アートメイクをしている人は「MRI検査ができない人」?医師が徹底解説!
MRI検査ができない人の特徴とは?Medical DOC監修医がMRI検査で発見できる病気・検査結果の見方などを解説します。
監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
MRI検査とは?
MRIは、Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像法)という検査です。
MRIは、放射線を使用しない検査のため、被曝の心配がないという利点があります。
また、臓器の形状や、特にCT検査に比べて軟部組織を詳しく調べることに長けています。そのため、特に脳や脊髄、関節、臓器の病変を発見するために用いられます。
MRI検査で体の何がわかる?
MRI検査では、脳梗塞、脳腫瘍、椎間板ヘルニア、関節の損傷、内臓疾患など、とても詳しく体内の状態を確認することができます。特に、軟部組織や神経系の異常を高精度に捉えることができ、治療方針の決定に大きな役割を果たします。
MRI検査の費用は?
MRI検査の費用は、検査を受ける部位や病院によって異なりますが、日本では保険が適用される場合、3割負担でおおよそ5,000円から2万円程度です。自由診療の場合は10万円を超えることもあります。
検査を受ける前に、費用については確認をしておきましょう。
MRI検査前日や当日の注意点
MRI検査では強力な磁場を使用するため、金属製の物品は検査室に持ち込むことができません。前日までに医師に、体内に金属製のインプラント(ペースメーカーなど)があるかどうか確認する必要があります。当日はゆったりした服装を選び、検査前にアクセサリーや時計などの金属類を外すようにしましょう。
MRI検査の結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見
ここまではMRI検査について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
MRI検査の結果の見方・分類と主な所見
MRI検査の結果は通常、放射線科医によって詳しく読影されます。もしも異常があった場合に所見としてレポートに記載されます。一般的には以下のように分類されます。
- 異常なし: MRI画像上、明らかな異常所見がない場合。
- 軽度の異常: 経過観察が必要な軽度の変化や異常が見られるが、現時点で大きなリスクはないと判断される場合。
- 重大な異常: 腫瘍や出血、梗塞、炎症など明らかに治療が必要な異常が確認された場合。この場合は専門医へ紹介となり、適切な治療計画
が立てられます。
MRI検査の結果で精密検査が必要な基準と内容
MRI検査は、健康診断の一環として行われます。その結果、異常が確認される場合に、精密検査が必要となる基準としては、以下のようなものが挙げられます。
- 腫瘍が疑われる場合: 腫瘍の大きさや位置、良性か悪性かの判断がつかない場合、より詳しい画像診断や組織検査(生検)が必要です。
- 血管異常が見つかった場合: 動脈瘤や血管の閉塞が疑われる場合は、MRA(磁気共鳴血管造影)や造影剤を使ったCT検査が推奨されます。
- 神経や脊髄の異常がある場合: 脊髄の圧迫や神経損傷が疑われる場合、追加の神経学的検査や、場合によっては手術の検討が必要です。
MRIで再検査が必要となった場合、その検査内容は、疑われる疾患に応じて異なります。腫瘍の場合はCTやPET検査、神経系の異常が疑われる場合は神経伝導検査や追加のMRIが行われます。あるいは、ガドリニウムという造影剤を用いたMRIを行うこともあります。
健康診断のMRIは自費診療となりますので、保険適応はないことが一般的です。一方、精密検査を受ける場合には保険診療となりますので、それぞれの方の負担割合に応じた金額を支払うこととなります。
精密検査の費用は検査内容によりますが、保険適用であれば数千円から数万円程度が一般的です。
通常、再検査は診断を受けた病院や専門クリニックで行われます。場合によっては、大学病院や専門医療機関への紹介状が発行されることがあります。
重大な異常が見つかった場合、早急な再検査をお勧めします。症状の進行具合や医師の判断により、緊急性が決定されますので、健康診断などでMRIの結果が再検査・精密検査と判定された場合には、きちんと検査を受けるようにしましょう。
再検査の結果に応じて、以下の治療が検討されます。
- 外科手術: 腫瘍の摘出や血管の修復手術が必要な場合。
- 薬物療法: 炎症や梗塞が原因の場合、ステロイドや抗血栓薬などが処方されることがあります。
- 放射線療法や化学療法: 悪性腫瘍の場合、放射線や抗がん剤治療が選択されることがあります。
再検査や精密検査は、早期に病気を発見し、適切な治療を受けるために重要です。結果を放置せず、医師の指示に従って速やかに対応しましょう。
MRI検査ができない人の特徴
以下のような方は、MRI検査ができない場合があります。
体内にペースメーカーなどの電子機器がある
埋め込み型心臓ペースメーカーやペースメーカーなどを装着している方は、MRI検査が受けられないことがあります。
MR装置は強力な磁場を発生するので、機械の故障や、体内で移動、発熱することで検査を受ける方のやけどの恐れがあります。また、MR装置自体に金属が引き寄せられ、装置が破損してしまう可能性もあります。
一方で、近年ではMRI適合性基準に適合し、MRI撮影の際の条件をきちんと守ることでMRI撮像が可能となる機器も発売されています。しかし、条件を守るためには準備や情報が必要となるので、一般的には健康診断のレベルでは体内に電子機器がある方は禁忌となっている場合が多いと考えられます。
また、刺青やアイシャドウといった磁性体も、やけどの原因となります。そのため、基本的には刺青を入れている方はMRI検査を受けることができません。アイシャドウなど化粧は、事前に落とすことが勧められます。
妊娠の可能性がある、あるいは妊娠している
妊娠の可能性がある、あるいは妊娠している女性は、MRI検査を受けられないことがあります。
MRIは放射線被爆を伴わない検査です。しかし、妊娠初期(妊娠14週未満)についてはまだ安全性がはっきりと確立していません。そのため、妊娠初期の妊婦さんの場合には、MRI検査は避けた方が良いと言われています。
