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「メタボリックシンドローム」の診断基準・予防法はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「メタボリックシンドローム」の診断基準・予防法はご存知ですか?医師が監修!

「メタボ」だけど栄養不足の可能性も!肥満とメタボは一緒だと思っていたら違う病気だったなど意外と知られていないメタボの正体。

ドミノ倒しのように連鎖していく「メタボリックドミノ」はやがて心不全や認知症にたどり着くかもしれません。

具体的な改善方法や高血圧・糖尿病・動脈硬化との関係をわかりやすく解説していきますので、生活習慣を見直すきっかけにしていただけたら幸いです。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

メタボリックシンドロームの診断基準

体重計

メタボリックシンドロームはどんな病気ですか?

内臓脂肪症候群ともいわれ「内臓脂肪蓄積」+「高血圧・高血糖・脂質代謝異常・耐糖能障害」などのリスク因子との合併症のことを指します。これにより心臓病や脳卒中などの動脈硬化を発症しやすく、日本では死因の約30%以上が動脈硬化と推測されることから早期発見が必要になります。
主な原因は食の欧米化と運動不足によるもので、生活習慣病ですので私生活の見直しをすることで改善が可能な病気です。摂取カロリーが少ない時はタンパク質・ビタミン・ミネラルなどの栄養素も不足しがちになるため、栄養士とよく相談してこれらを積極的に摂取するよう心がける必要があります。

メタボリックシンドロームの診断基準はなんですか?

「腹囲が男性85cm女性90cm以上」の条件に加えて

    1.「高脂血」HDL-コレステロール値40mg/dL未満
    2.「高血圧」収縮期血圧130mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上
    3.「高血糖」空腹時血糖値110mg/dL以上

上記のうち1~3のうち2つ以上の項目が当てはまるとメタボリックシンドロームと診断されます。この他にも例えば、糖尿病で血糖を下げるお薬を飲んでいる方は耐糖能障害として3項目のうちの1つに含めます。

メタボリックシンドロームは遺伝しますか?

複数の遺伝要因と環境要因が組み合わさり発症すると考えられています。リスク因子である肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症ともに遺伝的背景があると指摘されているので遺伝の関係は深いといえますが上記のリスク因子それぞれの病態と独立した遺伝子の存在は解明されていません。
決して遺伝で100%決まる訳ではなく、食事の欧米化や運動不足などの環境要因に左右されると考えられます。

何人に1人がメタボリックシンドロームと診断されますか?

40~74歳を対象としたデータでは男性の2人に1人・女性の5人に1人が診断されています。該当者は960万人、予備軍者数は980万人で併せて約1,940万人と推測されています。
予備軍とは診断基準(高脂血・高血圧・高血糖)の3つの項目のうち1つが該当する場合です。

メタボリックシンドロームの治療方法

医師と患者

メタボリックシンドロームの治療方法について教えて下さい。

  • 食事療法
  • 運動療法
  • 行動療法
  • 薬物療法

以上4つの治療方法があります。食事と運動不足による内臓脂肪蓄積が要因ですので内臓脂肪を減らすために生活習慣を見直すことが必要になり、それでもコントロールが難しい場合は薬物治療を行ないます。初期目標として「現在の体重の5%を3~6カ月かけて減量する」ことからスタートしてみましょう。
食事療法ですが、例えば茶わん1杯分(約150~200kcal)のご飯を一日の食事量から減らすと1~1.5ヶ月で約1kgの減量ができます。運動療法はウォ―キング・ランニング・水泳・自転車など20分以上継続する有酸素運動を週に3日以上行うこと、無酸素運動より有酸素運動の方が内臓脂肪の燃焼に効果的です。
1日8千~1万歩のウォーキングを1ヶ月行うことで約1kgの減量ができます。エレベーターではなく階段を利用する・1駅だけ歩いてみるといったわずかな努力でも消費エネルギーを増やしていけます。行動療法は自主的に肥満の原因や治療の妨げとなる問題点を見つけ改善策を考えることです。毎日体重を量る・1日の摂取カロリーを計算する・身の回りに誘惑になるものを置かないことで自分の意識を変えていけるようになります。
最終目標は体重・体型の維持です。薬物治療は高血圧・高血糖・脂質代謝異常に対する投薬になります。高血圧・糖尿病・高脂血症を合併している患者はこれらの疾患に対して治療を行うことで心血管疾患のリスクを下げることができると考えられています。

メタボリックシンドロームは病院に行く必要がありますか?

