「心臓が痛い」と感じる原因はご存知ですか?医師が徹底解説!
心臓が痛い時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
弓場 智雄 医師
もともと心臓外科を研修していたが、担当した患者さんが集中治療室(ICU)の術後管理で劇的に回復したことをきっかけに麻酔科に転科。専門は集中治療、手術麻酔、ペインクリニック、無痛分娩。研究は酸化ストレス、慢性痛や術後せん妄、無痛分娩など。
「心臓が痛い」症状で考えられる病気と対処法
心臓が痛いという症状は非常に危険な病気の兆候の可能性があります。このような症状がある場合は必ず病院を受診し、危険な病気のサインかどうかを検査する必要があります。今回は心臓が痛い時に考えられる病気やその対処法について説明します。
心臓が痛い症状で考えられる原因と治し方
心臓が痛い症状、言い換えれば胸痛時に考えられる病気は無数にあります。しかし、その中には見逃すと死に至る危険な胸痛があります。それらは「killer chest pain (キルラーチェストペイン)」といわれ、原因としては心筋梗塞・肺血栓塞栓症・大動脈解離・緊張性気胸・食道破裂が挙げられます。心臓が痛いという症状がある場合は、速やかにこれら疾患の除外を行わなければいけません。具体的には心電図、胸部レントゲン、血液検査、心臓超音波検査、造影剤を使用した胸部CT検査などが必要です。これら以外の原因としては、狭心症、不整脈、弁膜症、緊張性以外の気胸、逆流性食道炎や胃・十二指腸潰瘍、胆嚢炎、肋間神経痛や帯状疱疹などが考えられます。症状の特徴はそれぞれの原因によりあるのですが、現実問題として一般の方が症状だけで判断するのは非常に難しいと思います。痛みに加えて息苦しさを感じることも少なくありません。よって心臓の痛みを感じた場合は安静にし、可能なら少し水分を摂り様子をみてください。それでも痛みが改善しない場合などは速やかに病院を受診することをお勧めします。夜間であればその日の救急当番の病院をさがし、電話して相談してください。
たまに心臓が痛む症状で考えられる原因と治し方
たまに心臓が痛むという場合は比較的安定している狭心症や、胃・十二指腸といった消化器系の疾患が原因の可能性があります。ひとつの目安としては、狭心症など心臓が原因の場合は運動時、特に階段を登った時など心臓に負担がかかった時に出ることが多いです。また胃など消化器が原因の場合は、食事と関連して痛みが出現することが多いです。そのような場合は一度病院で検査を受けた方が良いでしょう。特に運動と関連した痛みの場合は循環器内科、食事と関連した痛みの場合は消化器内科がいいですが、かかりつけの内科がある場合はまずそちらでも大丈夫です。一度も病院を受診しておらず、また定期的な検診を受けていない方は必ず1回でいいので病院で病院を受診することをおすすめします。
ストレスで心臓が痛くなる症状で考えられる原因と治し方
ストレスに関連して心臓が痛くなる場合は、可能性としては胃や十二指腸潰瘍・びらんなど消化器系の疾患が原因のことが多いです。強いストレスがかかると自律神経の働きを乱して消化管の働きを悪くし、また血流などにも影響するからです。そのような痛みは食事と関連して起こることが特徴ですので、そういった場合は胃カメラやバリウム検査などを受ける必要があります。
また慢性的にストレスがかかると徐々に生活習慣が乱れ、不整脈などの原因となることもあります。そういった場合は心臓の痛みとともに動悸を感じることがあります。そのような場合は一度病院で相談して心電図検査やホルター心電図検査を受けましょう。
心臓がチクチク痛む症状で考えられる原因と治し方
心臓がチクチク痛む時は、痛みの原因として胸の表面である可能性が高いです。また痛みの場所を具体的に指で示すことができる点も特徴です。このような場合は神経が原因の痛みに特徴的で、具体的には肋間神経痛や帯状疱疹の前兆などが考えられます。神経が原因の痛みは寝る前など夜間に強く感じ、日中など学校や仕事などなにかやることがある時は痛みをあまり感じないことが多いです。しかしあまり長い間放置すると痛みが癖になり、慢性的な痛みになることがあります。あまり我慢せずまずは近所の内科を受診して相談してください。
中高生で心臓が痛む症状で考えられる原因と治し方
この年齢の子供は成長や部活などの運動に伴う骨や筋肉が原因の痛みの場合が多いですが、中には先天的な心臓の異常などが原因のこともあります。数は少ないですがそういった心臓が原因の場合は大人と違って重大なケースが多いです。一つの目安としては、姿勢などによって痛みが出現し、また痛くなる前兆がある場合は問題ない場合が多いです。しかし運動に関連して痛みが出現し、また前兆がない場合は要注意です。心配な場合は一度近所の内科などで心電図や心臓超音波検査など検査を受けると良いでしょう。
