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「エムポックス(サル痘)」で日本初の死亡例、免疫不全の30代男性 厚労省発表

 公開日:2023/12/25
エムポックス(サル痘)で国内初の死者

厚生労働省は、天然痘に似た症状をもつ感染症「エムポックス(サル痘)」について、国内で初めて死亡者が確認されたことを明らかにしました。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

厚生労働省が発表した内容とは?

今回、厚生労働省が発表したエムポックスの感染で死亡したケースについて教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

2023年12月13日、厚生労働省はエムポックスに感染した男性が死亡したと発表しました。厚生労働省によると、亡くなったのは埼玉県に住む30代の男性で、2023年9月にエムポックスの感染が確認されており、2023年11月に死亡が確認されました。男性に海外渡航歴はなく、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染し、免疫不全の状態でした。日本国内でエムポックスに感染した患者の死亡が確認されたのは初めてです。エムポックスをめぐっては、2022年5月以降、欧米などで感染が拡大し、2022年7月に日本で初めて感染者が確認されました。それ以降、2023年12月3日までに227人の感染が確認されています。以前はサル痘と呼ばれていましたが、WHO(世界保健機関)の推奨を受け、厚生労働省が2023年5月に名称をエムポックスに変更しています。

エムポックスは感染した人や動物の体液・血液に接触したり、近い距離で長時間飛沫を浴びたりすることで感染する可能性があり、厚生労働省は「手の消毒など基本的な感染対策をおこなうとともに、発熱や発疹など体調に異常がある場合は身近な医療機関に相談してほしい」としています。

エムポックスとは?

今回、日本で初めての死者が出たエムポックスについて教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

エムポックスは、サル痘ウイルス(エムポックスウイルス)の感染による急性発疹性疾患で、主にアフリカ中央部から西部にかけて発生しています。主な症状は発熱と発疹で、多くの場合は2~4週間ほどで自然に回復しますが、子どもなどで重症化や死亡した症例の報告もあります。サル痘ウイルスの感染経路は、ウイルスに感染した動物に噛まれたり、血液や発疹などと接触したりすることによる感染が確認されています。ヒトからヒトへの感染は稀ですが、濃厚接触者の感染やリネン類を介した医療従事者の感染の報告があることから、感染者の飛沫や体液、発疹などを介した感染経路が考えられています。エムポックスの潜伏期間は6~13日とされており、潜伏期間の後、発熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛などの症状が0~5日続き、発熱から1~3日後に発疹が出現します。ただし、発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの前駆症状が必ずしも認められない事例が報告されているので、注意が必要です。

今回の発表内容への受け止めは?

今回、厚生労働省が発表したエムポックスの感染者が死亡したケースについて、受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

まず、今回お亡くなりなられた方のご冥福をお祈り申し上げます。今回、死亡につながった要因として、免疫力が低下していたことが挙げられます。エムポックス自体の致死率は低いですが、免疫力の低下した人では重症化し、死亡するリスクが高まります。免疫不全症や後天性免疫不全症候群(AIDS)、妊娠中の人などは要注意です。発熱や発疹などがあってエムポックスが疑われる場合は、速やかに医療機関を受診し、診断・治療を受けることが重要です。

まとめ

厚生労働省は2023年12月13日、エムポックスの感染者で国内で初めて死亡が確認されたことを明らかにしました。エムポックス感染者の多くは自然軽快しますが、小児や妊婦、免疫不全者で重症となる場合もあるため、今回の死亡例も注目を集めそうです。

この記事の監修医師