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サル痘発生に備えて医療従事者への天然痘ワクチン接種を検討

 更新日:2024/03/08
サル痘発生に備えて医療従事者への天然痘ワクチン接種を検討

6月29日の専門家部会で厚生労働省は、欧米で感染拡大中のサル痘が国内で発生した際に患者と接触する可能性のある医療従事者らを対象とした天然痘ワクチンの接種検討を始めました。このニュースについて甲斐沼先生にお話を伺います。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

今回のニュースの内容とは?

今回のニュースの内容について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

今回のニュースは、欧米中心に拡大している「サル痘」に関するものです。6月29日に厚生労働省の専門部会が、サル痘の日本国内での発生に備えて、患者と接触する可能性のある医療従事者らに天然痘ワクチンの接種検討を始めたという内容になります。海外ではサル痘の発症予防に天然痘ワクチンが使われており、国内で患者が見つかった場合、国立国際医療研究センターで濃厚接触者に接種することになっています。厚生労働省の報告によれば、天然痘ワクチンによって約85%発症予防効果があると言われています。今後は、医師や看護師、保健所職員など患者と接触するリスクが高い人に、事前に接種することも検討するとのことです。また、治療薬の投与体制についても整備を進めているということで、EUで承認された「テコビリマット」という天然痘の飲み薬を臨床研究として患者に投与して2週間後に皮膚のウイルス量が減るかどうかを調べるそうです。さらに国立感染症研究所のチームは、すでに存在している薬からサル痘に対して効果が期待できる薬を探す研究にも着手しており、抗ウイルス薬など1000種類以上を調べるとのことです。

サル痘とは?

WHOが注意喚起しているサル痘について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

サル痘は、サル痘ウイルスの感染による急性発疹性疾患です。主にアフリカ中央部から西部にかけて発生していています。主な症状は発熱と発疹で、多くの場合は2~4週間ほどで自然に回復しますが、子どもでは重症化や死亡した症例の報告もあります。サル痘ウイルスの感染経路は、ウイルスに感染した動物に噛まれたり、血液や発疹などと接触したりすることによる感染が確認されています。ヒトからヒトへの感染は稀ですが、濃厚接触者の感染やリネン類を介した医療従事者の感染報告があることから、患者の飛沫や体液、発疹などを介した感染経路が考えられています。したがって、流行地域では感受性のある動物や感染者との接触を避けることが重要なポイントとなります。日本国内では、感染症発生動向調査で集計が開始された2003年以降、サル痘患者の報告はありません。

サル痘の感染状況は?

サル痘の感染状況について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

サル痘は、オルソポックスウイルス属のサル痘ウイルスによる感染症であり、1970年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)でヒトで初めての感染が確認されました。現在、我が国では感染症法上の4類感染症に指定されています。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)によると、7月1日時点では、サル痘が定着していない52の国や地域で5783人の感染者が確認されています。また、WHOのヨーロッパ地域では31の国と地域で4500人以上の感染が確認されており、ヨーロッパでの感染者の増加が目立つ形です。WHOは7月1日に声明を発表して、感染者の約90%がヨーロッパ地域から報告され、報告される患者の数もおよそ2週間で3倍に増えるなど、急速に拡大していることに加え、女性や子どもの患者も報告されるようになっていることから、各国に対して対策を強化するよう呼びかけています。また、アジアだと韓国やシンガポール、台湾でも感染が確認されています。

まとめ

6月29日の専門家部会で厚生労働省が、欧米で感染拡大中のサル痘が国内で発生した際に患者と接触する可能性のある医療従事者らを対象とした天然痘ワクチンの接種検討を始めたことが今回のニュースでわかりました。日本ではまだ患者が見つかっていませんが、アジアでも感染例が出ており、サル痘については今後も注意が必要です。

この記事の監修医師