「女性で中性脂肪が高くなる原因」はご存知ですか?医師が徹底解説!
公開日:2025/04/23

女性で中性脂肪が高くなる原因とは?Medical DOC監修医が中性脂肪の基準値・瘦せているのに中性脂肪が高い原因・考えられる病気・対処法などを解説します。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。
目次 -INDEX-
女性の中性脂肪の基準値
女性全体の中性脂肪の基準値は空腹時(10時間以上の絶食)採血で30〜117mg/dLです。この値は女性の場合、閉経前後で値が変わり、閉経前で30〜113mg/dL、閉経後で37〜159mg/dLとなります。また、脂質異常症の診断基準では空腹時で150mg/dL以上を異常値としています。 女性は50代から中性脂肪が上昇する傾向にあります。原因として、エストロゲンという女性ホルモンの分泌の減少が関連しています。 中性脂肪の高値が持続すると、メタボリックシンドロームや生活習慣病・動脈硬化・脳や心疾患を招くリスク因子になります。中性脂肪とは?
中性脂肪とは食物に含まれる脂質の多くで、エネルギー源です。利用されなかったエネルギーは中性脂肪に変換され、体脂肪として蓄えられます。糖質が不足した時など必要に応じて分解され、利用されます。 中性脂肪のエネルギー源以外の役割は脂溶性ビタミンなどの吸収を助ける・体温の維持などです。 中性脂肪が過剰になると肥満やメタボリックシンドローム・脂肪肝の原因になり、高すぎると急性膵炎を起こす可能性があります。20代~30代女性の中性脂肪の基準値
20〜30代女性の中性脂肪の基準値は空腹時採血で30〜117mg/dL(ほどんどの方が閉経前と考えると30〜113mg/dL)です。 令和元年の国民健康・栄養調査の報告(コレステロールを下げる薬または中性脂肪を下げる薬の使用者除外)では、20代女性の中性脂肪の平均値は109.1mg/dL、30代女性は97.2mg/dLです。20〜30代の女性では、中性脂肪の平均は他の年代と比較して低めとなっています。特に30代女性の全年齢の中で最も低い値でした。20代と比較すると食事などの健康面に気を付け始める影響があると考えられます。40代女性の中性脂肪の基準値
40代女性の中性脂肪の基準値は空腹時採血で閉経前で30〜113mg/dL、閉経後で37〜159mg/dL です。 また、40代女性の中性脂肪の平均値は107.4mg/dLです。40代女性では30代に次いで低めの値です。まだ閉経していない方が多く、それほど生活習慣の乱れも少ないためと考ええられます。50代女性の中性脂肪の基準値
50代女性の中性脂肪の基準値は空腹時採血で閉経前で30〜113mg/dL、閉経後で37〜159mg/dL です。 50代女性の中性脂肪の平均値は128.8mg/dLです。50代女性では閉経している女性が多くなるため、平均値の上昇がみられます。60代女性の中性脂肪の基準値
60代女性の中性脂肪の基準値は空腹時採血で37~159mg/dLです。 60代女性の中性脂肪の平均値は153.2mg/dLです。60代女性では全年代の中で最も高い平均値となり、平均値でも脂質異常症を満たす異常値となっています。閉経の影響が最も強いと考えられます。70代女性の中性脂肪の基準値
70代女性の中性脂肪の基準値は空腹時採血で37〜159mg/dL です。 70代女性の中性脂肪の平均値は136.5mg/dLです。70代女性の平均値では60代と比較し低下がみられます。これは加齢による食事量の減少が影響していると考えられます。女性で中性脂肪が高くなる原因
女性で中性脂肪が高くなる原因の多くは食べ過ぎやアルコールの摂りすぎなど、食生活や運動不足によるものです。糖尿病などの生活習慣病やホルモンバランスの変化なども中性脂肪が高くなる原因になります。食べ過ぎ
食べ過ぎの習慣はエネルギーの過剰摂取となり、余分なエネルギーが体内に蓄えられるため、中性脂肪が高くなります。 中性脂肪が高い場合は、食べ過ぎに注意して今より摂取エネルギーを減らしましょう。糖質の摂取が多い
糖質の摂取が多すぎると中性脂肪が高くなります。 糖質はエネルギー源として利用されますが、余ると中性脂肪に変換されるためです。 中性脂肪が高い場合は、菓子やジュース類を控えましょう。ご飯・パン・麺類などの主食にも糖質が多く含まれます。主食は普通盛りにする、1食で1種類の主食にするなど糖質が多くなりすぎないようにしましょう。アルコールの多飲
アルコールの多飲は中性脂肪が高くなります。 アルコールは肝臓での中性脂肪合成を亢進するためです。また、アルコールやつまみの摂取はエネルギー過剰になりやすく、肥満や脂肪肝を招き中性脂肪を高くする原因になります。 中性脂肪が高い場合は節酒や禁酒をしましょう。瘦せている女性の中性脂肪が高くなる原因
