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「心不全」とは?症状や原因についても詳しく解説!

 更新日:2023/03/27
「心不全」とは?症状や原因についても詳しく解説!

体中に血液を循環させる心臓は、人体にとって欠かせない重要な臓器です。

その心臓の機能がさまざまな病気によって阻害されると、生命にかかわる危険をともなうことは言うまでもありません。

大切な心臓を長く健康に守っていくために、死亡原因のトップクラスに名を連ねる「心不全」について、日ごろから見識を深めておくことが大切です。

この記事では、心不全の症状や特徴・治療方法・改善方法などについて、詳しく解説いたします。ぜひご参考になさってください。

工藤 孝文 医師

監修医師
工藤 孝文(医師)

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みやま市工藤内科 院長・糖尿病内科医・漢方医・統合医療医。福岡大学医学部を卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。現在は、福岡県みやま市の工藤内科にて、糖尿病内科・ダイエット外来・漢方治療を専門に、地域診療を行っている。NHK「ガッテン!」「あさイチ」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビ出演多数。著書は50冊以上におよび、Amazonベストセラー多数。YouTube「工藤孝文のかかりつけ医チャンネル」が現在人気を集めている。 
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。

心不全とは?

ハートを持つ男性医師

心不全はどんな病気ですか?

  • 心不全とは病名ではなく、さまざまな他の病気によって心臓の機能が阻害された「状態」のことを表します。
  • 他の病気とは心臓そのものの疾患をはじめ、高血圧・糖尿病・脂質異常症のような生活習慣病などが代表的な症例です。また、患者様がもともと持っている持病や、急に発症した疾患・気づかなかった疾患などの場合もあります。
  • 心臓は体中に血液をポンプのように送る役割を担っているため、それらの病気が原因で機能が失われると体に不調が表れます。例えば、息切れや仰向けに寝ることができなくなるほどの息苦しさ・胸の痛み・足のスネや甲のむくみ・咳・血圧低下・顔面蒼白など、表れる症状はさまざまです。
  • 心不全には、これらの症状が急に表れて治療の緊急性を要する「急性心不全」と、慢性的に良い悪いを繰り返す「慢性心不全」の2種類があります。

心不全になる原因は何ですか?

  • 原因はさまざまですが、まずは患者様がもともとお持ちの持病(虚血性心筋症・狭心症・心筋症・心筋炎・心筋梗塞・弁膜症・生活習慣病など)が重篤化したケースが考えられます。
  • 中でも、心臓の動きが悪くなる「虚血性心疾患」・高血圧により心臓に負担がかかる「高血圧性心疾患」・心臓の血液が逆流するのを防ぐ弁膜が狭窄・閉鎖を起こす「弁膜症」は、心不全の3大原因といわれています。
  • また、心臓に関する病気のほかにも、高血圧や糖尿病・脂質異常症などに代表される、生活習慣病は別名サイレントキラーと呼ばれるほど恐れるべき現代病です。普段の生活の中で気づかぬうちに進行して心臓や血管などにダメージを与え、やがては心不全の原因になることもあります。

心不全にみられる前兆はありますか?

  • 急性心不全の場合は心臓の働きが突然悪くなる、つまり症状が急激に現れるため、前兆はないといわざるを得ません。突然、激しい呼吸困難や血圧の低下などによりショック状態に陥る場合あり、適切な処置を早くしないと命にかかわることもあります。
  • また、慢性心不全の場合は症状が緩やかに進むため、心臓の機能がうまく働かなくなっても気が付かないケースもあるほどで、こちらもこれといった前兆はありません。
  • 大したこともしていないのに息切れ・息苦しさ・疲労感・倦怠感などを感じる、または、体のむくみや体重の急激な増加があったら気を付けましょう。

前兆はないのですね。

  • 心不全の直接的な前兆ははっきりと表れないものの、注意しておくべき症状のポイントはあります。例えば、心臓のポンプ機能がうまく働かず血液が体に行きわたらなくなると、息切れや息苦しさ、疲労感などを感じることがあります。このような症状を慢性的に感じていると、年齢によっては「老化のせい」と見過ごされてしまうことがあるため注意が必要です。
  • また、血液が腎臓などの臓器に行きわたらなくなると、尿が作れなくなって体に水分が溜まります。そのため足のスネや甲がむくみ、場合によっては1週間ほどの短期間で体重が2~3㎏増えてしまうこともあるのです。さらに、水分が心臓や肺に溜まってしまうと呼吸が苦しくなり咳が出る・まっすぐ仰向けになって眠れない状態(起座呼吸)などの症状が表れることがあります。
  • 今までは普通に出来ていた行動が、あるときから体調不良を感じて出来なくなってしまった・これまでと比べてどこか調子が悪い・すぐに疲れてしまうなどの症状が表れたら心不全を疑ってみましょう。

心不全の種類と症状の違い

クエスチョンマークを持つ女性

左心不全と右心不全で症状が異なると聞きますが、どのような違いがあるのでしょうか?

