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「子宮内膜症」になると現れる症状はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「子宮内膜症」になると現れる症状はご存知ですか?医師が監修!

子宮内膜症は妊娠・出産適齢期の女性に多くみられる病気で、特に近年は発症者が増加しています。

子宮内膜症は不妊症や卵巣がんに発展することもあるため、症状に気づいた時点でできる限り早めに病院を受診することが大切です。

子宮内膜症のサインとなる症状にはどのようなものがあるのでしょうか。本記事では子宮内膜症の症状や原因についてご紹介します。

あわせて検査方法や治療方法についてもご紹介しています。この病気を深く知るためにも、ぜひ最後までご覧ください。

前田 裕斗

監修医師
前田 裕斗(医師)

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東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。

子宮内膜症とはどんな病気?

お腹にハートマーク

子宮内膜症とはどんな病気ですか?

子宮内膜症は、本来は子宮の中にあるべき「子宮内膜」という組織が、子宮の外にできる病気です。
子宮内膜とは子宮の内側にある粘膜状の組織で、受精卵を受け止め、育む役割を果たします。簡単にいえば、胎児のベッドのような存在です。
子宮内膜症の発生率が高いのは卵巣・卵管・腹膜などですが、稀に腸や肺に発生することもあります。

どんな症状がみられるのでしょう?

子宮内膜症の代表的な症状は次の通りです。

      

  • 月経痛
  • 月経時以外の腹痛
  • 腰痛
  • 性交通
  • 排尿痛
  • 月経過多
  • 不正性器出血
  • 疲れやすい

特に目立つのは月経痛です。発症以前に比べて月経痛が重くなったと感じる方は多くおられます。
強い月経痛の理由の1つは、プロスタグランジンの増加です。プロスタグランジンは月経痛の原因物質で、月経時に子宮内膜から分泌されます。子宮内膜症になると子宮外からプロスタグランジンが分泌されるため、通常よりも強い痛みを感じやすくなるのです。
さらに子宮内膜症では、次のようなトラブルにも注意する必要があります。

  • チョコレート嚢胞
  • 不妊
  • 卵巣がん

チョコレート嚢胞は子宮内膜症の1種で、卵巣内に古い血液の袋が形成される病気です。見た目がチョコレートに似ていることが由来とされています。
チョコレート嚢胞の正体は古い子宮内膜と出血です。子宮内膜は、月経周期にあわせて成長・剥離を繰り返す組織です。
具体的には、子宮内膜は排卵期を迎えると子宮の内側に形成され、妊娠に備えて成熟していきます。その後に妊娠が起こらない場合、子宮内膜は不要となるため、子宮から剥がれ落ちて経血として体外に排出されます。この現象が「月経」です。
しかし子宮以外に形成された子宮内膜は、多くの場合、体外には排出されません。子宮内に発生したものと異なり、体外に出るための出口がないためです。剥がれ落ちた子宮内膜はどこへも行けず、そのまま卵巣や骨盤内などに蓄積されることになります。卵巣内に古い子宮内膜(経血)が溜まった状態が、チョコレート嚢胞です。
チョコレート嚢胞を放置することは、卵巣がんに移行するおそれもあるため軽視できません。また、子宮内膜症やチョコレート嚢胞は不妊症の原因にもなりえます。
理由は、古い子宮内膜が体内に蓄積され続けると、卵管などが炎症や癒着を起こしやすくなるためです。卵子の成長や排卵に支障が出やすくなるため不妊につながりやすく、実際に不妊の女性の約50%に子宮内膜症が認められると指摘されています。

発症する原因が知りたいです。

子宮内膜症の原因はハッキリと分かっていません。一説では、女性ホルモンとの関わりや、腹腔内での月経血の逆流が指摘されています。非常に大雑把な言い方をすれば、子宮内膜症の原因は月経といえます。
子宮内膜は月経周期に従って成長や剥離を繰り返すためです。つまり、月経がある限り子宮内膜症のリスクはつきまといます。反対に、月経がなくなれば子宮内膜症のリスクは低減します。
実際に子宮内膜症は閉経とともに治まることがほとんどです。

子宮内膜症を発症する人は増えている?リスクや診断・検査

スマホで検索する女性

子宮内膜症になる方が増えているのは何故ですか?

一因として、生涯の月経回数の増加が指摘されています。より具体的にいえば、子宮内膜症の発症者の増加は、妊娠経験の無い女性が増えていることと深い関わりがあります。子宮内膜症は月経回数が多いほどリスクが高くなる病気です。
では、どうすれば生涯の月経回数を減らせるのでしょうか。答えの1つが「妊娠」です。妊娠中は月経が止まります。つまり単純に考えると、月経が止まる回数が多い方=妊娠した回数が多い方ほど子宮内膜症の発症リスクは下がるというわけです。
現代は晩婚化などの影響により、妊娠経験のない女性が増加しています。そのぶん生涯の月経回数が増えやすいため、それに伴って子宮内膜症の発症者も増加していると考えられています。
近年は初潮の低年齢化が進んでいることも、生涯の月経回数が増加している要因の1つです。

進行するとどうなりますか?

