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小児インフルエンザワクチン「10月末までに接種を」 今シーズン流行の懸念を受けて

 更新日:2023/03/27
アメリカ小児科学会 小児インフルワクチン10月末までの接種呼びかけ

米国小児科学会(AAP)感染症委員会は、今シーズンの小児のインフルエンザワクチン接種についての呼びかけを発表しました。このニュースについて中路医師に伺いました。

中路 幸之助 医師

監修医師
中路 幸之助(医師)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

米国小児科学会が発表した呼びかけとは?

今回、米国小児科学会が発表した呼びかけについて教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回取り上げるニュースは、米国小児科学会の感染症委員会による呼びかけについてです。アメリカでは、生後6カ月以上の全ての小児に対して10月末までのインフルエンザワクチンの接種を推奨しています。しかし、2022年4月9日までにワクチン接種を受けた生後6カ月~17歳の小児はわずか53.3%にとどまっていたことが今回の呼びかけにつながりました。

呼びかけでは12の推奨事項が記載されており、内容は以下のとおりです。
①今シーズンにおいて、年齢6カ月以上の全ての小児・青年にインフルエンザワクチン接種を推奨する。
②認可済みの全てのインフルエンザワクチン接種を推奨するものであり、特定製品の推奨ではない。
③初めて接種を受ける6カ月~8歳の小児、2022年7月1日以前に1回しか接種を受けていない小児、接種歴が不明な小児は、今シーズンに最低でも4週間間隔を空けて2回接種すべきで、それ以外の小児は1回接種すべき。
④小児の年齢に適した推奨用量を投与すべき。
⑤1シーズンで2回の接種が必要な場合、同じ製品である必要はない。
⑥2回接種が必要な小児には、ワクチンが入手可能になり次第早めの接種が必要であり、今年10月末までの接種完了が理想である。
⑦インフルエンザ不活性化ワクチンは、ほかの不活性化ワクチンまたは生ワクチン接種と同時期でも、前後でもいつでも接種できる。弱毒インフルエンザ生ワクチンは、ほかの生ワクチンまたは不活性化ワクチンと同時期に接種できる。もし同時期に接種していない場合は、弱毒インフルエンザ生ワクチンや、それ以外の非経口生ワクチン投与から4週間間隔を空けなければならない。
⑧現在のガイダンスでは、インフルエンザワクチンと新型コロナウイルスワクチンは同時期でも前後でも接種できる。
⑨妊娠中の女性は、自身と胎児保護のためにいつでも不活性化インフルエンザワクチンを接種できる。妊娠中にインフルエンザワクチンを接種していない場合、退院までに受けることを推奨する。
⑩全ての小児に対して、ワクチン接種を促すべきである。特に高リスク集団とその接触者は禁忌を除き推奨する。
⑪低年齢児には医療機関での接種が最適だが、学校や薬局など医療機関以外の場所での予防接種を推進し、予防接種に対する格差を減らすことは接種率を向上させ得る。
⑫医療従事者へのインフルエンザワクチン接種を支援する。

今シーズンのインフルエンザの流行予測は?

今シーズンのインフルエンザの流行予測を教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今シーズンのインフルエンザの流行については、7月に日本感染症学会が各医療機関に対して提言を発表しています。この提言によると「南半球のオーストラリアでの流行を見てみると2022年4月後半からインフルエンザ感染者の報告数が増加しており、例年を超えるレベルの患者数となり医療のひっ迫が問題となっている。日本でも今年の秋から冬にかけて、オーストラリアと同様の流行が起こる可能性がある」と警鐘を鳴らしています。

さらに、日本感染症学会は「この2年間は日本国内でのインフルエンザ流行がなかったために、社会全体のインフルエンザに対する集団免疫が低下していると考えられる。ひとたびインフルエンザの感染が広がると、小児を中心に大きな流行となる恐れがある」と指摘しています。また、今年の流行が予想されているインフルエンザウイルスについては、「オーストラリアで本年度に検出されたインフルエンザウイルスのうちサブタイプが判明したものでは、約80%がA(H3N2)、約20%がA(H1N1)だったことから、日本でもA(H3N2)香港型の流行が主体となる可能性がある」と指摘しています。

米国小児科学会の呼びかけについての受け止めは?

米国小児科学会が発表した呼びかけについての受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

インフルエンザの流行時において、小児は毎年高い発症率を示しており、特により若年で併存疾患を持つ小児は感染しやすく、重篤な合併症を発症するリスクが高いとされています。昨シーズンのインフルエンザワクチンの接種率は約半数と低調でした。オーストラリアでの流行状況を参考にすると、日本においてもアメリカと同様に小児への早めのインフルエンザワクチン接種は検討されるべきと考えられます。また、新型コロナウイルスウイルスに罹患(りかん)して、急性疾患を発症した場合においても、症状が改善したらインフルエンザワクチンを接種するように推奨されるものと考えられます。

まとめ

米国小児科学会(AAP)感染症委員会が今シーズンのインフルエンザワクチンについて、小児に関する12の呼びかけを発表したことが今回のニュースでわかりました。日本感染症学会も今シーズンの流行に警戒を呼びかけていることから、今後も注視が必要になりそうです。

この記事の監修医師