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「膵臓がん」になると現れる症状や原因はご存知ですか?ステージについても解説!

 更新日:2023/03/27
「膵臓がん」になると現れる症状や原因はご存知ですか?ステージについても解説!

膵臓がんはがんの中でも初期症状が少なく、難治性であるといわれているがんのひとつです。

そのため早期発見や、がんになりやすく生活習慣の改善が求められるともいえます。

そこで今回は膵臓がんの症状や原因・膵臓がんになりやすい人・ステージや治療法について詳しくご説明しましょう。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

膵臓がん

問診票と男性 男の診察・医療

 

膵臓がんはどのような病気でしょうか?

膵臓がんはどのような病気でしょうか?

膵臓とは胃の後ろ側にある細長い臓器で、十二指腸に囲まれています。膵臓には食物の消化を助ける膵液を作って分泌することと、血糖値の調節をするホルモンを作って分泌をするという2つの役割があります。
膵臓には消化酵素(アミラーゼ・トリプシン・リパーゼ)を分泌する外分泌腺とホルモン(インスリンなど)を分泌する内分泌腺があり、それらの分泌液が通る膵管という細長い管が膵臓の全体に網目状に存在しているのが特徴です。膵臓がんはその名のとおり膵臓にできるがんのことで、大半は膵管の細胞から発生します。

膵臓がんの症状を教えてください。

膵臓がんは進行するにつれて腹痛・食欲不振・お腹が張っているような感覚・黄疸・腰や背中の痛みが発生し、さらには急な糖尿病の発症や悪化が見られることもあります。
特に上腹部痛は最も多くみられる症状で、食事をするかどうかにかかわらず夜中であっても強い痛みが続くことがあります。

発症する原因を教えてください

はっきりとした発症メカニズムは、現段階では解明されていません。ただし、特定の遺伝子変異が膵臓がんを発症することに関わっていることがわかっています。遺伝が一つの要因であるといえるでしょう。
胆石症・糖尿病・慢性膵炎にかかっている場合、また喫煙・飲酒・肥満などが膵臓がんの発生リスクを高めることが研究においてわかっています。

どのような人が膵臓がんになりやすいのでしょうか?

膵臓がんは50歳から70歳、特に60歳以降に発生しやすいといえるがんです。男女比ではわずかに男性が多く、約40人に1人が生涯で膵臓がんにかかるといわれています。
特に家族性膵臓がんといって自身の家系に膵臓がんになった人がいる場合、膵臓がんの発症リスクは4.5~32倍とかなり高い数字が報告されています。また遺伝性の膵炎・糖尿病・慢性膵炎を患っている患者さんも膵臓がんの発生リスクが高いです。

受診を検討するべき初期症状はありますか?

膵臓は腹部の深いところにあるため、がんが発生してもきわめて初期症状が出にくいがんで、受診を検討するべき症状はほぼ感じられません。症状が出たときにはすでにステージがかなり進んでいることも多々あります。
そのため、膵臓がんであると診断された段階で手術治療ができる患者さんは全体の2割から3割程度です。自覚症状がないため健康診断などの血液検査や、自らがん検診を受けることにより膵臓がんが発見されることがあります。

膵臓がんのステージと治療

カルテにメモする医師

どのような検査を行うのでしょうか?

腹痛やお腹が張っているなどの症状があったときや血液検査(血中膵酵素・腫瘍マーカー)・超音波検査で異常が見られ、膵臓がんが疑われる場合、造影CT検査・MRI検査・超音波内視鏡検査を行います。
それらの検査でも判断できない場合、口から内視鏡を入れ、膵管や胆管をX線撮影する内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査や膵管内の細胞を採取する膵液細胞診検査を行い、細胞診や組織診をして膵臓がんかどうかを総合的に判断します。

膵臓がんのステージについて教えてください。

がんの進行の進度をステージという言葉で分類し、膵臓がんにおいては早期から進行するにつれて0期〜Ⅳ期までに分かれています。分類方法はがんの大きさ・浸潤と呼ばれる周囲への広がり・リンパ節や他の臓器への転移があるかどうかが判断の基準です。
日本膵臓学会が作成した「膵癌取扱い規約2016年7月第7版」においてステージⅠはAとBに分かれます。大きさが2㎝以内で膵臓内に留まっている場合がステージⅠA、大きさが2㎝を超えているが膵臓内に留まっている場合がステージⅠBという診断です。ステージⅡもAとBに分かれています。
がんは膵臓外に進展しているけれど近くの太い動脈である腹腔動脈や上腸間膜動脈に及ばない場合がステージⅡA、以上のどれかの条件を満たしなおかつリンパ節への転移が4個以内認められる場合がステージⅡBです。がんが膵臓の外に広がって腹腔動脈もしくは上腸間膜動脈へ及んでいる場合をステージⅢとし、がんが膵臓だけではなく離れた多臓器への転移がある場合をステージⅣと定めています。

ステージごとに治療方法は異なるのでしょうか?

