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「サル痘(とう)」の症状・致死率・感染経路はご存知ですか?医師が監修!

公開日:2022/08/24
「サル痘(とう)」の症状・致死率・感染経路はご存知ですか?医師が監修!

世界各地での流行が確認されているサル痘は、ウイルス感染によって起きる発疹性疾患です。

日本ではあまり馴染みのない病気であるため、サル痘に不安や恐怖を感じている人も少なくないかもしれません。

しかし、サル痘は致死率が低く治る病気です。

サル痘になるとどうなるのか、感染経路・感染原因症状などどのような病気なのか、この機会に正しく理解を深めてみましょう。

多くの人が気になるサル痘の予防方法についてもお伝えいたします。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(国家公務員共済組合連合会大手前病院)

プロフィールをもっと見る
2007年大阪市立大学医学部医学科卒業、2009年大阪急性期総合医療センター外科後期臨床研修医、2010年大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、2012年国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、2013年大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、2014年国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医員、2021年国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長。 著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など多数。 日本外科学会専門医 日本病院総合診療医学会認定医など。

サル痘の症状と感染経路・感染原因

ベッドルームにいる男性(体調不良)

サル痘とはどのような病気ですか?

  • サル痘は、オルソポックスウイルス属のサル痘ウイルス(Monkeypox virus)の感染によって起きる急性発疹性疾患です。
  • 1970年に現在のコンゴ民主共和国であるザイールにて初めて感染が確認されました。主に中央アフリカから西アフリカにかけて流行しており、日本では感染症法上の4類感染症に指定されています。
  • 2022年には欧米を中心に流行が広がり、日本でもサル痘患者が確認されています。女性の感染も報告されていますが、男性の割合が多いこともサル痘の特徴です。

サル痘の主な症状について教えてください。

  • サル痘の主な症状は、発熱頭痛不快感発疹です。5~21日の潜伏期間を経て、発熱・頭痛・筋肉痛・リンパ節の腫れなどの症状があらわれます。
  • その後、顔や手足を中心に発疹が出現します。発疹は徐々に水泡・膿疱・痂皮と変化し、2~4週間で自然に治ることがほとんどです。しかし、患者の健康状態・年齢・合併症などによって重症化するリスクもあります。
  • 合併症として確認されているのは、皮膚の二次感染・気管支肺炎・敗血症・脳炎・角膜炎などです。サル痘ははしか・水疱瘡と症状が似ている病気ですが、手のひらや足の裏にも発疹が出現する点などが異なります。
  • 一方で、2022年に発生した世界的な流行では、発熱・リンパ節の腫れなどの発疹発生前の症状が見られない場合があったり病変が会陰部・肛門周囲・口腔などの局所に集中したりなど、これまでのサル痘の症状とは異なる症状が確認されています。

突然、発疹が出て症状に気づく場合もあるのですね…。

  • サル痘は通常であれば発疹症状の前に、発熱・頭痛・リンパ節の腫れなどの症状がみられる病気です。
  • しかし前述でお伝えしたように、発熱・頭痛・リンパ節の腫れなどの前駆症状がないまま発疹症状があらわれるケースが増加傾向です。
  • そのため、突然発疹があらわれサル痘の感染・症状に気付く場合もあります。

サル痘の感染経路・感染原因が知りたいです。

  • アフリカに生息するリスなどのげっ歯類やサル・ウサギなどの野生動物に咬まれたり血液・体液などに触れることでサル痘に感染します。野生動物との接触がなくても、野生動物からペットが感染し、ペットとの接触・飛沫感染により感染する場合も少なくありません。
  • 人から人への感染は稀ですが、飛沫や体液などによる感染性的接触感染者の体液や飛沫が付着した衣類や寝具などを介した感染も確認されています。
  • 2022年に発生した世界的流行では感染者の大半が男性であり、男性間での性交渉・性的接触が感染経路の1つとして挙げられます。発疹の痂皮をエアロゾル化することで空気感染させた動物実験の報告はありますが、実際に空気感染を起こした感染例は確認されていません。

