目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 【肝臓がん】症状5選と放置厳禁な危険因子を解説

【肝臓がん】症状5選と放置厳禁な危険因子を解説

 公開日:2023/03/14

⇒YouTubeで動画版を見る

肝臓は沈黙の臓器といわれており、肝臓がんになったとしても初期段階では症状が出ないため、自分でも気づかず早期発見が遅れる傾向にあります。そこで今回は肝臓がんの初期症状について日本在宅医療連合学会専門医・やよい在宅クリニックの水口先生に徹底解説していただきました。

水口 義昭医師

監修医師
水口 義昭(やよい在宅クリニック)

プロフィールをもっと見る

日本医科大学卒業。日本医科大学消化器外科に入局。さつきホームクリニックにて在宅診療のいろはを学ぶとともに、星風会病院にて診療部長として重症心身障害児、障害者の診療を担当。2019年に「やよい在宅クリニック」を開院。日本在宅医療連合学会専門医・指導医、日本外科学会専門医 、日本消化器外科学会専門医 、日本肝臓学会専門医、日本医科大学消化器外科非常勤講師(連携教授)。

原発性肝臓がんと転移性肝臓がんについて

原発性肝臓がんと転移性肝臓がんについて

編集部編集部

はじめに、肝臓がんについて教えてください。

水口 義昭医師水口先生

肝臓がんは肝臓にできたがんを意味します。肝臓がんは、肝臓の細胞から生まれた「原発性肝臓がん」と、ほかの臓器から転移し増殖をした「転移性肝臓がん」の2つに分けられます

編集部編集部

それぞれの肝臓がんについて詳しく教えてください。まずは原発性肝臓がんからお願いします。

水口 義昭医師水口先生

B型肝炎やC型肝炎などの肝炎ウイルスが原因の病気を長年患っていると、徐々に肝炎や肝硬変となり、最終的に原発性肝臓がんができてしまうといわれています。しかし、肝炎ウイルスは高い確率で治療ができるようになってきました。肝炎ウイルスが退治されるので、原発性肝臓がんは減少傾向といわれています。

編集部編集部

転移性肝臓がんについても教えてください。

水口 義昭医師水口先生

転移性肝臓がんは、先述の通りほかの臓器から転移するので、高齢化社会になり増えているといわれております。転移性の肝臓がんは初期では症状が表れません。肝臓は基本的にがんが小さいと痛みが出ず、沈黙の臓器といわれています。そのため、どうしても初期では症状が出ないため自分でも気づかず、早期発見が遅れる傾向にあります。

編集部編集部

転移性の肝臓がんは、どのように見つかるのでしょうか?

水口 義昭医師水口先生

転移性の肝臓がんは、大腸がんや胃がんのフォローアップ中に発症しますので、患者さんは通常定期に外来通院していたり、定期的にCTで調べていたりしますので、そういった中で見つかるケースが多いと思います。

編集部編集部

改めて肝臓の場所と役割を教えてください。

水口 義昭医師水口先生

肝臓は、人間の臓器の中で最も大きな臓器で、場所は肋骨の裏側に位置します。役割は多岐にわたっており、主に栄養やタンパク質の合成を行っています。消化管から食べ物を吸収し、吸収した栄養は様々な形がありますが、利用しやすい形に変えて肝臓に蓄積されます。肝臓に蓄積しておいて、必要に応じて少しずつ溜めた栄養を分解して、体に運ぶ役割を担っています。多量のアルコールや栄養を摂り過ぎてしまうと、「脂肪肝」という状態で肝臓の中に脂肪が多量に蓄積してしまう状況も発生しますので摂り過ぎには注意してください。

編集部編集部

肝臓は多くの役割を担っているのですね。解毒作用についてはどうですか?

水口 義昭医師水口先生

はい。肝臓は有害な物質を解毒しています。代表的なものはアンモニアですね。アンモニアが蓄積してしまうと頭を麻痺させる脳症を発症してしまいます。肝臓がアンモニアを尿や胆汁に溶かし出して、体の外に運び出す役割をしています。

肝臓がんの症状5選

肝臓がんの症状5選

編集部編集部

肝臓がんの症状について教えてください。

水口 義昭医師水口先生

残念ながら肝臓は沈黙の臓器といわれており、症状が出にくい臓器になります。
肝臓がんの症状としては、
しこり
しこりによる圧迫感
腹水や足のむくみ
黄疸
肝性脳症
が挙げられます。

