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歯周病で心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす可能性。最悪死亡リスクも

 更新日:2023/03/27
歯周病で心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす可能性。最悪死亡リスクも

国民病ともいわれる「歯周病」。そのまま放置しておくと歯が抜けることもある怖い病気ですが、また場合によっては、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすこともあるのをご存知でしょうか。今回は、歯周病のリスクや対策について、伊東歯科医院の伊東昌俊先生に伺いました。

伊東 昌俊先生

監修歯科医師
伊東 昌俊(伊東歯科医院 院長)

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1981年神奈川歯科大学卒業。顕心会大塚歯科医院にて副院長として勤務したのち、1985年、横浜市神奈川区に「伊東歯科医院」を開院。「歯科医師、歯科衛生士・助手、患者の三者が互いに礼を尽くし、敬意を払うことが最善の治療に繋がる」と考え、開院以来約30年に渡って地域医療に貢献している。歯学博士。日本歯科医療管理学会常務理事。ほか、神奈川県の高校や保育園で校医・園医を務める。

「歯周病」の症状と原因は?

「歯周病」の症状と原因は?

編集部編集部

そもそも、歯周病とはどのようなものですか?

伊東 昌俊先生伊東先生

歯と歯ぐき(歯肉)の間に繁殖した菌への感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯ぐきや骨などが破壊されてしまう病気を歯周病といいます。日本人の30歳以上の方では、約80%がかかっていると言われています。

編集部編集部

なぜ、口内に菌が発生してしまうのですか?

伊東 昌俊先生伊東先生

これは人によって、もともと持っている人もいれば、パートナーなどから病原性細菌をもらってしまう人もいます。その菌の種類は約300種にもおよび、通常であれば、それらの菌は悪さをすることはありません。しかし歯と歯肉の境目(歯周ポケット)の清掃が十分でないと、そこに多くの菌が繁殖し、歯肉の周辺が炎症を起こしてしまいます。これが、歯周病の始まりです。

編集部編集部

その後、どのように進行していくのでしょう?

伊東 昌俊先生伊東先生

歯周病が進むと、歯周ポケットはますます深くなります。すると、そこへプラークに含まれる毒性の高い菌が入り、歯周組織が壊されていくという悪循環に陥ってしまいます。したがって、できるだけ早期にこの歯周ポケット内のプラークや歯石を取り除くことが大切なのです。

編集部編集部

歯周ポケット内のプラークを除去するには、どうしたらいいのですか?

伊東 昌俊先生伊東先生

残念ながら、日常のブラッシングだけでは、このポケットの中のプラークは取りきれません。そのため、定期的にかかりつけの歯科医院で、歯周病のチェックをし、歯周ポケットの深さを測ってもらうことをお勧めします。一般に、4mm以上の深さになると、歯周ポケットとしてはトラブルを抱える可能性が高くなります。また、歯科医院で歯周ポケットの深さを測ってもらい、4mm以下であっても、クリーニングをしてもらいましょう。

歯周病菌が心筋梗塞や脳梗塞に?

歯周病菌が心筋梗塞や脳梗塞に?

編集部編集部

歯周病を放置すると、どうなるのですか?

伊東 昌俊先生伊東先生

歯と歯肉の境目をきれいにせずに放置すると、歯肉の辺縁が炎症を起こして赤くなったり、腫れたりします。さらに進行すると、歯肉・歯の根っこ・骨までもが感染し、歯ぐきから膿がでたり、歯がグラグラしたりします。そして最悪の場合は、歯を失ってしまうのです。

編集部編集部

歯周病で歯を失うこともあるのですね。そのほか、どのようなリスクがありますか?

伊東 昌俊先生伊東先生

歯周病は口の中だけの病気、と軽く考えることは危険です。最近の研究により、歯周病菌や菌の出す毒素が心臓に運ばれたり、肺に入ったりすることが原因で、歯周病が全身疾患を引き起こす恐れがあることがわかっています。

編集部編集部

全身疾患とは、具体的にどのような病気ですか?

