「卵巣がんの症状」はご存知ですか?原因・セルフチェック法も医師が解説!
卵巣がんの症状は?Medical DOC監修医が卵巣がんの症状・原因・セルフチェック法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
「卵巣がん」とは?
卵巣がんは、卵巣にできた悪性腫瘍です。
卵巣は、表面の細胞である上皮細胞(じょうひさいぼう)、卵子のもとになる胚細胞(はいさいぼう)、性ホルモンを産生する性索(せいさく)細胞、その他にも間質(かんしつ)細胞などのさまざまな細胞からできています。それぞれの細胞が腫瘍化するのですが、卵巣がんの中で、上皮細胞が腫瘍化した上皮性腫瘍が約90%を占めており、最多となっています。
卵巣がんが進行すると、腹部の臓器や腹壁の内側などを包む腹膜などにも広がり、これを腹膜播種(はしゅ)といいます。播種した病変は、大腸、小腸、横隔膜、脾臓などに浸潤(しんじゅん)していきます。また、卵巣がんは、腹部の大血管の周囲にある後腹膜(こうふくまく)などへのリンパ節転移もみられます。その他、肺や肝臓、脳や骨などの臓器に転移することもあります(遠隔転移)。
卵巣がんの好発年齢は、2019年の年齢階級別罹患率では、50代以降からの中年や高齢者の女性に多くみられています。
卵巣がんの治療は、可能であれば、腫瘍を取り除くための手術が行われます。できる限りの病変を摘出し、どのような種類のがんであるかを調べる目的も兼ねています。また、薬物療法も併用することがあります。
卵巣がんが再発したり、骨などに転移したりして痛みの症状等がある場合には放射線治療も用いられます。
卵巣がんの代表的な症状
卵巣がんの多くは上皮性腫瘍です。そこで、この記事では上皮性の卵巣がんの代表的な症状を中心に解説していきます。
お腹が大きく膨れる
卵巣がんそのものが大きくなったり、腹膜に播種したりすることで腹水がたまり、お腹が膨れてくるという症状があらわれます。
特に身体の他の部位は太くなっていないのに、お腹が前に張り出すような膨らみ方をしてきた場合には、卵巣がんの他にも子宮筋腫などの他の婦人科系の病気や、肝臓が悪くなり腹水がたまっている可能性もありますので、婦人科や内科を受診するようにしましょう。
下腹部やわき腹のしこり
卵巣がんが大きくなると、横になって下腹部やわき腹を触ったときに、しこりを感じることがあります。 痛みを伴うこともあれば、そうでない場合もあります。
いずれにしても、婦人科を受診して、超音波検査などで婦人科系の疾患がないかどうかをチェックすることが大切です。
食欲低下
卵巣がんが腹膜転移すると、胃や小腸、大腸などの消化管の動きが妨げられる場合もあります。また、腹水がたまり、腹部の膨満感が生じることもあります。こうした原因から、食欲がなくなる症状が出現する可能性があります。
食欲がなくなることに加えて、お腹が膨れてくるなどの症状がある場合には、早めに内科や婦人科を受診するようにしましょう。
頻尿や便秘、足のむくみ
卵巣がんやリンパ節転移の病変が大きくなると、膀胱や直腸を直接圧迫し、頻尿や便秘につながります。
また、がんが大きくなるとリンパ流路が障害により生じたりすることで足のむくみが出現することもあります。
下腹部の強い痛み
卵巣がんが破裂したり、卵巣がんがお腹の中でねじれる「茎捻転(けいねんてん)」を起こしたりすると突然の強い下腹部痛が出現することもあります。
こうした強い痛みが現れた場合には、早急に医療機関を受診するようにしましょう。
息苦しさ
卵巣がんが肺に転移すると、胸水や呼吸困難などの症状が出現することがあります。
肺や心臓などの疾患の可能性もあるため、早めに内科を受診するようにしましょう。
卵巣がんの原因
卵巣がんの原因は、子宮頸がんや子宮体がんとは異なり、はっきりとした原因はわかっていない部分もありますが、以下に卵巣がんのリスク因子について解説していきます。
乳がんまたは卵巣がんの家族歴がある
卵巣がんの 5%程度は遺伝が原因だとわかっています。遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)という病気です。これは、主に乳がんの原因遺伝⼦(BRCA)に異常が生じていることで発生します。卵巣がんは通常では中高年の女性に好発しますが、それよりも若い年齢で上⽪性がんなどが発生します。
親や姉妹に、若い時期に乳がんや卵巣がんになった⼈がいる場合には、遺伝性の病気のカウンセラーなどがいる医療機関を受診し、検診を適切に受けるようにするなどの対応をとると良いでしょう。
⼦宮内膜症によるチョコレート嚢胞がある
卵巣には、良性の腫瘍ができる場合があります。例えば、子宮内膜症により卵巣内にチョコレートのような古い出血がたまると、卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)となります。⽇本において⼦宮内膜症による卵巣チョコレート嚢胞ががん化することが明らかになっています。