個人差はありますが、子宮内膜症は進行するにつれて月経痛が重くなることが一般的です。月経のたびに痛みで寝込み、日常生活に支障をきたすケースも少なくありません。
子宮内膜症は重症化すると不妊を引き起こすこともあります。さらに、稀にですが子宮内膜症から卵巣がんに移行するケースも認められています。
日常生活の質を高く保つためにも、強い月経痛などがある場合は放置せず、婦人科を受診してください。

子宮内膜症は大体何歳くらいの方がなりやすいのでしょう?

子宮内膜症の好発年齢は20代後半から40代で、ピークは35歳くらいと考えられています。なかには10代で発症する方もおられます。
基本的に、初潮~閉経までリスクがつきまとう病気だと考えてかまいません。裏を返せば、閉経後は発症リスクが下がる病気です。
すでに子宮内膜症を発症している方でも、閉経後は症状が軽くなることが多いです。

なりやすい方の特徴があれば教えてください。

生理がある20代後半~40代の方や出産経験がない方は発症リスクが高いと考えてください。
その他にハッキリしたことはいえませんが、次のような方は発症しやすいと考えられています。

  • 月経周期が短い
  • 1回あたりの月経期間が長い
  • 血縁に子宮内膜症の発症者がいる

子宮内膜症の検査内容が知りたいです。

子宮内膜症を診断する際は、次のような検査が行われることが一般的です。

  • 内診
  • 超音波検査
  • 血液検査
  • MRI検査
  • 腹腔鏡検査

程度にもよりますが、子宮内膜症と診断された場合は治療が必要です。治療方法は次項で解説します。

子宮内膜症の治療方法や日常生活の過ごし方

飲み薬

子宮内膜症にはどんな治療方法があるのでしょうか?

子宮内膜症の治療法は大きく分けて「手術療法」「薬物療法」の2種類があります。両者は併用されることも少なくありません。
手術療法は主に子宮内膜症性のう胞に対して行われる方法で、子宮内膜症性のう胞のみを取り出す手術と、卵巣ごと切除する手術があります。
また、不妊症の方や、子宮内膜症の症状があまりに強い場合、症状改善を目的に子宮内膜症の部分をできるだけ取り除く方法があります。
手術治療を行なった場合でも、再発を予防するために薬物治療を併用することが必要です。
手術療法には2つの術式があります。

  • 腹腔鏡手術:お腹に開けた小さな穴から電気メスを通し、病巣を切除する方法
  • 開腹手術:お腹を開いてメスで病巣を切除する方法
  • 薬物療法の代表的な薬剤は次の通りです。
  • 鎮痛剤:子宮内膜症による痛みを軽減する
  • 低用量ピル:女性ホルモンの量を調節して月経量を減らし内膜症の進行を抑制する
  • ホルモン剤:月経量を少なくする、子宮内膜症の組織を縮小させる

薬物療法は、症状を一時的に緩和する「対症療法」です。根治は期待できませんが、手術療法に比べると身体的負担が少ないのがメリットです。

必ず手術しなければ治らないものですか?

子宮内膜症で基本となる治療は薬物療法であり、必ずしも手術の必要はありません。
子宮内膜症で手術が必要な場合は、子宮内膜症性嚢胞がある・サイズが大きく薬物治療だけではコントロールが難しい・悪性の可能性が考えられる場合・痛みなどの症状が非常に強く子宮内膜症による癒着などを解除する必要がある場合・不妊治療を進めるために必要と専門家が判断した場合などです。
病気が重症化するほど治療も大掛かりになりやすいため、子宮内膜症を疑う痛みや症状がある場合は、早めに婦人科で検査を受けてください。

治療中・治療後はどのような生活習慣を心がけたら良いのでしょうか?

治療後の生活に関する明確なルールやマニュアルはありません。基本的には、他の病気の治療後と同じように、栄養バランスのよい食事や適度な運動などを行ってください。
また、子宮内膜症は根治することがなく、再発の恐れのある病気です。そのため、手術後も薬物治療を続けることが勧められます。
子宮内膜症の再発時は痛みなどの自覚症状なしに進行することもあるため、薬物治療を続けながら定期的に婦人科でチェックを受けることが大切です。

予防する方法があれば教えてください。

現在のところ予防法は確立されていません。
前述の通り、手術後は薬物治療を続けることで再発を予防することが可能です。
定期的に婦人科検診を受け、早期発見・早期治療がすすめられます。

最後に、メッセージをお願いします。

子宮内膜症は強い月経痛を引き起こすだけでなく、不妊のリスクを高める病気でもあります。
発症者が全員不妊症になるわけではありませんが、妊娠を希望する方は、できる限り早めの治療が望まれます。
年々月経痛がひどくなる方や、血縁に子宮内膜症の発症者がいる方は、定期的に婦人科検診を受けるなどして早期発見に努めてください。

編集部まとめ

ハートのクッションを持つ女性
子宮内膜症は妊娠・出産適齢期の女性に多い病気です。ときには不妊症やがんの原因となるため、症状に気づいたらできる限り早めに病院で治療を受けましょう。

特に近年は発症者が増加傾向にあるため、不安な症状がある場合はすぐに医師に相談することをおすすめします。

この記事の監修医師