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新型コロナ経験者は「心血管疾患」を発症しやすくなる “ワクチン接種”で軽減効果も確認

 更新日:2025/06/24

韓国・慶熙大学の研究員らは、新型コロナウイルス感染後の心血管疾患リスクに関する研究結果を発表しました。研究では、新型コロナウイルス感染が心血管疾患の発生リスクを長期的に増加させること、特に感染後1〜6カ月の間にリスクが最も高くなること、さらにワクチン接種がリスク軽減に有効であることなどが示されました。この内容について本多医師に伺いました。

本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

研究グループが発表した内容とは?

韓国の慶熙大学の研究員らが発表した内容を教えてください。

本多 洋介 医師本多先生

今回紹介するのは、韓国と日本の保健医療ビッグデータを用いた二国間の大規模コホート研究で、新型コロナウイルスの感染と心血管疾患リスクの関連を明らかにすることを目的として実施されました。韓国では約796万人、日本では約126万人が解析対象となりました。

研究の結果、新型コロナウイルス感染者は非感染者と比較して、心血管疾患のリスクが約62%高いことが明らかになりました。特に虚血性心疾患、心不全、脳血管障害、不整脈などのリスクが有意に上昇していました。感染後1〜6カ月が最もリスクが高く、その後も18カ月にわたり持続する傾向がみられました。

その一方、ワクチン接種はこれらのリスクを低減すると示唆しており、重症感染ほどリスクが高く、ワクチン接種の有無が予後に影響を与えていました。ワクチンを接種した人では、未接種または接種が不完全な人と比べて心血管イベントのリスクが28%低下し、追加接種を受けた人ではさらに32%のリスク低下がみられました。また、心血管疾患の絶対リスクは依然として低く、例えば脳卒中の発生率は感染者0.24%、非感染者0.13%でした。相対的にはリスクが高くなるものの、実際の発症率は全体としては低い値であることにも留意が必要です。

こうした結果は、新型コロナウイルス感染後の健康管理において、長期的な心血管影響への警戒を怠らずに対応する必要がある一方で、過度な不安を煽らず、リスクを正しく理解する視点も重要であることを示しています。なお、観察研究であるため、因果関係については慎重な解釈が求められます。

新型コロナウイルスは日本でも再流行する?

アジアやアメリカで新型コロナウイルスの感染者が目立ち始めましたが、日本でも再流行する可能性はあるのでしょうか?

本多 洋介 医師本多先生

現在、アジア地域を中心に新型コロナウイルスの活動が再び活発化していることが、WHO(世界保健機関)の監視データから明らかになっています。2025年5月11日時点では、報告のあった73カ国における検査陽性率が11%に達しており、これは過去のピークとほぼ同水準です。

日本国内では現在、欧米の一部地域のような急激な感染拡大は報告されていませんが、WHOのセンチネル監視で日本が含まれる西太平洋地域は感染上昇を牽引しているとされていることから、再流行のリスクは十分にあると考えられます。さらに、「NB.1.8.1」などの新たな変異株が台頭しており、今後の感染動向にも影響を与える可能性があります。

したがって、日本でも今後、感染者数の緩やかな増加や局地的な流行が再び起こる可能性は否定できませんが、現時点で過度に心配する必要はないでしょう。引き続き、ワクチン接種の継続や体調管理、必要に応じたマスク着用・検査の活用など、基本的な感染対策が重要です。

研究内容への受け止めは?

韓国の慶熙大学の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。

本多 洋介 医師本多先生

今回の研究では、新型コロナウイルス感染後に心血管疾患のリスクが一時的に上昇する可能性が示されましたが、絶対的なリスクは低く、過度に心配する必要はないでしょう。特にワクチン接種によりリスクが軽減されることも分かっており、これまで通りの基本的な感染対策と体調管理を続けることが重要です。心血管疾患の既往がある人、リスクが高い人は再度ワクチン接種を考えましょう。国内での再流行の可能性もありますが、冷静に対応し、発熱や喉の痛み、咳症状が出現した際には必要に応じて医療機関に相談しましょう。

編集部まとめ

新型コロナウイルス感染後、心疾患などのリスクが最大1.6倍に高まる可能性があることが、韓国と日本の大規模データを用いた研究で示されました。大切なのは、予防を強化し、感染後も体調に気を配る生活習慣を続けること。日々の体調変化に敏感になることが、健康を守る第一歩です。

この記事の監修医師