もしも卵巣嚢腫がある場合には、⼩さければ低⽤量ピルなどの薬物療法を⾏って、経過を観察します。50歳前後の閉経周辺期以降や、若くても 10cm 以上のサイズが大きいものがある場合は、がん化を予防するために手術によって摘出を考えたほうがいいとされています。
肥満・喫煙
肥満は卵巣がんによる死亡リスクを増加させるという報告があります。また、喫煙は一部の卵巣がんのリスクを高めるという報告もあります。
このように、生活習慣も卵巣がんの発生に関与しています。
妊娠経験がない
卵巣がんは、排卵回数が多いほどリスクが高まるという報告もあります。途切れのない排卵は卵巣上皮に損傷を与え、卵巣がんの発生率を高める可能性があるのです。そのため、妊娠経験がなかったり、不妊であったりして妊娠せずに過ごす期間が長くなり、生涯の月経回数が多くなると、その分排卵回数も増えるために卵巣がんのリスクが増すと考えられます。
すぐに病院へ行くべき「卵巣がんの症状」
ここまでは卵巣がんの症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
お腹が膨れてきた場合や下腹部に強い痛みが出た場合は、婦人科へ
卵巣がんは早期ではなかなか症状がなく、進行してから気づくこともあります。
腹水がたまりお腹が膨らむという症状は、卵巣がんの他にも、肝硬変や肝不全などでも起こりえます。
女性の方で、肝炎ウイルスへの感染など肝機能低下を疑うものがないにも関わらず、お腹だけが膨れてきた場合には、婦人科を受診するようにしましょう。
一方、卵巣がんがねじれてしまう「茎捻転(けいねんてん)」が起こると、突然激しい腹痛が起こることもあります。チョコレート嚢腫などでもこの茎捻転は起こり得ますが、いずれにしても早急に婦人科や消化器内科を受診するようにしましょう。
受診・予防の目安となる「卵巣がん」のセルフチェック法
- ・お腹周りのサイズが増える場合
- ・下腹部にしこりがある場合
- ・下腹部に痛みを感じる場合
卵巣がんを早期発見するには?
卵巣がんについては、子宮頸がんなどのような確立されたがん検診は現時点ではありません。
一方で、遺伝性乳がん卵巣がんと診断された方は、30~35歳から、もしくは家族で最初に卵巣がんだと診断された方ががんを発症した年齢の5~10歳前から、婦人科医師に相談して、半年に1回の頻度で経膣超音波画像検査や腫瘍マーカー検査を受けるということが提案されています。
生活習慣については、肥満や喫煙が卵巣がんのリスク因子になる可能性があるため、適切なカロリー摂取と適度な運動を行い、肥満にならないように気をつけましょう。また、喫煙は卵巣がん以外にも肺がんや咽頭・喉頭がん、膀胱がんなどのリスク因子ともなりますので、禁煙をおすすめします。
「卵巣がんの症状」についてよくある質問
ここまで卵巣がんの症状を紹介しました。ここでは「卵巣がんの症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
卵巣がんの初期症状について教えて下さい。
木村 香菜(医師)
卵巣がんの中で最も多い上皮性腫瘍の場合、初期の段階ではほとんど症状がないことが多いです。進行すると、腹水や便秘・頻尿、食欲不振などが現れることがあります。
卵巣がんを疑うおりものの特徴はありますか?
木村 香菜(医師)
卵巣がんでは、子宮頸がんのようにおりものが出るといった症状は少なく、特徴的なおりものはありません。
卵巣がんの末期症状の余命はどれくらいでしょうか?
木村 香菜(医師)
卵巣がん末期の状態とは、卵巣がんが肺や肝臓などの他の臓器にも転移した状態と考えられます。末期症状としては腹水や胸水がたまることによる腹部膨満や呼吸困難感などがあります。遠隔転移がある場合はステージIVの卵巣がんであり、その5年生存率は27.1%です。逆算すると、ステージIVの卵巣がんの場合、余命が5年以内の方が全体の72.9%であると言えます。
編集部まとめ
卵巣がんは初期段階では無症状のことも多く、お腹が膨らむなどの症状が出た場合にはすでに進行している場合があります。
今回の記事でご紹介したように、家族に卵巣がんや乳がんの方がいる場合には、注意しましょう。また、婦人科系の病気をお持ちの場合にも、定期的に医療機関を受診するようにしましょう。
「卵巣がんの症状」と関連する病気
「卵巣がんの症状」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器科の病気
卵巣がんの症状として現れる腹水や胸水といった症状や、腹痛などの症状は、上記の病気でも出現する可能性があります。
「卵巣がんの症状」と関連する症状
「卵巣がんの症状」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
卵巣がんでは上記のような症状が現れることがあります。強い腹痛が出現した場合やお腹だけ大きくなってくるようなことがあれば、早めに内科や婦人科を受診するようにしましょう。