新型コロナ“再流行”の危機迫る…変異株「LP.8.1」急増中、WHO「ワクチン接種の継続を」

新型コロナウイルスに再び拡大の兆しが見えはじめています。WHO(世界保健機関)は、新型コロナウイルスの遺伝的・抗原的進化や現在承認されているワクチンの効果、そして変異株に対する免疫反応に関するデータを検討しました。従来の株よりも免疫をすり抜けやすいとされる変異株「LP.8.1」は、日本でも流行拡大の可能性があるとして注目されています。この内容について本多医師に伺いました。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
WHOが発表した新型コロナウイルスに関する内容とは?
WHOが発表した内容を教えてください。
2025年5月15日、WHOは新型コロナウイルスワクチンの抗原組成に関する声明を発表しました。新型コロナウイルスは依然として世界中で流行しており、特に高齢者や基礎疾患を持つ人の重症化リスクがあります。2025年5月現在で流行しているウイルスの多くはJN.1系統に由来しており、新たな変異株「LP.8.1」の割合も増加しています。
これを受けて、WHO技術諮問グループTAG-CO-VACは「ワクチン製造業者に対して、JN.1またはKP.2を抗原とする一価ワクチンの継続使用を推奨し、LP.8.1は適切な代替候補である」としています。これらのワクチンは、流行中の変異株に対して広範かつ強力な免疫応答を誘導しており、感染や重症化を防ぐ効果が期待されています。また、TAG-CO-VACは「各国において新しいワクチンの入手を待たず、接種を継続することが重要だ」と強調しています。今後も変異株の動向を注視しながら、必要に応じて半年ごとにワクチン組成の見直しをおこなう予定です。
LP.8.1とは?
新たな変異株LP.8.1の特徴を教えてください。日本でもLP.8.1が流行する危険があるのでしょうか?
LP.8.1は、現在流行中の新型コロナウイルス変異株の1つで、JN.1系統から派生した監視対象変異株(VUM)です。スパイクタンパク質の抗原的特徴がほかのJN.1由来株と似ており、抗体による中和反応も密接に関連しているとされています。WHOの分析によると、LP.8.1に対するワクチンの免疫反応は、JN.1やKP.2などと比べてやや低いものの、一定の交差反応性があることを確認しています。
さらに、東京大学の研究員らは、LP.8.1は免疫からの逃避能力が高いことを明らかにしました。ワクチンや感染歴のある人でも再感染の可能性が示唆されています。GISAIDに提出された配列データでは、LP.8.1の割合が増加傾向にあり、日本でも今後の流行拡大が懸念されています。
WHOが発表した新型コロナウイルスに関する内容への受け止めは?
WHOが発表した内容への受け止めを教えてください。
今回の声明は、現在も新型コロナウイルスが世界的に流行している現状を受けての重要なメッセージです。私たち内科医としても、日々の診療の中で体調を崩される高齢の方や持病を持つ人が、感染症に対して不安を抱えていらっしゃることを実感しています。
現在、流行しているウイルスの多くはJN.1系統に由来し、新たにLP.8.1という変異株の割合も増えてきています。これに対して、WHOは「既存のワクチンのうちJN.1またはKP.2を抗原とする一価ワクチンの継続使用を推奨し、LP.8.1も有望な候補である」と述べています。これは、現在のワクチンでも十分な予防効果が期待できるという前向きな見解であり、私たち医療者にとっても安心材料の1つです。
また、「新しいワクチンの登場を待たずに、接種を継続することが重要」との提言は、日常の生活を守るうえでも非常に大切なポイントです。特にご高齢者や持病を持つ人は、ワクチンによって感染や重症化のリスクを減らすことができます。私たちは、これまでどおり身近な予防手段としてのワクチン接種を、無理のない範囲でご案内していくことが大切だと考えています。
今後も変異株の動向に応じて、半年ごとにワクチンの見直しがおこなわれるとのことで、状況は流動的ではありますが、あまり不安を感じすぎず、正確な情報をもとに落ち着いて対応していくことが何より重要です。日常を守るために、できることを一つひとつ重ねていきましょう。
編集部まとめ
WHOは、新型コロナウイルスの変異株LP.8.1について、今後の流行に注意が必要だとしています。今後も新たな変異株が現れる可能性があるため、日常生活の中でも手洗い・換気など基本的な感染対策を続けて、しっかり備えていきましょう。