すぐに病院へ行くべき「心臓が痛い」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
心臓が痛くて息苦しい症状の場合は、循環器内科・救急科へ
このような症状の場合は狭心症や心筋梗塞、気胸や肺血栓塞栓症など危険な病気の可能性があります。息苦しさは寝ている状態より座っている状態で改善することもありますが、いずれにせよすぐに病院を受診して検査を受ける必要があります。可能なら心電図や心臓の超音波検査、胸部のレントゲン撮影などを受ける必要があり、循環器内科の受診が最も適切です。もし夜間の場合や近所にすぐ受診できる循環器内科がない場合は地域の救急当番の病院で大丈夫ですので、できるだけはやく病院を受診しましょう。
受診・予防の目安となる「心臓が痛い」のセルフチェック法
- ・息苦しい場合
この場合は上記のように危険な病気の兆候である可能性があります。すぐに病院を受診するようにしましょう。 - ・痛みが20分以上続く場合
痛みの持続時間が長いことは心筋梗塞の兆候である可能性があります。安静にしても改善せず、痛みが長く続くようならすぐに病院受診をした方が良いです。 - ・動悸症状がある場合
この場合は不整脈の可能性があります。自分で腕の脈拍などを触知できる場合は、1分間に何拍あるか数えてみてください。その時の脈拍が100回を超えた場合や、また脈拍のリズムが一定ではない場合は注意が必要です。そのような場合は不整脈の可能性がありますので、一度循環器内科を受診して相談してください。
「心臓が痛い」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「心臓が痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
狭心症
狭心症は、心臓を栄養する血管である冠動脈が狭くなることで心臓の筋肉が虚血状態になり胸の痛みがでている状態です。冠動脈が細くなる原因としては高血圧や糖尿病、高脂血症などで動脈硬化が進行することで発生します。また喫煙や肥満といった日々の生活習慣の乱れも発生します。症状は階段を登るなど心臓に負担をかけた時や、暖かい場所から急に寒い場所に出た時などに発生することが多いですが、それらとは関係なく発生する場合もあります。狭心症の場合は冠動脈の狭窄の程度や場所を心臓カテーテル検査や心臓MRI検査で調べ、その結果により薬物治療から心臓カテーテルによる治療、また時には手術で胸を開けて血管のバイパス術を受ける場合もあります。狭心症は循環器の先生が専門家ですので、可能なら循環器内科を受診することをおすすめします。
心筋梗塞
心筋梗塞は狭心症からさらに心臓の筋肉の虚血が進み、壊死がおきている状態です。放置するとどんどん心臓の筋肉が壊死するため、速やかに血流を改善する処置を受ける必要があります。多くの場合は心臓カテーテルによる血行再建を行い、血管の狭窄部位や程度によっては手術で血管のバイパス術を行います。心筋梗塞は心臓の虚血時間によって予後が大きく異なりますので、心筋梗塞を疑った場合は救急車などを使用し速やかに心臓カテーテル検査ができる病院に搬送する必要があります。
不整脈
通常、人間の脈拍は早くなったり遅くなったりしてもある程度一定の間隔で脈をうっています。しかし不整脈ではその感覚がバラバラになっています。よく「脈がとぶ」という表現をされる不整脈は期外収縮というものです。期外収縮は30歳を超えるとどんなひとでも多少でていますのであまり心配は要りません。しかし中には危険な不整脈もあり、具体的には心房細動や心房粗動、心室頻拍、房室ブロックや洞不全症候群が挙げられます。これらの危険な不整脈は脈がバラバラになる以外に脈が極端に速くなったり遅くなったり、まためまいや息切れなど他の症状が同時に出現します。診断には不整脈を心電図で捉える必要があるので、病院で心電図検査を受け、場合によっては循環器内科でホルター心電図という24時間連続で心電図を測定できる機械をつけ、検査を受ける必要があります。
大動脈解離
動脈硬化などで血管年齢が高くなると急な血圧の上昇に耐えきれなくなり、大動脈が裂ける(解離する)ことで発症します。解離した血管が原因で突然激しい痛みが生じ、解離が広がるにつれて痛みの場所も移動します。解離した場所によって各臓器への血管が閉塞し、脳梗塞や腎梗塞を併発します。また心臓まで解離が到達すると心筋梗塞や心タンポナーデと呼ばれる致死的な状態に陥ります。解離の場所や程度によっては血圧を下げる薬を飲んで保存的に治療できますが、多くの場合は緊急手術で大血管を人工血管に置換したり、血管内ステント術が必要となります。大動脈解離は超緊急疾患です。疑った場合は循環器内科や緊急手術に対応できる病院をすぐに受診する必要があります。
「心臓が痛い」ときの正しい対処法は?
