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ネフローゼ症候群の症状・原因とは?

 更新日:2023/03/27

ネフローゼ症候群とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

菅谷 雅人 医師

監修医師
菅谷 雅人 医師(ふかしばこどもクリニック)

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東邦大学医学部医学科卒業後、千葉大学医学部付属病院小児科を経て、複数の病院で小児科医として勤務。
2021年茨城県神栖市にふかしばこどもクリニックを開院。子育てを頑張っている家族、こどもの体調不良で不安になっている家族に寄り添った診療を提供すべく努めている。
日本小児科学会認定小児科専門医。日本腎臓学会認定腎臓専門医。
日本小児腎臓学会、日本夜尿症学会所属。

ネフローゼ症候群とは

タンパク質は体にとって大事なもので、尿として体の外に排泄されることはありません。
しかし、ネフローゼ症候群は尿の中にタンパク質が捨てられてしまった結果、体のタンパク質が少なくなってしまい、体中に浮腫み(むくみ)が起こる病気です。

菅谷 雅人 医師菅谷先生の解説

糖尿病や膠原病などの全身性疾患が原因のものを二次性ネフローゼ症候群、明らかな原因疾患がないものを一次性ネフローゼ症候群といいます。毎年約2,500人の一次性ネフローゼ症候群の患者さんが新たに発症しており、約16,000人のネフローゼ症候群の患者さんがいると推定されています。一次性ネフローゼ症候群にはいくつかの病型がありますが、若年層では微小変化型が多く、高齢者層では膜性腎症が多くみられます。
一次性ネフローゼ症候群は指定難病とされており、医療費助成の対象となっています。難病指定医の主治医と相談し、都道府県に申請すれば医療費受給者証交付を受けることができます。

どんな症状が現れるの?

尿にタンパク質がたくさん出てしまうために、血液中のタンパク質が減って(低タンパク血症)、その結果としてむくみが体中に起こります。具体的な症状としては、目の周りのむくみ、手足のむくみ、陰嚢のむくみ、胸腹水、急激な体重増加、疲れやすさ、呼吸困難感がみられます。

菅谷 雅人 医師菅谷先生の解説

むくみそのものが痛むことはありませんが、腸がむくんで動きが悪くなることで腹痛や食欲不振、下痢がみられることもあります。また、静脈に血の塊をつくることもあり、足の静脈に詰まった場合には、足の痛みがでることがあります。

ネフローゼ症候群の原因は?

原因は、ネフローゼ症候群の病型によって異なると考えられていますが、いずれの場合も明確となっていません。
微小変化型では、免疫細胞のT細胞が、腎臓での尿をこしとる役目である糸球体の細胞を攻撃してしまいます。そのため、本来であれば尿中にもれないタンパク質をもらしてしまうことによって発症する、と考えられています。
膜性腎症では、糸球体の細胞の一部に対して、異常な抗体ができてしまいます。そのため、糸球体の細胞に抗体がたくさんくっついてしまい、糸球体が働かなくなることによってタンパク尿が出る、と考えれています。

菅谷 雅人 医師菅谷先生の解説

遺伝子の異常により、糸球体を構成するタンパク質の構造異常を引き起こし、糸球体が正常に機能しないために発症する、ということも考えられています。

ネフローゼ症候群の検査方法・診断基準は?

尿検査や血液検査を行い、高度タンパク尿や低アルブミン血症があるかを確認します。

【成人のネフローゼ症候群の診断基準】

  1. 蛋白尿:3.5g/日以上が持続する (随時尿において尿タンパク・クレアチニン比が3.5g/gCr 以上の場合もこれに準ずる)
  2. 低アルブミン血症:血清アルブミン値3.0g/dL以下
  3. 浮腫
  4. 脂質異常症(高LDLコレステロール血症)

とされており、1.2を満たすことが診断必須条件です。

【小児のネフローゼ症候群】

高度タンパク尿(夜間蓄尿で40mg/hr/m2以上)または早朝尿で、尿タンパク・クレアチニン比2.0g/gCr以上、かつ低アルブミン血症(血清アルブミン2.5 g/dL以下)
とされています。

菅谷 雅人 医師菅谷先生の解説

診断のための検査に併せて、二次性ネフローゼ症候群がないか自己免疫疾患や糖尿病、悪性腫瘍等の有無も確認します。
ネフローゼ症候群は病型がいくつかあり、その種類を見分ける目的で腎臓の組織を一部採取して、顕微鏡で観察するという検査(腎生検)も行う場合もあります。
尿検査や血液検査は大きな病院であれば1日~1週間程度ですべての結果が出ますが、腎生検は5日~10日の入院が必要です。結果を知るにはさらに1~2週間かかります。

