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感染症「サル痘」国内感染者確認、症状は? 予防対策は?

公開日:2022/07/29

従来は、主にアフリカ大陸で地域的に発生していた感染症のサル痘が、2022年5月以降欧米を中心に前例のない規模で感染拡大しています。サル痘に関しては、世界保健機関も「公衆衛生上の緊急事態」を7月23日に宣言しており、最近では韓国や台湾、タイなどでサル痘感染者が確認されていたことからも、日本でもいつ感染者が発見されてもおかしくない状況であると考えられていました。

今回は、サル痘の症状や感染経路、予防対策、治療法など、サル痘についての知識を深められる内容を詳しく説明しています。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(国家公務員共済組合連合会大手前病院)

プロフィールをもっと見る
2007年大阪市立大学医学部医学科卒業、2009年大阪急性期総合医療センター外科後期臨床研修医、2010年大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、2012年国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、2013年大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、2014年国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医員、2021年国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長。 著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など多数。 日本外科学会専門医 日本病院総合診療医学会認定医など。

サル痘とは

サル痘とはとはどのような病気ですか?

    サル痘は、サル痘ウイルスの感染による急性発疹性疾患です。
    主にアフリカ中央部から西部にかけて発生しており、アメリカの疾病対策センターによると、2022年7月現在では、サル痘が定着していない52の国や地域で約6000人弱の感染者が確認されています。

    WHO(世界保健機関)のヨーロッパ地域では31の国と地域で4500人以上の感染が確認されており、ヨーロッパでの感染者の増加が目立ちます。

病原体は?

どのような病原体なのでしょうか?

    サル痘の病原体はサル痘ウイルスで、ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属に分類されています。二本鎖DNAをゲノムとする長径300nmを越える巨大ウイルスであり、強毒なコンゴ盆地型とやや弱毒な西アフリカ型があります。
    サル痘ウイルスは、アフリカのリスなどの齧歯類が自然宿主となっており、ヒト、サル、ウサギなどが媒介して感染すると、天然痘に類似した症状を呈します。

症状

どのような症状がでるのでしょうか?

    主な症状は発熱と発疹で、多くの場合は2~4週間ほどで自然に回復します。
    発症してから時間が経つと共に特徴的な皮膚症状が認められます。皮膚病変は赤い紅斑から始まり、数日から1週間ほどで盛り上がって徐々に1cm程度の水疱や膿を伴った後に、かさぶた(痂皮)で皮膚病変が覆われます。
    臨床経過としては、発熱、頭痛、リンパ節腫脹などを中心とした症状が5日程度持続して、発熱症状が出現してから数日後に発疹が出現すると言われています。
    リンパ節腫脹は顎下、頸部、鼠径部などを中心に認められます。

    また、サル痘では皮疹は顔面や四肢、手掌や足底部にも出現することがあり、皮疹そのものは徐々に隆起して水疱、膿疱、痂皮と変化していくことが知られています。ほとんどの場合には、症状は数週間前後持続して自然軽快しますが、時に小児例、免疫不全例、患者の健康状態や合併症の有無などによって重症化の割合が異なってきます。
    初期症状にくわえて、皮膚の二次感染、気管支肺炎、敗血症、脳炎、角膜炎などの様々な合併症を引き起こすことがあります。

潜伏期間はどれくらい?

    サル痘ウイルスに感染してから、およそ1~3週間ほどの潜伏期間を経た後にサル痘の症状を発症します。
    初期症状としては、発熱、疲労感、頭痛、筋肉痛、鼠径部リンパ節の腫大などが挙げられます。

致死率は?

    サル痘は、中央アフリカでは死亡率は10%程度、米国では死亡例はありませんでした。
    一般的に、サル痘による致死率はその地域の健康状態、医療環境などが影響しています。
    いわゆるエイズを始めとした免疫不全状態では、特に重症化する危険性が高く最悪の場合には死亡することもあります。稀に、子ども等で重症化や死亡した症例の報告もあります。

感染源・感染経路について

どのような感染源・感染経路が考えられますか?