まずは痛みの原因がわからないまま放置しないことが重要です。そのような場合は一度病院で検査を受けることをお勧めします。また市販されているような痛み止めは痛みの原因が筋肉や骨でない限り効果がないことが多く、むしろ痛みの原因が胃・十二指腸潰瘍の場合はロキソニンなどで痛みが増悪(悪化)する可能性があります。やはり自己判断せず一度医師の診察を受けることが重要だと考えます。
安静にしても痛みが良くならない、また痛み以外にも息切れや動悸などの症状がある場合も要注意です。そういった場合ははやめに病院を受診し検査をうけることをお勧めします。
「心臓が痛い」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「心臓が痛い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
心臓が痛いときはどうしたらいいですか?
弓場 智雄 医師
一度も病院を受診したことがなく、また定期的な検診なども受けていない場合は病院を受診し原因を調べる必要があります。また持病がある場合も速やかにかかりつけ医を受診し報告をしましょう。
左胸がズキッと痛くなることがあります。心臓が悪いのでしょうか?
弓場 智雄 医師
その可能性もありますが、動きに合わせて痛い場合は筋肉や骨などが原因のことが多いです。また心臓が原因でも痛みの場所は人により違う場合が多いです。痛みの場所だけでなく他の症状や痛みの出方にも注目してみてください。
たまに心臓が痛く締め付けられるのですが病院に行くべきですか?
弓場 智雄 医師
そのような痛み方は要注意ですので、一度病院を受診し相談してみてください。場合によっては狭心症などの可能性があります。
緊張すると心臓が痛くなるのですが、何かの病気でしょうか?
弓場 智雄 医師
ストレスが原因の痛みは胃・十二指腸潰瘍や不整脈といった可能性が高いです。最近胃カメラやバリウム検査を受けていない人は病院で検査を受けることをお勧めします。
まとめ
いかがだったでしょうか?今回は心臓が痛い場合について説明しましたが、そういった場合は危険な病気の兆候かもしれないとわかっていただけたなら嬉しく思います。もし原因がはっきりしない胸の痛みなら一度病院を受診して適宜検査を受けることをお勧めします。心臓が原因の場合は放置すると命に関わることも多いため、油断せずしっかり対応しましょう。
「心臓が痛い」で考えられる病気と特徴
「心臓が痛い」から医師が考えられる病気は14個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
呼吸器科の病気
一時的なもので痛みがすむ場合には様子をみても良いのですが、痛みが長く続くような場合には危険な(致命的な)病気による痛みである可能性も考えられます。もし原因がはっきりしない胸の痛みなら一度専門医療機関を受診して精査することをお勧めします。
「心臓が痛い」と関連のある症状
「心臓が痛い」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「心臓が痛い」の他にこれらの症状がある場合、「心筋梗塞」「狭心症」「大動脈解離」「帯状疱疹」「胃十二指腸潰瘍」「肋間神経痛」などの疾患の可能性が考えられます。
様子をみても改善しない場合は、早めに医療機関への受診を検討しましょう。
・急性冠症候群ガイドライン(日本循環器学会)