  • 左心不全は、心臓から血液を体に送り出すことができなくなり、血液が滞ってしまう「うっ血」が起こります。すると、肺うっ血や肺高血圧・肺水腫・心筋梗塞・大鉱脈弁疾患などが引き起こされ、呼吸困難・起座呼吸(横になって呼吸できない)・喀血(口から血を吐く)などが表れる代表的な症状です。
  • 一方、右心不全の場合は全身から心臓に向かって血液が戻れなくなり、体に水が溜まっていく状態が起こります。すると、特に足のスネや甲がむくむ症状や体に血液がつかえてうっ血し、肺腫大(肺が腫れる)・腹水(お腹に水が溜まる)などが引き起こされ食欲低下の症状がみられることがあります。

急性心不全と慢性心不全の違いを教えて下さい。

  • 急性心不全は重度の症状が急激に表れて治療の緊急性を伴い、慢性心不全は軽度な症状を慢性的に繰り返すという違いがあります。
  • 急性心不全の場合は、呼吸困難や息切れ・胸の痛み・咳や痰(ピンク色の泡状)・チアノーゼ(唇が紫になる)・冷や汗・不整脈・顔面蒼白などが急激に起こり、すぐに処置を行わないと命の危険を伴う深刻な状態です。
  • 一方、慢性心不全の場合は、緊急性を感じられない体調不良程度の動悸・息切れ・脱力感などの症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら慢性的に起こるという特徴があります。

心不全の治療とは

問診をするスクラブを着た若い男性の医療従事者

心不全は完治するものですか?

  • 心疾患や生活習慣病などによって引き起こされた心不全は、残念ながら完治するものではありません。症状を抑えつつうまく付き合っていく必要があります。
  • 疾患による心不全の場合は、息切れやむくみ・血栓・不整脈を防ぐなど、それぞれの症状を抑える薬を継続的に服用して悪化を防ぎます。
  • また、生活習慣病が心不全に影響している場合は、食事・運動・過度な飲酒を避ける・禁煙などに気をつけながら生活改善を目指していくことが大切です。

検査ではどんな検査をするのですか?

  • 検査は、心臓の形や大きさ・機能・不調の原因を調べるための胸部レントゲン検査・心電図・心エコー(心臓超音波検査)、心臓の負担を調べるための血液検査などを行います。
  • また、心臓や体に細菌が侵入する感染症が疑われる場合は、尿検査や細菌の培養検査などを行うこともあります。
  • 心臓の働きを調べるさまざまな検査を行って総合的に判断することで、悪化を防ぐ治療方針を導き出すのです。

治療方法は疾患や重度によって異なるのでしょうか?

  • 治療方法は心不全の原因となっている疾患が軽度であれば服薬治療、緊急を要する重度のものであれば手術といったように異なります。
  • 手術の場合は、心臓の血流を確保するカテーテル手術や心臓の働きを改善するための開胸手術などがあり、それでも改善が見込めない場合は補助人工心臓や心臓移植が必要となる場合もあります。

治療中や治療後に気を付けることはありますか?

  • 心臓の機能がうまく働かなくなる心不全は完治できるものではなく、悪化させないように治療や経過観察を続けながらうまく付き合っていく必要があります。
  • 治療をすすめていく中でだんだん調子が良くなって「もう治った」と思い込み、通院や服薬・生活改善などをやめてしまうとある日突然、急性心不全に陥ることもあるため大変危険です。
  • 医師の治療方針をよく聞いて、服薬・通院の継続や生活習慣病の改善に努めながら、症状の悪化を防ぐことが重要です。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

  • 心不全は常に死亡原因のトップクラスに名を連ねるほど怖いものです。
  • 疲れや老化のせいと見過ごしてしまいがちな些細な症状が、心不全のサインだったということもあるため、体の調子がいつもと違うと感じたらすぐに医療機関で受診してください。
  • 心不全の予防には、定期的な健康診断・健康的な生活習慣・ストレス緩和・休眠・休息などを心がけましょう。

編集部まとめ

車椅子に乗る患者と医者
心臓の血流が阻害される心不全には、すぐに処置をしないと命にかかわる「急性心不全」と慢性的に不調を感じる「慢性心不全」の2種類があります。

症状を悪化させないためには、原因となる病気を早期につきとめ、治療・経過観察を継続していくことが大切です。

「少し疲れが溜まったかな」「年齢のせいかな」と、見過ごしてしまいがちな息切れや疲れやすさ、原因不明のむくみ・咳などが心不全のサインとなっていることもあります。

ご自身で気を付けていくことはもちろん、ご家族の些細な変化にも注目して、予防・健康診断・早期発見・治療・服薬・生活習慣の改善などを心がけましょう。

この記事の監修医師