サル痘の致死率を教えてください。

  • サル痘は大半の場合は、自然に軽快し致死率が低いとされる病気です。一方で、子ども・妊婦は重症化しやすく死亡例も確認されています。
  • サル痘は、コンゴ盆地型西アフリカ型の2つに分類されています。コンゴ盆地型は強毒である一方、西アフリカ型は毒性が弱いです。
  • 致死率はこの2つの分類によっても異なり、コンゴ盆地型の致死率は約10%といわれていますが、西アフリカ型の死亡例は1%程度と報告されています。

サル痘の検査と治療方法

腕を組むポーズをする男性医師

受診を検討すべき目安を教えてください。

  • サル痘の初期症状は、風邪や単なる体調不良と勘違いしやすい症状です。初期症状の段階で、サル痘と自己判断することは難しいため、発熱・頭痛・リンパ節の腫れなど気になる症状がみられる場合は受診を検討しましょう。顔や手足を中心とした全身の発疹が出現した場合は、速やかに受診すべきです。
  • また、サル痘の流行地への渡航歴がある方は慎重に体調の変化を観察しましょう。渡航後に体調不良がみられる場合は、サル痘ではなくてもなんらかの感染症に感染した可能性が考えられます。発熱・発疹など気になる症状がある場合は、早めに医師・医療機関に相談しましょう。
  • また、医療機関を受診する際は、マスクの着用・発疹部分をガーゼで覆うなど二次感染対策を行うことも大切です。

どのような検査を行いますか?

  • サル痘の診断は、主に血液検査電子顕微鏡によるウイルス粒子の確認蛍光抗体法水疱や膿疱の組織を用いたPCR検査です。PCR検査によって遺伝子を検出し、サル痘の感染が認められるかどうかを判断していきます。
  • サル痘同様に発疹が生じる水痘・天然痘・牛痘などの感染症との鑑別も大切です。電子顕微鏡によるウイルス粒子の確認・蛍光抗体法では、抗ウイルス体の検出が可能ですが、サル痘ウイルスなのか他のウイルスなのか判別はできません。そのため、サル痘の感染かどうかを確定するためにPCR検査を行います。
  • また、PCR検査によって遺伝子を検出することで、強毒型のコンゴ盆地型と弱毒な西アフリカ型の鑑別も可能となります。

サル痘の治療方法が知りたいです。

  • サル痘は、多くの場合2~4週間程で自然に治る病気です。海外ではサル痘の特異的治療薬として認められている薬がありますが、日本では利用可能な薬事承認された治療薬はまだありません。
  • 臨床研究で治療薬を投与できる体制が進行中です。そのため、2022年時点でサル痘の治療は対症療法が中心となります。

サル痘の予防と注意点

マスクをして手を洗う日本人女性

サル痘を予防する方法を教えてください。

  • サル痘に感染しないためには、サル痘の流行地での動物との接触を避けることが大切です。サル痘の感染例が確認されている国に行く際は、手洗いを徹底するむやみに動物に触らないむやみに動物に近付かない、これらを徹底しましょう。
  • また、人から人への感染例は少ないですが、感染例がないわけではありません。感染者との接触を避けることも重要です。サル痘感染者が使用したリネン類から感染した報告例もあります。感染者が使用したリネン類や衣類は直接的な接触を避けて、洗濯・消毒・手洗いを行いましょう。
  • また、天然痘のワクチンである痘そうワクチンがサル痘予防にも有効です。痘そうワクチン接種によって、約85%発症予防効果があるとされています。サル痘ウイルス曝露後4日以内に痘そうワクチンを接種することで感染予防効果があり、曝露後4~14日の間にワクチン接種した場合は重症化予防効果があると考えられています。
  • しかし、日本では痘そうワクチン接種は行われていないため、サル痘の予防としてのワクチン接種の適用はありません。一方で、2022年以降サル痘ウイルス曝露の可能性がある人に対してのワクチン投与の臨床研究体制の整備が進められています。まずは、感染が疑われる動物・感染者との接触を控えることが最大の予防といえます。

サル痘は完治までにどのくらいかかりますか?

