に対する治療法があります。
B型肝炎ウイルスにはインターフェロンや核酸アナログ製剤の長期内服が効果的です。C肝炎ウイルスには非常に有効性が高い直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の服用が認められています。B型肝炎ウイルスの人はアラフェナミドフマル酸塩や抗ウイルス薬の服用が効果的です。
最も原因になるC型肝炎ウイルスには経口抗ウイルス薬による治療が認められています。他にも肝硬変になってしまうと分岐鎖アミノ酸が不足することがあり、不足分を薬によって補充することで肝臓によるタンパク合成能が改善することがあります。
しかし、併用する際に注意が必要な薬剤もあるため医師の指示に従いましょう。食道静脈瘤が生じている場合は静脈瘤の破裂を未然に防ぐ内視鏡治療や血管カテーテル治療が必要な場合があります。
肝性脳症は肝臓で除去できるはずの老廃物が除去できなくなってしまうことが原因なので、食事や薬物によって腸内環境を整えることが大切です。腹水に対しては水分や塩分の制限や利尿剤の使用を行います。
これらの対処療法で改善されない場合、肝移植を行うこともあります。腹水や黄疸などが治療によって改善せず、基準を満たさない場合に肝移植を受けることができるのです。
このようにそれぞれの原因や症状に合わせて治療を行い肝機能の維持に努めます。そのため完全に肝硬変を改善するわけではありません。

入院期間は平均でどれくらいですか?

肝硬変で入院が必要な場合は、肝臓がんや静脈瘤の治療・C型肝炎の検査・C型肝炎の治療などで、それ以外は通院での治療になります。
肝臓がんの手術では約2週間、静脈瘤の手術では内視鏡を使用し2・3週間程度です。C型肝炎の検査には肝生検という検査を行います。肝臓に直接針を刺し組織を採取するため入院が必要ですが、2・3日と短期間の入院です。
C型肝炎を診断され治療を受ける際、薬の副作用の様子を観察するため2週間程度の入院が必要になります。

肝硬変は完治するのでしょうか?

一度肝硬変になってしまった組織は完全に元に戻ることはありません。しかし、医療技術の発展とともに肝機能の維持や進行を抑えることができるようになってきました。
肝臓がんや食道静脈瘤などの合併症に対する予防や治療が大切です。これ以上悪化しないよう生活習慣や食生活を工夫することで肝機能を正常により近づけることはできます。しかし、損傷した肝臓の細胞は戻らないため完治は難しく、定期的な受診が必要です。

肝硬変の注意点と予防方法

診察をする医者

肝硬変の余命について教えてください。

C型肝炎ウイルスは約90%除去できるようになったため、合併症の対処が重要です。肝硬変の重症度を表すChild-Pugh分類を予後予測に使用できます。こちらの分類は血清アルブミン値や症状などで点数をつけるもので、GradeCになると3年生存率は40%と報告されています。
しかし、食事など生活習慣を改善することで進行を抑えることが可能です。禁酒や食事制限によって余命宣告後も余命を超えて生存することができる場合もあります。
また、対処療法で改善が見込めなかった場合でも、肝移植を行った場合5年生存率は40から70%といわれています。しかし、初期の頃と比べると悪化している状態では対処法も減ってきてしまうため、早期に発見し対処していくことが大切です。

家族が注意すべき点はありますか?

C型肝炎は血液を介して感染する恐れがあるため注意が必要です。通常の日常では感染のリスクはそこまでありませんが、歯ブラシや髭剃りの共有は行わないようにしましょう。血液に触れてしまう可能性があります。
また、C型肝炎は肥満や糖尿病により肝臓に脂肪がたまることで肝硬変になりやすくなるため生活習慣にも気を付ける必要があります。バランスの良い食事や適度な運動を心がけましょう。鉄分の多い食品や鉄分を含むサプリメントの過剰摂取にも気を付けなければいけません。

肝硬変を予防する方法があれば知りたいです。

肝硬変を予防するにはワクチンの摂取や生活習慣を改善するなど下記の方法があります。

  • B型肝炎ウイルスのワクチンの接種
  • ウイルス感染者の血液に触らない
  • 家族でも歯ブラシや髭剃りの共有をしない
  • 過度な飲酒を避ける
  • 肥満や糖尿病、高血圧や脂質異常症を予防する
  • 適度な運動をする

このように肝硬変の原因となるB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染を予防すること、生活習慣を見直し肝機能の維持を心がけましょう。
B型肝炎ウイルスは感染力が高いため、少しの血液でも感染してしまうリスクがあります。そのため歯ブラシなども気を付けなければいけません。
肝硬変はアルコールだけでなく脂肪分の多い食事や運動不足でも生じるため、生活習慣を改善するだけで予防できる可能性があります。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

肝硬変は一度なってしまうと完全に戻りませんが、合併症やC型肝炎ウイルスへの治療法が確立され予後が良くなってきています。ウイルスの感染以外にもアルコールの過剰摂取や食生活が大きく影響しているため、生活習慣の改善で予防・症状の維持が可能です。
初期症状があまりなく気が付きにくいため、悪化しないよう定期検査を行いましょう。

編集部まとめ

バイタル測定
肝硬変の症状や治療法について紹介しました。C型肝炎ウイルスによる肝硬変が最も多いですが、ウイルスに対する治療薬が開発されほとんど治療できるようになりました。

しかし、命に係わる合併症も多いため生活習慣の改善や早期治療が重要になります。アルコールの過剰摂取以外にも不摂生な食生活や運動不足も肝硬変の原因になります。

肝硬変は初期症状が現れにくく、沈黙の臓器ともいわれる部分であるため定期検査や小さな違和感に気がつくことが重要です。

倦怠感など体調不良が現れたときには、すでに肝硬変が進んでいる場合があるので病院を受診し適切な治療を受けましょう。

治療や生活習慣の改善で肝機能の維持ができるため、早期発見と早期治療を心がけましょう。

この記事の監修医師