目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「もやもや病」を発症すると現れる症状はご存知ですか?医師が監修!

「もやもや病」を発症すると現れる症状はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「もやもや病」を発症すると現れる症状はご存知ですか?医師が監修!

もやもや病は、脳に血液を送るための血管が徐々に詰まることでさまざまな症状が出てくる病気です。

この病気は脳梗塞や脳出血の原因となり、場合によっては命に関わることがあるため、早期発見・早期治療が重要な鍵となるでしょう。

難病に指定されており、小児でも成人でも発症する病気です。小児と成人で発症するタイプが異なることがあり、それによりさまざまな症状を示します。

今回の記事では、もやもや病の症状や原因・治療方法・予防方法などについてご紹介します。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

プロフィールをもっと見る
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

もやもや病とはどんな病気?

脳血管

もやもや病とはどんな病気ですか?

もやもや病は、別名ウィリス動脈輪閉塞症とも呼ばれ、脳の動脈が徐々に閉塞する進行性の病気です。日本人に多くみられる病気とされています。脳の動脈が閉塞すると聞くと、動脈硬化を思い浮かべるかもしれませんが、この病気は小児でも発症する難病です。
発症年齢の平均をみると、5歳~10歳もしくは30歳~40歳にそれぞれ発症のピークがあります。首から脳へとつながる、内頚動脈という左右2本ある血管の終末部に狭窄や閉塞が起こり、それにより脳の血流が悪くなることがこの病気のメカニズムです。
狭窄が進行してくると、脳の血流を保つために血管がまわり道を形成します。これをもやもや血管と呼びます。

脳画像を見るとこの血管が煙のように見えるので、もやもや病と呼ばれているのです。病気の進行に伴って、さまざまな症状が出現します。成人の場合は、脳出血やくも膜下出血を発症することでこの病気が発見されることが多いです。

もやもや病にはいくつかタイプがあると聞いたのですが…

大きく分けて2種類のタイプがあります。脳血流が低下することによる症状を引き起こす「虚血型」と、脳出血を起こしてしまう「出血型」です。
小児の場合は虚血型が多く、成人では虚血型と出血型のいずれも多いです。それ以外にも、てんかん型や、まったく症状がなく偶然発見される無症候型と呼ばれるタイプがあります。

もやもや病にみられる症状を教えてください。

もやもや病のタイプにより症状が異なります。虚血型の症状は、脳が血流不足を起こすことによるもので、主に以下のような症状が起こります。

  • 頭痛
  • 意識障害
  • 脱力発作
  • 片麻痺や四肢麻痺
  • 感覚障害
  • てんかん

これらの症状が一時的に起こるものを、一過性虚血発作といいます。特に小児では、激しく泣いた後・過呼吸後・運動後にこの発作が起こることが多いです。また、同じ虚血でも脳梗塞を起こしてしまったことにより血流が途絶え脳が損傷された場合には、梗塞部位によりさまざまな症状が現れます。
運動麻痺・言語障害・視野障害だけではなく、血流が途絶えた範囲によっては知能が低下することもあり、後遺症となる危険性もあるのです。出血型の症状は、もやもや血管が破れて出血することによるものです。
頭痛・吐き気・めまい以外に、出血部位によりさまざまな症状が現れます。くも膜下出血症状として、激しい頭痛が突然起こり発症することもあり、命に関わることもあります。いずれの場合も速やかに医療機関を受診しましょう。

もやもや病になってしまうのは主に何が原因なのでしょうか?

もやもや病は難病に指定されており、小児の場合は明確な原因は今のところわかっていません。成人の場合、一部は動脈硬化が原因である場合があります。10%~20%に家族性の発症が認められており、遺伝的な原因も考えられています。
必ずしも遺伝によるものではなく、その他のさまざまな要因が組み合わさって発症すると考えられています。

もやもや病のリスクや診断方法

MRI

もやもや病に気づかなかった場合どのようなリスクがありますか?

もやもや病を放置していると、脳梗塞や脳出血のリスクが高くなります。脳梗塞や脳出血を発症すると、後遺症が残ったり命に関わったりする可能性があるため危険です。脳梗塞は血管が閉塞し血流が途絶えた結果、脳が損傷を受けるものです。また、脳出血はもやもや血管が破れてしまうために起こります。
小児では脳梗塞や脳出血は起こりにくいですが、一過性虚血発作や頭痛などの症状がある場合はすぐに医療機関を受診しましょう。成人の場合は突然の脳梗塞や脳出血で発症する危険があります。
症状がみられない無症候型の場合でも、脳梗塞や脳出血を起こすリスクがあるので注意が必要です。少しでも気になる症状がある場合は、速やかに医師の診断を受けましょう。

もやもや病は何歳くらいの方に多い病気なのでしょうか?