  • サル痘は、発症から約2~4週間で自然に治る病気です。一般的に長くても1ヶ月程で完治します。
  • しかし、重症化したり死に至るケースも確認されています。ウイルス曝露の程度・健康状態・合併症などにより重症化する可能性も0ではありません。
  • 合併症が生じた場合は、完治までに一般的な回復期間よりも症状が長引き、完治までに1ヶ月以上かかる場合も考えられます。

重症化のリスクもあるのですね…。

  • サル痘は致死率が低く、感染によって死に直結する病気ではありません。しかし、重症化のリスクは0ではなく、稀に重症化するケースもあります。特に小児妊婦の重症化リスクが高い傾向です。
  • サル痘による死亡例も確認されていますが、先進国での死亡例は報告されていません。重症化のリスクはもちろんありますが、必要以上に恐れる病気ではありません。

最後に、読者にメッセージがあればお願いします。

  • サル痘は、サル痘ウイルスの感染による急性発疹性疾患です。主にアフリカ中央部から西部にかけて発生しており、アメリカの疾病対策センターによると、2022年7月現在では、サル痘が定着していない52の国や地域で約6000人弱の感染者が確認されています。
  • WHO(世界保健機関)のヨーロッパ地域では31の国と地域で4500人以上の感染が確認されており、ヨーロッパでの感染者の増加が目立ちます。
  • サル痘の病原体は、サル痘ウイルスで、ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属に分類されています。主な症状は発熱と発疹で、多くの場合は2〜4週間ほどで自然に回復します。
  • 発症してから時間が経つと共に特徴的な皮膚症状が認められます。皮膚病変は赤い紅斑から始まり、数日から1週間ほどで盛り上がって徐々に1cm程度の水疱や膿を伴った後に、かさぶた(痂皮)で皮膚病変が覆われます。
  • 臨床経過としては、発熱、頭痛、リンパ節腫脹などを中心とした症状が5日程度持続して、発熱症状が出現してから数日後に発疹が出現します。リンパ節腫脹は顎下、頸部、鼠径部などを中心に認められます。
  • また、サル痘では皮疹は顔面や四肢、手掌や足底部にも出現することがあり、皮疹そのものは徐々に隆起して水疱、膿疱、痂皮と変化していくことが知られています。サル痘ウイルスの感染源や感染経路については、ウイルス感染した動物に噛まれる、あるいは血液や発疹などと強固に接触することによって二次感染が引き起こされると指摘されています。
  • サル痘ウイルスに特異的な治療薬は存在せず、発熱や発疹、疼痛症状に対しての対症的な治療法が中心となります。欧州においては、特異的な治療薬として「テコビリマット」が承認されていますが、我が国ではいまだ承認されておらず現時点で同薬を用いた臨床研究が実施されている段階です。

編集部まとめ

指を立てるポーズをする白衣の女性
突然の世界的流行が発生したサル痘。まだ分からないことも多く、未知の病として不安や恐怖を感じている人はきっと多いはずです。

しかし、多くの場合は自然治癒で治る病気ですし、理解を深めることで差別や偏見といった先入観を捨てて向き合える病気です。

また、国内では感染予防目的のワクチン接種は実施していませんが、感染予防のためにできることはたくさんあります。

手洗い・咳エチケットマナーなどを徹底した上で、流行地に渡航する際は動物・人との接触に注意しましょう。

先入観や理解不足から、サル痘に対する偏見・差別も懸念されています。

サル痘がどんな病気なのかしっかり理解し感染予防していくと共に、病気に対する偏見差別もなくしていきましょう。