新型コロナ第9波 既に始まった可能性「6回目のワクチン接種の検討を」尾身茂氏
6月26日、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会会長を務めた尾身茂氏は、岸田文雄首相との面会後、記者団に対して「第9波が始まった可能性がある。日本は高齢化が進んでおり、高齢者をどう守るかが大切だ」と語りました。この内容について竹内医師に伺いました。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
新型コロナウイルスの感染状況は?
尾身氏は岸田首相との面会で、夏の感染拡大に向けた備えや国内の感染状況について意見を交わしたとのことですが、現在の新型コロナウイルスの感染状況について教えてください。
竹内先生
6月12日~6月18日までの1週間に、全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナウイルスの患者数は2万7614人でした。また、1医療機関あたりの平均の患者数は前週の約1.10倍の5.60人となり、増加傾向が続いています。1定点あたりの患者数を都道府県別に分析すると、沖縄県が突出して多く、28.74人でした。次に多かったのが、鹿児島県で9.60人、次いで千葉県で7.57人、愛知県で7.22人、埼玉県で7.02人となっており、32の府県で前週より増加しています。1週間に新たに入院した人は全国で4417人でした。
6月16日に開かれた厚生労働省の専門家会合では、検出される新型コロナウイルスの種類はオミクロン株のうちの「XBB」系統が大部分を占めているとのことでした。また、民間の検査会社で検出された結果をもとにした分析では、6月下旬時点にインドなどで拡大して免疫を逃れやすい可能性が指摘されている「XBB.1.16」が49%になると推定されることが示されています。
今後の感染の見通しについては、この夏の間に一定の感染拡大が起きる可能性があり、医療提供体制への負荷が増大するケースがあることも指摘されていました。
感染状況についての尾身氏の見解は?
尾身氏は岸田首相との面会の後に記者団の取材に応じましたが、新型コロナウイルスの流行についてどのような見解を語ったのでしょうか?
竹内先生
尾身氏によると、岸田首相との面会では「現在の新型コロナウイルスの感染状況」「中長期的な推移」「求められる対策」について意見交換をおこなったとのことです。新型コロナウイルスの感染状況について、尾身氏は「医療機関の定点把握などのデータをみると、地域によって差はあるが全国的には微増傾向にあるのではないか。第9波が始まっている可能性があるが、今後どのように推移するかは今のところわからない。社会を元に戻していく方向に進む中で、重症化リスクの高い高齢者を守り、亡くなる人を減らすことが重要だ」と話しています。
突出して1定点あたりの患者報告数が多い沖縄の状況については、「医療提供体制が他県よりも乏しく、患者が一部の医療機関に集中している」と指摘した上で、「コミュニティを大切にする生活様式や、比較的低いワクチン接種率も影響している可能性がある」と指摘しました。
今後の見通しについては、「日本も第9波による死者数が第8波を下回るようであればイギリスから遅れてエンデミックの方向になっていくのではないか。致死率は今のところ大きく変わっていないと思う。新規感染者がどれだけ出るのか注視する必要がある」との見解を示しました。さらに、「5類に移行したことで接触の機会が増えており、ある程度の感染者の増加は織り込み済みだったと思う。死亡者を減らすよう注意して社会を回すことが大事だ。自治体などが高齢者施設での感染対策をしっかりやっていくほか、免疫は時間の経過とともに下がっていくため、特に高齢者は個人の判断になるが6回目のワクチン接種を検討してほしいと思う」と話しました。
第9波が始まった可能性についての受け止めは?
今回、尾身氏が示した見解についての受け止めを教えてください。
竹内先生
新型コロナウイルスが5類感染症へ移行したこともあり、感染が広がっている可能性が示されました。そのため、気を引き締め直して、今後の感染状況に注視が必要と考えられます。また、感染拡大期にはここ数年で身についた感染対策を再度実施することが、感染拡大を防ぐのに有効であると考えられます。
まとめ
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会会長を務めた尾身茂氏は6月26日、岸田文雄首相との面会後、記者団に対して「第9波が始まった可能性がある。日本は高齢化が進んでおり、高齢者をどう守るかが大切だ」と語ったことが今回のニュースでわかりました。新型コロナウイルスの感染状況については引き続き注意が必要な状況が続きそうです。