ただし、何らかの症状があり、MRI検査を受けることの利益が安全性への懸念を上回る場合には、妊娠していても検査を行うことがあります。医師と相談の上、検査をするかどうかを決定します。
また、妊娠中にはガドリニウム造影剤を用いた検査を行うことは禁忌とされています。
閉所恐怖症
MRI検査は、撮影する部位や造影剤を使うかどうかによっても異なりますが、数十分ほどの時間を要します。また、狭い筒状のトンネルのような機器に入って行います。
そのため、閉所恐怖症の人は強い不安感を抱き、検査を受けることが難しい場合があります。この場合、鎮静剤を使用したり、オープン型MRIを検討したりすることが推奨されることがあります。
閉所恐怖症がある方は、MRI検査を受ける前に医療機関にその旨を伝えておくことが大切です。
「MRI検査」で発見できる病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「MRI検査」に関する病気を紹介します。
どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
脳血管障害
脳血管障害は、脳の血流に異常が発生し、脳組織が損傷を受ける病気の総称です。
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などが代表的な病気であり、高血圧や動脈硬化が主な原因とされています。
治療法としては、脳梗塞の場合は血栓を溶かすt-PA療法や、血栓を取り除く血栓除去術が行われます。脳出血やくも膜下出血の場合は、出血箇所を修復する手術が必要です。
MRIは、脳の状態を精密に捉えることができ、特に超初期の脳梗塞を診断することができます。そのため、早期診断や治療方針の決定に大きく役立ちます。
症状としては突然の麻痺や言語障害が現れるため、これらが出現した場合はすぐに脳神経外科や脳神経内科を受診する必要があります。
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、椎間板が脊椎の間から飛び出し、神経を圧迫する状態です。長時間の座位や加齢、外傷が原因で発症することが多く、腰痛や下肢のしびれが主な症状です。
治療は保存療法としてリハビリや鎮痛薬が行われ、重度の場合は手術で椎間板を取り除くこともあります。MRIは神経圧迫の部位や程度を正確に捉えることができます。また、脊髄の変性といった状態の変化についても調べることが可能です。そのため、診断や治療計画に有効です。腰や脚に強い痛み、あるいはしびれ、動かしづらさといった症状がある場合、整形外科での診察が必要です。
子宮筋腫
子宮筋腫は、子宮に発生する良性の腫瘍で、エストロゲンが影響して大きくなることが多いです。多くの場合無症状ですが、月経過多や貧血、下腹部痛を引き起こすこともあります。治療は、経過観察やホルモン療法、手術などがあり、筋腫の大きさや症状によって選択されます。MRIは筋腫の位置や大きさを正確に評価し、治療方針の決定に役立ちます。症状がひどくなったり、月経過多が続いたりする場合は、婦人科を受診しましょう。
子宮頸がん
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が主な原因で、子宮の入り口にできるがんです。
初期には無症状ですが、進行すると不正出血や性交時の痛みが現れます。治療は、初期であれば手術や放射線治療が有効で、進行がんの場合は化学療法が併用されます。
MRIは、がんの広がりや進行の度合いを詳細に評価するために用いられ、治療計画を立てる上で役立ちます。
不正出血が続く場合や、定期的な検診で異常が見つかった場合は、婦人科を受診してください。
前立腺がん
前立腺がんは、高齢男性に多く見られるがんで、男性ホルモンがその成長を促進することが知られています。初期には症状が出にくいですが、進行すると排尿障害や腰痛が現れます。治療は、ホルモン療法や放射線治療、手術が選択され、がんの進行具合によって異なります。
MRIは、がんの局在(きょくざい;場所)や転移を評価するために用いられ、治療戦略を立てるために不可欠です。排尿困難や腰痛が続く場合は、泌尿器科を受診しましょう。
「MRI検査ができない人」についてよくある質問
ここまでMRI検査ができない人について紹介しました。ここでは「MRI検査ができない人」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
MRI検査の代わりになるような検査はありますか?
木村 香菜 医師
MRI検査が受けられない場合には、CT検査や超音波検査が代替として用いられることがあります。ただし、MRIで得られる情報に比べると精度が劣る場合があります。
タトゥーやアートメイクをしている方はMRI検査を受けることはできますか?
木村 香菜 医師
金属成分を含むインクの場合、過熱のリスクがあるため、事前に医師に相談が必要です。
医療機関によっては、MRI検査が受けられないことがあります。
MRI検査は何年おきに受診すればいいのでしょうか?
木村 香菜 医師
脳動脈瘤などの疾患がある場合には、医師の指示に基づいて定期的にMRI検査を受けることが必要です。一方で、特に自覚症状がない場合には、現時点では定期的なMRI検査を受けることが推奨されている病気はありません。
編集部まとめ
MRI検査は放射線を使用せず、安全に臓器や軟部組織の詳細な画像を得る方法です。特に脳や脊髄、関節、内臓の病変を発見するために有効です。金属製インプラントの有無など、事前に確認すべき点もありますが、早期の病気発見や治療計画の立案に役立ちます。
ぜひ、今回の記事を参考にして、MRIについての知識を深めていただければ幸いです。
「MRI検査」の異常で考えられる病気
「MRI検査」から医師が考えられる病気は34個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
頭頸部外科・耳鼻科系の病気
- 内耳水腫
- 頭頸部の腫瘍(咽頭・喉頭・耳下腺など)
MRIは、これら多くの疾患の発見と正確な診断に有用です。
参考文献