    サル痘ウイルスの感染源や感染経路については、ウイルス感染した動物に噛まれる、あるいは血液や発疹などと強固に接触することによって二次感染が引き起こされると指摘されています。ヒトからヒトへの感染は稀ですが、濃厚接触者の感染、もしくはリネン類を介した医療従事者が感染したという報告があります。
    一般的に、感染患者の飛沫や体液、発疹などを介した感染経路が考えられています。

感染予防対策について

家庭、市中における感染対策について

    サル痘ウイルスはラット、リス、サルなどに感染することが広く知られており、特にアフリカ地域では動物がサル痘ウイルスに感染しているリスクが高いと考えられています。したがって、動物に噛まれない、血液に触れないなどの基本的な感染予防対策を講じることが重要です。また、アフリカから輸入された動物を家庭で飼育する場合も感染を引き起こす危険性があるために十分な留意が必要です。

ワクチンについて

    海外では、サル痘予防に対しては、天然痘ワクチンが有効であると考えられており、サル痘ウイルスに曝露した時から4日以内のワクチン接種で感染予防効果があり、曝露後2週間以内の接種で重症化予防に繋がると期待されています。日本では天然痘に対するワクチン接種を過去に受けた世代は感染予防ができており、症状が軽症化することが知られています。しかし日本では、1976年に天然痘ワクチンの定期接種が中止されています。また、天然痘ワクチンについては、日本国内において十分な量の備蓄があります。

濃厚接触者の基準について

濃厚接触者の基準について

    サル痘は、主にアフリカ大陸に生息するリスなどの動物が自然宿主とされているため、感染した動物に噛まれる、感染した動物の血液、体液、発疹部位との接触によって感染が引き起こされます。また、感染した人や動物の皮膚病変や血液に接触する、あるいは感染患者と間近で対面して長時間の飛沫に曝露される、患者が使用した寝具などに触れた場合には感染リスクが高く濃厚接触者と判断されます。感染した患者の同居家族なども濃厚接触者に該当し、咳や痰、皮膚病変の接触などによって、ヒトからヒトへも直接的に二次感染することが考えられます。

感染が疑われた場合、どう行動すればいい?

    日本では、サル痘は感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律で、「4類感染症」に指定されており、保健所などに届出する義務が課せられています。万が一、発熱、発疹など体調に異常が認められる際には、最寄りの医療機関や保健所に連絡すると同時に、手指消毒等の基本的な感染対策を徹底してください。

治療方法

治療方法について

    サル痘ウイルスに特異的な治療薬は存在せず、発熱や発疹、疼痛症状に対しての対症的な治療法が中心となります。欧州においては、特異的な治療薬として「テコビリマット」が承認されていますが、我が国ではいまだ承認されておらず現時点で同薬を用いた臨床研究が実施されている段階です。

編集部まとめ

2022年7月28日付けで厚生労働省から国内2例目のサル痘患者発生の報告がされました。
東京都によれば、患者は発疹などの症状を呈しており、検査の結果、サル痘陽性患者と確認されました。世界保健機関の調査では、サル痘に対してかつて接種が行われた天然痘ワクチンのサル痘感染予防効果が85%に達すると見解を示しています。
さらに、アメリカの製薬会社が天然痘の治療薬として開発した「テコビリマット」という飲み薬に関して、日本では現段階で臨床研究での投与が検討されており、現時点で特例的にサル痘患者に投与できる医療施設は、東京の国立国際医療研究センター、大阪のりんくう総合医療センター、愛知の藤田医科大学病院、沖縄の琉球大学病院の4か所となっています。
しかしながらサル痘の感染経路から考慮すると、新型コロナウイルスと同様にマスク着用、手洗い消毒などを徹底していれば、サル痘の感染予防にも有効的と考えられています。