編集部編集部

それぞれの特徴について教えてください。まずはしこりについて教えてください。

水口 義昭医師水口先生

腹部のしこりが小さいうちは、肝臓の中に埋もれてしまっているため、しこりとして自覚できませんが、肝臓がんが大きくなることがあります。しこりが大きくなると、周りの内臓を圧迫してしまったり、腹膜に触ってしまったり圧迫感として感じる方もいます。

編集部編集部

腹水やむくみについて教えてください。

水口 義昭医師水口先生

腹水やむくみの症状がある人は、既に合併している方が多いのですが、肝臓がんが原因というより肝臓がんの原因になっている、肝機能障害や肝硬変によって生じます。タンパク質がうまく合成できない人間の体というのは不思議で、空いているスペースにお水が漏れると、漏れた水がむくみになったり、お腹の中の広いスペースにお水が溜まり腹水になったりします。

編集部編集部

黄疸について教えてください。

水口 義昭医師水口先生

黄疸は、肝臓の機能が障害され、胆汁がうまく肝臓の細胞から外に出なくなってしまい、胆管の枝葉の一部分が、がんによって圧迫され塞がってしまい、うまく流れずに溜まることで全身に逆流し黄疸となります。黄疸は、どのがんにも出るもので、膵臓がんや肝臓がん、胆嚢がんなど肝臓の周りのがんは黄疸が出ます。肝臓の周りでなくても、肝臓に転移してしまったがんは黄疸の症状が表れます。胆汁は肝臓で作っていて、消化液のビリルビンや胆汁が体に排出できなくなると黄疸が出てきます。

編集部編集部

ビリルビンとは何ですか?

水口 義昭医師水口先生

胆汁という液体の中に、いろんなものが溶かし込まれ、その中の一つがビリルビンです。胆管は肝臓で作られた胆汁を分泌して、最終的に十二指腸まで運ぶ役割をしています。胆汁は1日に1~2リットル合成されており、 その中にビリルビン(黄色い色素)が入っています。ビリルビンは強力な洗剤のようなイメージで、タンパク質などを溶かし込んで吸収を行っています。ビリルビンが水と混ざらず脂肪を囲むことによって、水に溶かし込めるようになります。

編集部編集部

肝性脳症について教えてください。

水口 義昭医師水口先生

先程もお話しましたが、肝臓は解毒を行っており、アンモニアが溜まってきてしまうと昏睡や初期には興奮状態を起こしてしまうことがあります。これを肝性脳症といいます。

肝臓がんの危険因子

肝臓がんの危険因子

編集部編集部

肝臓がんの危険因子について教えてください。

水口 義昭医師水口先生

肝臓がんの危険因子は、だんだんと解明されてきています。
肝硬変
高齢の男性
アルコール摂取
生活習慣病
肥満や糖尿病
が挙げられます。

編集部編集部

肝硬変について詳しく教えてください。

水口 義昭医師水口先生

肝硬変の原因になっている、B型肝炎やC型肝炎はウイルスによって発症します。さらに B型肝炎やC型肝炎が20年程続くと、肝硬変から肝臓がんになるといわれています。B型肝炎を持っている方は、持っていない方に比べてがん化する確率は約220倍といわれています。一方で、C型肝炎はかなり強力ながんの因子で、C型肝炎を患っている方は、100人のうち7~8人の方はがん化するといわれています。今はこのようなウイルスに対し、90%以上の方が薬で治療ができるようになってきています。なので、C型肝炎を持っている方は極力治療をしていただきたいです。

編集部編集部

高齢の男性が肝臓がんになりやすいのは何故ですか?

水口 義昭医師水口先生

疫学的には高齢の男性がなぜか肝臓がんになりやすいといわれています。理由は研究中ですが、男性ホルモンの関係で肝炎ウイルスにかかったときに、男性と女性で少し経過が違うため、高齢の男性には肝臓がんが多いのではないかといわれています。

編集部編集部

アルコール摂取や生活習慣病、糖尿病による肝臓がんのリスクについて教えてください。

水口 義昭医師水口先生

アルコールを多量に飲むとアルコール性の脂肪肝炎になり、長年経過するとがんを発症することが分かっています。生活習慣病については特にアルコールを飲んでいない方でも、糖尿病があったり、血圧が高いなど肥満の指摘を受けた方は脂肪肝が進んでしまい、NASH やNAFLDを患っている方が肝臓がんになりやすいことも分かってきました。そのため、 生活習慣病をお持ちの方は肝臓がんになりやすいといわれています。

この記事の監修医師