成人だけではなく小児でも発症する病気です。発症年齢には2つのピークがあり、1つ目は5歳前後、2つ目は40歳前後です。また、この病気の男女比は1:2.5で女性に多いといわれています。

もやもや病の診断方法を教えてください。

もやもや病の診断には、脳画像だけではなく血管の状態を見ることが重要です。多くは脳神経外科などの専門科のある病院で行われます。診断のためには、以下の検査を行います。

  • MRI(磁気共鳴画像診断)
  • MRA(磁気共鳴血管造影)
  • カテーテル検査
  • SPECT(脳血流検査)

MRIは脳全体の様子を知ることができ、脳梗塞や脳出血があるかどうかを調べることができます。MRAは造影剤を使用し、大まかな血管の状態を調べる検査です。
カテーテル検査は、さらに詳しく血管の狭窄や閉塞の状態を調べることができます。SPECTは全体の脳血流を調べることができ、血流低下の範囲を知ることができる検査です。
これらの検査を用いて内頚動脈の狭窄が確認されたりもやもや血管が確認されたりすると、診断が確定します。

もやもや病の治療方法と予後について

話を聞く医者

もやもや病はどんな治療を行いますか?

もやもや病の治療には、以下の方法があります。

  • 薬による治療
  • 外科的治療

脳の血流が低下することによる症状が起こっている場合は、薬による治療が選択されます。血液をサラサラにし、血栓が形成されるのを予防する抗血小板薬です。薬を飲むことにより脳の血流が改善されるため、一過性虚血発作が起こる頻度が減少します。
しかし、薬による治療には限界があり、その場合は外科的治療が選択されます。脳血流を増やす血行路をつくるための「バイパス術」です。頭皮にある血管を脳血管に直接つなぐことで、脳血流を増やすことができます。
小児の場合は頭皮の血管を脳の表面に置き、自然に血管が延びていくのを待つ間接法を行うこともあります。治療法は、医師と相談の上最適なものを選択しましょう。

もやもや病の治療中と治療後の過ごし方を教えてください。

薬で治療を行っている場合は、薬の飲み忘れには十分に注意しましょう。また、血が止まりにくくなることがあるため抜歯など出血する可能性がある他の治療を行う場合には注意が必要です。
バイパス術を行った後は生活に大きな制限はありませんが、格闘技やラグビーなど頭に直接刺激を受けるようなものはおすすめできません。脱水にも注意が必要なので、適度に水分を摂るように気を付けましょう。
喫煙は、ニコチンが脳血管を収縮させるため悪影響を及ぼします。大量の飲酒も控えた方がいいでしょう。出血型の場合は、再発に注意が必要です。
定期的に検査を受けながら、頭痛や吐き気などの気になる症状が起こったらすぐに医療機関を受診しましょう。いずれにしても、異変を放置しないことが大切です。

もやもや病を予防する方法があれば知りたいです。

この病気の発症自体を予防することは、残念ながらできません。
しかし、薬や手術により、脳梗塞や脳出血の発症を予防することは可能です。進行し脳梗塞や脳出血が起こってしまうとその後の生活にも影響が出る可能性があります。
早期発見できることが重要です。そのため、少しでも脳の異変と思われる症状がある場合には、医療機関を受診することをおすすめします。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

もやもや病は、進行により脳梗塞や脳出血を伴う恐ろしい病気です。広範な出血や梗塞が起こると、後遺症が残ってしまう可能性や命に関わることもあり非常に危険ですが、早期に発見され適切な治療を行えばそれを防ぐこともできます。
よくある頭痛やめまいなどでも、くり返し起こる場合は病気のサインの可能性もあります。また、一過性虚血発作の症状は、その時良くなっても脳梗塞などの前兆の可能性もあるため注意が必要です。気になる症状がある場合には放置せず、速やかに医療機関を受診することをおすすめします。

編集部まとめ

申込書の書き方を説明
今回は、もやもや病について解説しました。この病気は、脳に血液を送る内頚動脈が徐々に狭窄・閉塞してしまう病気です。

成人だけではなく小児でも発症する可能性があり、進行すると脳梗塞や脳出血などを起こしその後の生活にも影響が出てしまうため危険です。

早期発見し治療を開始することができれば、日常生活も問題なく送ることができる可能性が高くなります。

気になる症状がある場合は、速やかに医療機関で診断を受けましょう。

この記事の監修医師