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【サル痘】WHOが世界の公衆衛生に「中程度のリスク」と見解

 更新日:2023/03/27
WHO サル痘が世界の公衆衛生に「中程度のリスク」と見解

WHO(世界保健機関)は5月29日、欧州など20カ国以上で感染が確認されているサル痘について、世界全般の公衆衛生に「中程度のリスク」があるとの見解を示しました。このニュースについて上先生にお話を伺います。

上昌広 医師

監修医師
上 昌広(医師)

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東京大学医学部卒業。東京大学大学院修了。その後、虎の門病院や国立がん研究センターにて臨床・研究に従事。2010年より東京大学医科学研究所特任教授、2016年より特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所理事長を務める。著書は「復興は現場から動き出す(東洋経済新報社)」「日本の医療格差は9倍 医療不足の真実(光文社新書)」「病院は東京から破綻する(朝日新聞出版)」「ヤバい医学部(日本評論社)」「日本のコロナ対策はなぜ迷走するのか(毎日新聞出版)」。

今回のニュースの内容とは?

今回取り上げるニュースの内容について教えてください。

上昌広 医師上先生

今回のニュースは、サル痘という感染症が通常は検出されない国で感染が報告されていることからWHOが世界全般の公衆衛生に「中程度のリスク」があるとの見解を示したというものです。5月26日時点では、定期間で繰り返される流行のエンデミックではないイギリス、スペイン、ポルトガルなど23カ国で計257人の感染が確認されているほか、感染の疑いのある人が120人にのぼっているとされています。今のところ死者は報告されていないようです。WHOは複数の非流行国で同時に感染が確認されていることから、しばらくの間検知されないまま広がり、最近になって急拡大した可能性があるとしています。WHOは「ウイルスがヒトの病原体として確立する機会を利用し、幼児や免疫不全の人など重症化リスクの高い層に広がった場合、公衆衛生上のリスクは高くなる可能性がある」と指摘しています。

サル痘とは?

WHOが注意喚起しているサル痘について教えてください。

上昌広 医師上先生

サル痘は、サル痘ウイルスの感染よる急性発疹性疾患です。主にアフリカ中央部から西部にかけて発生しています。主な症状は発熱と発疹で、多くの場合は2~4週間ほどで自然に回復しますが、子どもで重症化や死亡した症例の報告もあります。サル痘ウイルスの感染経路は、ウイルスに感染した動物に噛まれたり、血液や発疹などと接触したりすることによる感染が確認されています。ヒトからヒトへの感染は稀ですが、濃厚接触者の感染やリネン類を介した医療従事者への感染の報告があることから、患者の飛沫や体液、発疹などを介した感染経路が考えられています。日本国内では、感染症発生動向調査で集計が開始された2003年以降、サル痘患者の報告はありません。

留意すべきことは?

サル痘について、私たちが留意すべきことについて教えてください。

上昌広 医師上先生

サル痘は新型コロナウイルスと違い、空気感染では広がりません。万が一、日本に入ってきても、感染が拡大するとは考えにくいです。また、周囲に感染者がいても、天然痘ワクチンを打つことで、感染の予防をすることができます。加えて、国内未承認ですが治療薬もあるので、あまり心配する必要はないと考えます。

まとめ

WHOが欧州など20カ国以上で感染が確認されているサル痘について、世界全般の公衆衛生に「中程度のリスク」があるとの見解を示したことが今回のニュースで明らかになりました。今後さらに感染が拡大するのか、注視が必要になりそうです。

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