メタボリックシンドロームはいわゆる黄色信号の状態で、特別な症状が出ないことが多いため自分でも気づかぬうちに動脈硬化が進行している場合があります。1番判断しやすいのが腹囲のサイズです。90センチ以上あ腹る・ベルトがきつくなってきた…などウエストが示すサインを見逃してはいけません。定期的に健康診断やがん検診をきちんと受けることをお勧めします。
なぜならメタボリックシンドロームは血液検査をすることで血糖値や脂質異常を知ることができるからです。ケガや不調の際に行く診療ではその症状に対する検査でしかありませんので、全身のチェックを定期的にすることでリスク回避をしていきましょう。

メタボリックシンドロームの改善方法を知りたいです。

メタボリックシンドロームの進行を止める必要があります。それは「メタボリックドミノ」というドミノ倒しに例えられ、まだ症状がないがリスクのある高血圧や高脂血症などの危険因子が連鎖していき心疾患や脳血管障害という重大な病気になっていくことをいいます。
このメタボリックドミノの進行を止めるために体型に合わせて目標体重を設定し、生活習慣の改善・食事・運動療法を行なうのです。

メタボリックシンドロームの予防

料理している女性

メタボリックシンドロームを防ぐためには何をすればいいですか?

まずはご自身の状態を知って下さい。対象となる健康診断や検診を受診していただき、具体的には腹八分目までにする・よく噛む・消費エネルギーを増やすことを意識して下さい。規則的な生活・充分な睡眠・喫煙者は禁煙を心がけてみましょう。メタボリックシンドロームは内臓脂肪蓄積から始まり、生活習慣と深い関係があります。
まだ生活習慣病を発症していない人は日常生活に運動を取り入れ食生活の見直しを図ることで、生活習慣病とメタボリックシンドロームの予防にも期待ができます。運動・食事療法に勝るものは今のところないのが現状です。

メタボリックシンドロームにならないための食事を教えてください。

食習慣を見直します。おやつが家にあると食べてしまう方は買い物の際に買わないという強い意志が大切です。減量時はビタミン・ミネラル・タンパク質も同時に不足しやすくなるため積極的に摂りましょう。摂取量を減らすと栄養の質も落ちてしまいやすいので、食事の基本(1日3食・主食・主菜・副菜)を摂るようにします。

  • みそ汁やスープは具だくさんを心がける(高血圧抑制のため、減塩や汁の摂取量を控える)
  • 血圧を上げないように塩分は控えめに濃い味付けに気を付ける
  • 野菜は1日350gを目標に生野菜だけでなく加熱調理も加える
  • おやつは200kcalまで・15時までに済ませる
  • ビールは中瓶(500ml)1本・ワインは2杯までにする
  • 寝る直前に食べない

寝る直前に胃が活発になると寝つきが悪くなり、寝不足になると食欲を促進するホルモンが分泌されてしまうので肥満の原因になります。内臓脂肪蓄積型の肥満症では、数kgの減量で脂質代謝異常・高血圧などの改善が報告されています。

最後に読者へメッセージをお願いします。

メタボリックシンドロームと診断されたら黄色信号と捉え、まずは食事・喫煙・睡眠・運動を改善することが大事です。メタボ+喫煙は心血管疾患のリスクが高まることが報告されています。
赤信号になってからでは精神的・金銭的負担もかかりますので、健康診断や検診は必ず定期的に受けるようにしていただき、1つしかないご自身のお体を大切になさって下さい。

編集部まとめ

OKサイン
食事制限や運動は途中くじけそうになるかもしれませんが、そんな時はまず3週間を目標にするとその目標を達成した時に自信になり更にやる気も出て続けやすくなります。

自分の生活習慣次第で良くも悪くも変えられる病気です。今日からすぐに実行できることばかりなので、前向きに捉えて行動あるのみですね。

この記事の監修医師