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新型コロナ第9波「夏の間に感染拡大が生じる可能性」厚生労働省が注意喚起

 公開日:2023/06/23
新型コロナ「夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性」

厚生労働省の専門家会合は新型コロナウイルスの感染状況について、「5類移行後も感染者数が増加しており、夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性がある」との見解をまとめました。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

厚生労働省の専門家会合が示した見解とは?

今回、厚生労働省の専門家会合が示した新型コロナの感染状況への見解を教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

6月16日に開かれた専門家会合は、5類移行後初めて開催された会議です。専門家会合では、感染状況や医療提供体制の状況について分析し、今後求められる対応について検討しました。会合で示された新型コロナウイルスの全国の感染状況について、6月5日~6月11日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナウイルスの患者数は、前週から2731人増えて2万5163人となりました。また、1医療機関あたりの平均患者数は5.11人で前週の1.12倍となりました。前週から増加が続くのは10週連続です。都道府県別では多い順に沖縄県が18.41人、鹿児島県が7.37人、石川県が6.58人、埼玉県が6.51人、北海道が6.47人となっていて、36の都府県が前週より増加しています。そのほか、1週間で新たに入院した人は全国で4330人と、前週と比べて208人の増加となっています。

検出される新型コロナウイルスの種類はオミクロン株のうちの「XBB」系統が大部分を占めていて、民間の検査会社で検出された結果をもとにした分析では6月下旬時点にはインドなどで拡大し免疫を逃れやすい可能性が指摘されている「XBB.1.16」が49%になると推定されています。今後の感染の見通しについては、「夏の間に一定の感染拡大が起きる可能性があり、医療提供体制への負荷が増大する場合も考えられる」としています。

専門家会合は、感染の動向を様々な指標で把握し、医療提供体制を注視すること、高齢者や基礎疾患のある人へのワクチン接種、感染拡大が起きても必要な医療が提供できる体制作りを進めることの必要性を指摘しました。さらに、手洗いや換気、マスクの効果的な場面での着用など、基本的な感染対策を引き続き呼びかけています。

政府関係者など反応は?

新型コロナウイルスの感染状況について、「5類移行後も感染者数が増加しており、夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性がある」との見解をまとめましたが、政府関係者などからはどのような反応が出ているのでしょうか?

中路 幸之助 医師中路先生

まず、今回の見解をまとめた専門家会合の脇田隆字座長は「得られているデータをもとにすると、現在は増加傾向が続いており、もう少しこの傾向が続くのではないかという分析があった。この増加傾向がどこまで続き、どのくらいの規模まで広がるかという予測は現時点では難しい」とコメントしています。また、「今の時点では地域でそれほどひっ迫しているわけではないが、入院者数が少し増加しているという状況が共有された。これまでも感染拡大は最初に若い人の間で起き、その後に高齢者へ広がっていく傾向がみられてきた。高齢者は感染による抗体の保有率が若い世代に比べて低く、高齢者や基礎疾患のある人など重症化リスクのある人たちに感染が波及し、医療がひっ迫する可能性がある」と医療体制について懸念を示しています。

一方で、松野博一官房長官は「感染状況を重層的に把握しつつ、注視したい」と述べた上で、今後の政府の取り組みに関しては「先々の感染動向を見据えながら、先手で必要な対応をおこなう」と説明しています。

専門家会合が示した見解への受け止めは?

新型コロナウイルスの感染状況について、「5類移行後も感染者数が増加しており、夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性がある」との見解について受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

新型コロナウイルスは今後も消えない感染症となり、予想されるように一定期間の感染拡大は避けられない状況であると考えられます。ウイルスも変異し(XXB.1.5からXXB.1.16など)、その都度重症化傾向は少なくなるものの、感染力は増していきます。

一番重要なのは、重症化のリスクのある人たちへの対応です。高齢者や基礎疾患のある人への重症化を防ぐためワクチンの接種を検討するよう再度呼びかけをすることと、いったん感染した場合は3日目を乗り切ると重症化のリスクは下がってくるため、それまでの間のなるべく早い時期で重症化のリスクのある人(高熱・呼吸苦などの症状、ワクチン未接種の人も含む)へ「モルヌピラビル」などのウイルスの増殖を抑える薬を使用することも重症化を防ぐ意味で重要と考えます。また、現在はマスク着用が任意となりましたが、感染リスクのある場面ではマスクをしっかりつけることが重要です。そして、急激な感染拡大によって医療のひっ迫が予想される場合は、国から国民への感染対策の強化のアナウンスが必要となるでしょう。

まとめ

6月16日、厚生労働省の専門家会合が新型コロナウイルスの感染状況について、「5類移行後も感染者数が増加しており、夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性がある」との見解をまとめたことが今回のニュースでわかりました。手洗いや換気、マスクの効果的な場面での着用など、基本的な感染対策を改めて意識する必要がありそうです。

この記事の監修医師