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【副反応見極めのため】アストラゼネカ社製のワクチン接種を当面見送り

 更新日:2023/03/27

アストラゼネカ社製の新型コロナウイルスワクチンが国内での使用を承認された一方で、現場での接種は当面見送られることになりました。今回は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の現状について中島先生に詳しくお伺いします。

中島 由美 医師

監修医師
中島 由美 医師

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金沢医科大学医学部卒業後、同大学病院にて小児科・内科として研修を積む。その後は複数の病院で内科医や皮膚科医として勤務。2018年より福岡市中央区に「国を超えた新しい形の医療を提供」をコンセプトに、クリスタル医科歯科クリニックを歯科医師である夫と開院。

アストラゼネカ社製のワクチン接種が見送られた理由は?

アストラゼネカ社製のワクチンが見送られた理由について、詳しく教えてください。

中島 由美 医師中島先生

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構の資料によると、ファイザー社製の発症予防効果は95%、モデルナ社製が94%に対して、アストラゼネカ社製は70%と見劣りします。しかし、インフルエンザワクチンの予防率50~60%より高いことや、保管が容易で国内生産も見込めるため、専門家は「非常に良いワクチン」と評価していました。

問題となったのは、欧州などで報告がある血小板の減少を伴う血栓症の副反応です。英国では接種した約2020万人のうち79人が発症し、19人が死亡しています。このような背景から、40歳未満への接種を推奨していません。ドイツやフランスでも年齢制限を設け、北欧の一部は使用を停止しています。

発症割合が10万人に1人であるため、欧州の規制当局は「非常に稀な副反応」と評価しています。しかし、感染が抑制された地域では、60歳未満の死者を防ぐ効果を血栓症の発症リスクが上回るとの分析を示しているのも事実です。

このような現状から、若年層にリスクがある血栓症の副反応の影響を慎重に見極める必要があるため、アストラゼネカ社製のワクチンが見送られました。

アストラゼネカ社製ワクチンが接種できないことによる影響は?

アストラゼネカ社製のワクチンが接種見送りになったことで、接種計画にどのような影響があるのかを詳しく教えてください。

中島 由美 医師中島先生

政府の接種計画への影響は大きく出ないことでしょう。

理由は、ファイザー社製2500万人分の追加供給が決まり、従来の7200万人分とモデルナ社製の2500万人分を合わせ、16歳以上の接種対象である約1億1000万人分を上回る量の確保のめどが立っているからです。厚生労働省関係者も「アストラゼネカ社製を急いで使わなければいけない理由がなくなった」と打ち明けています。

一方、21日に開かれた厚労省の分科会では専門家が、「血栓症の副反応について、現時点では判断できる根拠が十分整っていない」「ファイザー社製とモデルナ社製のワクチンに血栓症以外の問題が起きる可能性もある」などの指摘もしています。このようにアストラゼネカ社製のワクチンを排除するべきではないとの意見もあるので、安全性が確認されたら、接種が再開する可能性も大いにあることが考えられます。

まとめ

血栓症の副反応が出たことが原因で、国内で承認されたアストラゼネカ社製のワクチンの使用が見送られることが確定しました。しかし、ワクチン接種の対象者分のワクチン量が十分に確保できているため大きな影響はなさそうです。しかし、アストラゼネカ社製のワクチンと同じく、他社製のワクチンにも、アナフィラキシー(重いアレルギー反応)が起きる可能性はまだまだ考えられるため、ワクチンに関する最新情報はしっかりと確認しましょう。

この記事の監修医師