痩せている女性の中性脂肪が高くなる原因は、遺伝体質・内臓脂肪が多い・運動不足などです。体脂肪が多い
痩せていても体脂肪が多い「隠れ肥満」は中性脂肪が高くなる原因です。 偏った食生活などにより、筋肉量の減少・体脂肪量の増加により隠れ肥満を引き起こすといわれています。 極端な食事制限をせず、主食・副食がある食事を心がけ、糖質・たんぱく質・脂質をバランスよく摂るようにしましょう。脂肪肝(低栄養性脂肪肝)
痩せていても脂肪肝があると、中性脂肪を上げる原因になります。 日本人は肥満でなくても、2〜3kgの体重増加でも脂肪肝になりやすいといわれています。また、極端な食事制限では低栄養性脂肪肝を招く場合があります。 低栄養性脂肪肝とは必要な栄養素(特にたんぱく質)が不足することにより、体内のホルモンバランスや肝臓や他の臓器での代謝の変化が起こり肝臓に脂肪が溜まりやすくなっている状態です。 夕食が朝や昼より多くなっていたり、極端な食事制限があれば見直しましょう。運動不足
運動不足や活動量が少ないと、消費エネルギーが少なくなり脂肪を溜め込みやすくなることや、筋肉量が低下するため中性脂肪を上げる原因になります。 運動不足の解消や、日常生活の中でこまめに体を動かすようにしましょう。女性で中性脂肪が高くなると現れる症状
中性脂肪が高くてもすぐに症状として現れないことが多いですが、高い状態が持続すると内臓脂肪の蓄積が過剰になります。内臓脂肪が過剰に蓄積されると、メタボリックシンドロームや脂肪肝などの病気を起こします。また、ネフローゼ症候群やクッシング病などの病気が原因で結果として中性脂肪が高い場合もあり注意が必要です。脂肪肝
中性脂肪が高い状態が持続すると、肝臓にも中性脂肪が溜まり、脂肪肝を招く原因になります。痩せていても筋肉量が少なく、体脂肪が多い場合は低栄養性脂肪肝を招いていることがあります。 脂肪肝は肝炎や肝硬変など様々な肝障害に進行するリスク因子です。 摂取エネルギーの制限や夕食を少なめにする、運動不足を解消することで脂肪肝を改善しましょう。 健康診断などで中性脂肪の高値を指摘されたり、体脂肪が多い、夕食の過食がある場合は脂肪肝の疑いがあります。早めに一般内科を受診しましょう。メタボリックシンドローム
中性脂肪が高い状態が続くと内臓脂肪が過剰に蓄積し、メタボリックシンドロームを発症する原因になります。 摂取エネルギーの制限や運動不足を解消し、内臓脂肪を減らしましょう。 健康診断で中性脂肪の高値やメタボリックシンドロームを指摘されたら早めに一般内科を受診しましょう。急性膵炎
急性膵炎は膵臓に炎症が急激に起こった状態です。上腹部や背中の痛み・嘔吐・発熱などの症状が現れます。 発症の原因は飲酒・胆石・中性脂肪の高値などです。 軽度の膵炎であれば多くの場合は治癒しますが、重症化すると治療が困難になり時間もかかります。 中性脂肪の高値が続いている・アルコールの多飲や脂質が多い食事の後に腹部の痛みが現れた場合、急性膵炎の可能性があります。すみやかに消化器科を受診しましょう。「女性で中性脂肪が高い」と発症する可能性のある病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「女性で中性脂肪が高い」に関する病気を紹介します。 どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。 ここではMedical DOC監修医が、「女性で中性脂肪が高い」に関する病気を紹介します。 どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。脂質異常症
脂質異常症とは、脂質の代謝異常の状態です。動脈硬化の進行リスクになります。 主な原因は食べ過ぎ・アルコールの多飲・肥満などです。女性は閉経するとホルモンバランスが乱れ、LDLコレステロールや中性脂肪が上昇しやすくなります。 治療は食事療法や運動療法を行い、改善しない場合は薬物療法も併用します。 健康診断などで中性脂肪・LDLコレステロールが高いと指摘されたらすみやかに一般内科を受診しましょう。動脈硬化
動脈硬化とは、血管壁にコレステロールが沈着して血管が厚くなり、血管内が狭くなったり、血管が硬くなった状態です。心疾患・脳卒中などの疾患の発症の原因となります。 脂質異常症・高血圧・糖尿病などの生活習慣病や加齢、喫煙や運動不足などが主な原因です。 脂質異常症・高血圧・糖尿病などの生活習慣病を改善することが進行の予防になります。 健康診断などで中性脂肪の高値や血圧や血糖値の異常を指摘されたら、すみやかに一般内科を受診しましょう。糖尿病