治療法はがんの進行の程度・身体の状態・年齢・本人の希望を含めて総合的に検討されます。膵臓がんの場合、治療の中心は手術での切除になり、治療方針は切除ができるかどうかが判断基準です。
手術ができる場合は手術のみ、もしくは手術と抗がん剤治療を含めた治療を行います。がんが別の臓器に転移していたり、膵臓周辺の大きな血管を巻き込んでいたりなどして手術が難しい場合は抗がん剤・化学放射線治療法を行います。膵臓がんの場合ステージⅡまでは多くの場合、切除手術が行われ、化学療法や放射線療法を組み合わせた治療が行われることが多いです。
ステージⅢ期の膵臓がんでは、その広がりやリンパ節転移の状態によって治療方針が変わります。切除不能と判断された場合は抗がん剤や化学放射線療法による治療が行われることが多いです。切除が難しい切除可能境界であると診断された場合、手術を行う前に化学療法(抗がん剤)や化学放射線療法を行い、切除が可能かどうかを再検討したうえで切除できるようになることもあります。ステージⅣ期になるとがんが重要な血管や臓器に浸潤している状態であるため、化学療法による治療が行われます。

膵臓がんの予後と予防

最後を看取られるアジア人の高齢者の手元

膵臓がんのステージごとの生存率(余命)を教えてください。

膵臓がんの患者さん全体の5年生存率は女性で8.1%、男性では8.9%と全がんの中で生存率が最も低いがんであるといわれています。ステージⅠ期の5年生存率は49.5~54.1%・ステージⅡ期では21.9%~23.8%・ステージⅢ期では6.0~7.7%・ステージⅣ期では1.2~1.6%と、ステージが上がるごとに生存率が格段に下がります。
膵臓がんで手術を受けた場合、術後5年間は経過観察と定期検査が必要です。術後2年間は3~6ヶ月おき、その後は6~12ヶ月おきに受診し黄疸の有無・肝機能の変化・腫瘍マーカーや腹部エコーなどの検査が必要になります。

家族はどのようにサポートすれば良いですか?

患者さんのご家族は通院の補助・食生活の管理、インスリン注射の補助といったサポートや、再発への不安から精神的に不安定になる患者さんもいらっしゃいますので精神的な支えが必要になることもあります。
また膵臓がんの手術をすると膵液が減少するため、消化不良や下痢を起こしやすくなることがあります。管理栄養士に相談するなどして、消化の良い食事を摂取する・少量ずつ何回かに分けるなど、患者さんの状況にあった献立や調理の工夫などが必要です。手術で膵臓を切除した場合、膵臓から分泌されるインスリンが減少して糖尿病を発症したり、もとから抱えていた糖尿病が悪化したりすることもあります。膵臓を全摘出した場合、インスリンが分泌されなくなるためインスリンの自己注射が必要になることもあります。

膵臓がんを予防する方法はありますか?

膵臓がん予防には喫煙や過度の飲酒を避けること・バランスの良い食生活と適切な運動をして適正な体型を保つことが効果的であるとされています。
生活習慣の危険因子にはコーヒーの多飲や肉食傾向も含まれていますので、食生活をはじめとした生活習慣の改善が膵臓がんのリスクを防ぐ方法であるといえます。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

膵臓がんは初期症状が見られないため、発見が遅れることが多いがんです。自分の家系に膵臓がんを発症した人がいる場合や、自身が慢性膵炎・糖尿病などの持病を抱えている場合は定期的に膵臓がんの検診を受けるようにすると良いでしょう。

編集部まとめ

診察をする男性医師

膵臓がんは生存率の低いがんであるといわれていますが、早期発見できれば生存率も上がります。不安がある場合はまず病院を受診しましょう。

膵臓がんは高齢になるにつれて発生リスクが上がるがんですが、50歳未満でも発症する患者さんは少なくありません。

がん検診を定期的に受け、喫煙や過度な飲酒を避け肥満にならない軽い運動をするなど、規則正しい生活習慣を普段から心がけることが早期発見やがん予防につながります。

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