「経験人数」が多いほど「がんリスク」が上昇? オーストリアの研究

性行為には性感染症などのリスクがあります。将来的に不妊の原因になることも珍しくなく、性感染症予防対策の啓発は様々な場面で行われているのが現状です。

一方で、性行為はHPVやB型肝炎ウイルスなど、「がん」を引き起こすウイルスの感染経路でもあります。しかしながら、性行為とがんの発症リスクとの関係については大々的な啓発が行われる機会はあまりないと言っていいでしょう。

そんな中、オーストリアの研究者が「経験人数」と「がんリスク」の関係を分析した研究結果を発表しました。今回は、その結果について詳しく解説します。

成田 亜希子 医師

監修医師
成田 亜希子 医師

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弘前大学医学部卒業後は、内科医として勤務。また、国立医療科学院でも研修を積み生活習慣病や感染症予防などの公衆衛生分野の知見を習得。日本内科学会、日本感染症学会、日本結核病学会、日本公衆衛生学会の各会員。

経験人数が多いほど病気になりやすい?

オーストリアのグラボヴァツ氏(ウィーン医科大学)らは、性的パートナーの数が健康に与える影響について、英国縦断的加齢研究に参加した50歳以上の男性2537名、女性3185名を対象に調査を行いました。

対象者の平均年齢は64歳。約75%が既婚者であり、これまでの性的パートナーの数は男女それぞれ下表のような内訳となっています。

性的パートナー数 男性 女性
0~1名 28.5% 41%
2~4名 29% 35.5%
5~9名 20% 16%
10名以上 22% 8%

調査の結果、経験人数が健康にどのような影響を及ぼす可能性が示唆されたのか詳しく見てみましょう。

経験人数が多いほどがんリスクは上昇する!

調査結果を分析した結果、生涯の性的パートナーが0~1名の群に比べ、10名以上と回答した群はがんの発症リスクが男性で69%、女性で91%と有意に上昇することが分かりました。

成田 亜希子 医師成田先生

今回の研究結果のみでは、性的パートナーの数とがんのリスクに関しての明確な因果関係は明らかにされませんでした。しかし、統計学的に見て生涯の性的パートナー数が多いほどがんのリスクが高いのは明らか。研究を行ったグラボヴァツ氏らは、がんのリスクが上昇した要因には性感染症が関与しているがんが増えていることが挙げられるとしています。つまり、冒頭でも申しましたが、経験人数が多くなるほどHPV(ヒトパピローマウイルス)による子宮頸がん、HBV(B型肝炎ウイルス)による肝臓がんなどを発症するリスクが高くなるということが研究結果からも示唆されたのです。

女性は慢性疾患のリスクも上昇!

さらに、今回の研究で、生涯の性的パートナーが10名以上の女性は活動が限定される慢性疾患にかかるリスクが高いことも分かりました。

成田 亜希子 医師成田先生

残念ながら、今回の研究ではその因果関係も明確にはされていません。しかし、他の評価項目について有意差がなかったことを考えれば、性に奔放な女性は食生活や運動習慣、アルコール摂取歴、喫煙習慣などいわゆる「生活習慣病」を引き起こす乱れがちな生活を送っている方が多いからではないかと推測します。

性行為による健康被害のリスクを下げるには?

今回は、研究結果から明らかになった性行為とがんをはじめとした健康被害のリスクについて分析しました。

成田 亜希子 医師成田先生

性行為はカップルの愛情を育み、新たな命を誕生させる尊い行為です。一方で、性行為は性感染症だけでなくがんや慢性疾患のリスクを上げる可能性が示唆されました。

これらのリスクを軽減するためには、「セーフティーセックス」を徹底することが大切です。妊娠を希望する場合以外はコンドームを使用し、不特定多数との性行為は控えるようにしましょう。コンドームは避妊のためだけでなく、私たちの健康を守ってくれる役割も担います。ピルを服用している方も将来の健康のため、セーフティーセックスを心がけましょう。