マダニ媒介「オズウイルス」で世界初の死亡例、茨城県内の70代女性
厚生労働省は、2022年茨城県内で心筋炎で死亡した70代の女性について、マダニが媒介すると考えられている「オズウイルス」というウイルスによる感染症と診断されたことを発表しました。このニュースについて中路医師に伺いました。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
厚生労働省が発表した内容とは?
マダニが媒介すると考えられている「オズウイルス」というウイルスによって、初めて死亡例が確認されたと厚生労働省が発表しましたが、具体的な内容について教えてください。
中路先生
今回取り上げるオズウイルスは、2018年に国内のマダニから検出されたウイルスで、これまでの調査から国内の広い地域に分布している可能性が指摘されていました。厚生労働省の発表によると、2022年夏頃に茨城県の病院で発熱や倦怠感を訴えて受診し心筋炎で亡くなった70代の女性の患者について、入院時にマダニが右足の付け根に噛みついていたのが確認されていたことなどから、オズウイルスによる感染症と診断されました。
国立感染症研究所によると、オズウイルス感染後に発症・死亡するケースが確認されたのは世界で初めてとのことです。さらに、厚生労働省などによると、これまでに国内では血液中の抗体検査でオズウイルスに感染したと考えられるケースがあったことから、「感染が必ずしも致死的な経過につながるわけではない」としています。ウイルスの特徴や症状などについては、今後も引き続き調査・研究がおこなわれる方針です。
詳しい感染経路はわかっていませんが、ウイルスを保有するマダニに噛まれることで感染する可能性が考えられるので、厚生労働省は草むらなどのマダニが多く生息する場所では長袖、長ズボンを着用し、マダニに噛まれないよう注意を呼びかけています。
オズウイルスとは?
今回、初めて死亡例が確認されたオズウイルスについて教えてください。
中路先生
オズウイルスはマダニが媒介するウイルスで、2018年に愛媛県でマダニの一種「タカサゴキララマダニ」から世界で初めて見つかりました。オズウイルスを媒介するタカサゴキララマダニは、関東から西に広く分布しているダニで、千葉県、岐阜県、三重県、和歌山県、山口県、大分県で、ニホンザルやニホンイノシシ、ニホンジカから抗体が検出されており、感染したことがあるとわかっています。また、山口県では狩猟者2人の血液からオズウイルスに対する抗体反応があったという報告もあります。現時点ではオズウイルスの有効な治療薬はわかっておらず、症状が出た場合は対症療法をおこなうことになります。
オズウイルスに対して気を付けることは?
オズウイルスに対して、私たちが普段の生活で気を付けることを教えてください。
中路先生
とにかくウイルスを持ったマダニに刺されないようにすることが肝心で、特にマダニの活動が盛んな春から秋にかけては注意が必要です。この時期には山や草むらなど、マダニが多く生息する場所に入ることはなるべく避けて、入る場合には長袖や長ズボン、そして足を完全に覆うことができる靴を着用し、地肌の露出を極力少なくすることが重要です。また、「イカリジン」などの成分を含む虫よけを使うことが有用です。屋外活動後はマダニに刺されていないか確認をしましょう。万が一マダニに刺されていることに気づいた際は自分で取ろうとせずに、医療機関でマダニを除去してもらいましょう。マダニに噛まれた後の数週間は経過観察して、発熱や発疹などの症状が認められた場合は速やかに医療機関を受診してください。
まとめ
厚生労働省は、2022年茨城県内で心筋炎で死亡した70代の女性について、マダニが媒介すると考えられている「オズウイルス」というウイルスによる感染症と診断されたことを発表しました。オズウイルスについてはわかっていないことも多いため、今後おこなわれる調査・研究には注目が集まります。