伊東 昌俊先生伊東先生

歯周病菌が血管の動脈硬化を引き起こし、その結果、心筋梗塞や脳梗塞を招くことがあります。動脈硬化とは、動脈の血管が弾力性を失って硬くなった状態のことです。血管の内側に粥腫(じゅくしゅ)というふくらみができたり、血栓が生じたりして血管が詰まりやすくなります。動脈硬化を引き起こす原因はさまざまで、動脈の老化、食生活やストレスなどの影響、高血圧などが挙げられますが、近年、歯周病菌も動脈硬化を引き起こす危険因子であることがわかってきました。歯周病菌が血管に付着すると炎症が起こり、その炎症跡が悪化して血管をつまらせてしまうのです。

編集部編集部

なるほど。歯周病菌が血管を詰まらせ、その結果、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすのですね。

伊東 昌俊先生伊東先生

そうです。そのほかにも、歯周病は糖尿病や早産・低体重児出産、肥満などの原因にもなります。つまり、歯周病は単に口腔内の問題であるだけでなく、全身の健康にとって重大なリスクになりかねない、ということ。この怖さを、忘れないでほしいと思います。

歯周病は、重症化させないことが大事

歯周病は、重症化させないことが大事

編集部編集部

具体的に、歯周病の治療はどのように行われるのですか?

伊東 昌俊先生伊東先生

まずは検査を行い、現在の歯や歯ぐきの状態や何が歯周病を悪化させているかを分析し、治療方針を考えます。その後、これ以上プラークをためないように、歯磨きの練習からスタート。正しく歯磨きができるようになれば、歯ぐきの炎症が減少し、ぶよぶよして出血しやすい歯ぐきも引き締まります。そうすると歯ぐきの中の歯石が見えやすくなり、歯磨きによる歯石除去が上手に行えるようになります。さらに歯科医院で機械を使って歯石を除去すると、歯石の表面や内部の菌が減ります。軽度であれば、これで大丈夫です。

編集部編集部

それでも治らない重症の場合は、どのような治療が考えられますか?

伊東 昌俊先生伊東先生

深い歯周ポケットには歯ブラシが届きませんので、ますますプラークが溜まってしまう危険があります。その場合は外科治療で、ポケットの深さを浅くする手術を行うこともあります。また、部分的に失われた骨に特殊な材料を用いる再生療法という手術を行うこともあります。このように、それぞれの病態にあった方法を選択します。

編集部編集部

治療が完了したあとは、どのようにメンテナンスをすればよいのですか?

伊東 昌俊先生伊東先生

歯周病を再発させず、健康な状態を維持していくために、3~6か月ごとに、かかりつけの歯科医院で定期検診を受けるようにしてください。また、プラークがつきにくい環境にするため、適合の悪い修復物がある場合は、除去した方がよいでしょう。歯に異常な噛み合わせがあると力がかかって、歯槽骨がダメージを受けやすくなるので、噛み合わせの調整も必要です。このように、口腔内の衛生を保ちながら、歯のトラブルは速やかに改善することを意識しましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

伊東 昌俊先生伊東先生

誤解されがちなのですが、歯周病は、一生懸命歯磨きをしても完全に予防できるものではありません。そもそも噛み合わせが悪ければ、歯にダメージが加わり、歯周病を発症することもあるのです。実際、当院でも歯周病を治すために歯列矯正を行う患者様もいらっしゃいます。噛み合わせが悪い場合は、歯周病を引き起こすリスクとなりますから、もし気になる場合は、歯科医に相談してみましょう。

編集部まとめ

歯周病は治療だけでなく、予防が肝心。「歯周病は口のなかの病気であるだけでなく、全身にリスクをもたらす可能性がある」ということを自覚し、定期的に歯科医院でクリーニングや定期検診を行いましょう。

医院情報

伊東歯科医院

伊東歯科医院
所在地 〒221-0046 神奈川県横浜市神奈川区神奈川本町2-10
アクセス JR横浜線「東神奈川駅」徒歩8分
京浜急行線「仲木戸駅」徒歩7分
診療科目 歯科

この記事の監修歯科医師