糖尿病とはインスリンというホルモンの作用不足により、高血糖が続く病気です。発症の原因は遺伝や環境が関わっています。 治療は食事療法と運動療法が基本です。食事療法と運動療法で不十分な場合は薬物療法を併用します。 健康診断などで高血糖やHbA1cの高値を指摘されたり、体重減少・口渇・倦怠感などの症状がある場合はすみやかに一般内科を受診しましょう。脳梗塞
脳梗塞とは脳の血管が詰まり、脳に障害が起こる病気です。 脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病や喫煙により動脈硬化が進行することで発症します。 予防は脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病の改善・禁煙などです。 顔のゆがみ・言葉がでてこない・半身に力が入らないなどの症状が現れた場合は救急要請をしましょう。 健康診断などで脂質異常症などの生活習慣病を指摘されたら早めに治療をし、予防をすることが大切です。心筋梗塞
心筋梗塞とは心筋の細胞の壊死が起こる病気です。主な原因は動脈硬化により血管が閉塞し、心臓に血液や栄養が届かなくなり起こります。 予防は禁煙、脂質異常症・糖尿病・高血圧などの生活習慣病の改善です。 激しい胸痛が続き、心筋梗塞を疑う症状があれば救急要請をしましょう。 健康診断などで脂質異常症などの生活習慣病を指摘されたら早めに一般内科を受診しましょう。「女性で中性脂肪が高い」ときの正しい対処法・改善法は?
女性で中性脂肪が高い原因は、エネルギーや糖質やアルコールの摂取過剰・肥満・運動不足などで、摂取を制限することや肥満を解消することで中性脂肪を下げる効果が期待できます。 魚に多く含まれる油は中性脂肪を下げる効果が期待できるため、積極的な摂取がおすすめです。魚の摂取を増やしましょう
魚油に多く含まれるn-3系脂肪酸は中性脂肪を下げる作用があり、食後の中性脂肪の上昇を抑制する効果もあります。n-3系脂肪酸は青魚など脂肪が多い魚に多く含まれます。 魚の摂取を増やしましょう。糖質を摂りすぎないようにしましょう
糖質の過剰摂取は中性脂肪が高くなる原因になります。特に菓子・ジュース・アイスなど果糖を多く含む加工品を減らすことで中性脂肪の低下が期待できます。適正体重を維持しましょう
エネルギー摂取過剰の食生活が習慣化すると、肥満やメタボリックシンドロームを招き、中性脂肪が高くなる原因になります。 肥満があれば摂取エネルギーを減らし、少しでも体重を減らしましょう。節酒・禁酒しましょう
過剰な飲酒の習慣は中性脂肪が高くなる原因になります。純アルコール換算で23g以下が1日の摂取目安量です。 純アルコール23gは日本酒なら1合、ビールなら500ml程度の量です。運動不足を解消しましょう
運動不足や活動量が少ないと中性脂肪が高くなる原因になります。 ウォーキングやスポーツを習慣的に行いましょう。運動をすることが難しい場合は、日常生活の中で座位の時間を減らし、こまめに動いて活動量を増やしましょう。「女性で中性脂肪が高い原因」についてよくある質問
ここまで女性で中性脂肪が高い原因について紹介しました。ここでは「女性で中性脂肪が高い原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
中性脂肪が高い人が控えた方がいい食べ物について教えてください。
伊藤 陽子(医師)
エネルギー・糖質・アルコールの過剰摂取は中性脂肪を上げる原因になります。適正体重を維持できるエネルギー摂取量にし、菓子や糖入り飲料・アルコールの摂取を控えましょう。
中性脂肪を下げるためにどんな食べ物を食べるといいですか?
伊藤 陽子(医師)
魚油に多く含まれる、n-3系不飽和脂肪酸は中性脂肪を下げる働きがあります。魚の摂取を増やしましょう
編集部まとめ 女性で中性脂肪が高い原因は食べ過ぎや運動不足の可能性があり!
女性で中性脂肪が高い原因は、ホルモンバランスの変化や食べ過ぎ、運動不足による内臓脂肪の蓄積、食事バランスが悪いことで招く低栄養性脂肪肝が考えられます。 予防のためには、適正体重の維持や糖質の多い菓子・ジュースやアルコールの摂取を控え、こまめに体を動かしましょう。 健康診断などで中性脂肪の高値を指摘されたら、早めに医療機関を受診しましょう。「中性脂肪」の異常で考えられる病気
「中性脂肪」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。内分泌科の病気
- 脂質異常症
- 糖尿病
- メタボリックシンドローム
- クッシング症