ネフローゼ症候群の治療方法

ネフローゼ症候群は腎臓の病気なので、治療の目標は、腎臓の機能を保つ(腎不全にならない)ことです。
むくみを改善する目的で塩分制限や尿を増やす薬が使われます。また、腎臓の負担を軽減する目的で血圧を下げる薬も使われることもあります。コレステロールが高くなることも多いので、コレステロールを下げる薬も使うことがあります。
また、タンパク尿を抑える目的で、副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤を使います。
治療期間はタンパク尿の消えやすさ(治療反応のよさ)にもよりますが、1-2か月程度かかります。

菅谷 雅人 医師菅谷先生の解説

一次性ネフローゼ症候群の種類によって発症後のとりうる経過は異なります。微小変化型は治療反応が良く蛋白尿が止まることが多いのですが、再発を繰り返すことが多いのが特徴です。腎機能障害を伴うことは多くありません。
膜性腎症や巣状糸球体硬化症では、なかなか治療反応がよくない場合もあり、20年という長期的な期間でみると4-6割が腎不全となり、人工透析や腎移植が必要な患者さんもいます。
このように、完治することは難しく、基本的には付き合っていく病気となります。治療に反応してタンパク尿が消えても、再発することはありますし、退院しても長い間飲み続けなければならない薬があります。
副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤を内服している間は、感染症に弱いので、感染症予防がとても大事です。また、再発の早期発見のため、家庭での尿検査も大事です。

もしかしてネフローゼ症候群?初期症状・気になる症状を解説

ここではネフローゼ症候群の初期症状や、ネフローゼ症候群の疑いのある症状、病院へ行くべき目安や対処法などをなどを解説します。

浮腫み(むくみ)

ネフローゼ症候群を疑うきっかけになる特徴的な症状は、浮腫み(むくみ)です。
特に、目の周りや足にみられます。足の甲に強く親指を10秒ほど押し付けて、離したあとにへこみが残る場合には、病的なむくみが考えられます。
明らかなむくみがなくても、例えば1週間で5kgなど、短期間で急激な体重増加がある場合、それは体に水分が溜まっており、ネフローゼ症候群の可能性があります。
次の項目で説明するタンパク尿に加えて、むくみや倦怠感、下痢や食欲不振の消化器症状も併せてある場合はネフローゼ症候群の可能性が高くなります。これらの症状がある場合は内科や腎臓内科を受診してください。尿検査は痛みを伴わないですし、病院であればすぐに結果が出ます。
受診するまでの対処法はありませんが、受診する当日の朝一番の尿をよく洗った空きペットボトル等に入れて受診していただくと、とても診断の助けになります。

タンパク尿

ゆっくりと進行するタイプのネフローゼ症候群では、むくみが顕著にあらわれない場合があります。その場合、定期検診や学校検尿などでタンパク尿を指摘されることが受診のきっかけとなります。タンパク尿は泡立ちやすいことが特徴の一つです。
タンパク尿を指摘された場合は後回しにせず、必ず病院を受診しましょう。

ネフローゼ症候群についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「ネフローゼ症候群」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

大人や高齢者がネフローゼ症候群になることはあるのでしょうか?

菅谷先生菅谷先生

あります。
30代くらいまでは微小変化型が多いのですが、50代以降では膜性腎症や巣状分節性糸球体硬化症の割合が多くなります。また、65歳以上の高齢者では、全身性疾患(膠原病、悪性腫瘍、糖尿病やアミロイドーシス)等による二次性ネフローゼ症候群の占める割合が高くなります。

ネフローゼ症候群とコレステロール値には相互関係はあるのでしょうか?

菅谷先生菅谷先生

詳しい機序は不明ですが、ネフローゼ症候群発症時に高LDLコレステロール血症や高トリグリセリド血症などの脂質異常症が高頻度にみられることはあります。
しかし、脂質異常症が一次性ネフローゼ症候群を引き起こす、とは言われていません。

ネフローゼ症候群の治療終了後に再発することはあるのでしょうか?

菅谷先生菅谷先生

あります。
微小変化型では再発率が30~70%と高頻度に見られます。また、若年層ほど再発率が高いという特徴があります。巣状分節性糸球体硬化症では治療抵抗性があり、そもそもタンパク尿が消えること(寛解)が難しいのですが、寛解した場合再発率は微小変化型よりも低いとされています。膜性腎症の再発率は25~33%です。

まとめ

ネフローゼ症候群はどの年齢層にも起こりうる、決して少なくない病気です。
タンパク尿が出ていること自体は痛くもかゆくもありませんが、それが続くことによって起こることは全身のむくみや腎機能障害など、こわいことが多いです。
なるべくなら毎年検診を受けて、尿異常が指摘された場合必ず内科や腎臓内科を受診しましょう。子供の場合は、小児科でご相談ください。

ネフローゼ症候群と関連する病気

「ネフローゼ症候群」と関連する、似ている病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。

腎臓の病気

  • 腎不全

循環器系

  • 心不全

消化器系

  • 肝不全

内分泌系

肝臓や心臓などの主要臓器の機能低下でも、体内に水分が溜まってしまう症状などが見られます。そのため、ネフローゼ症候群の症状が見られた場合には、他に重大な疾患がないかどうかをしっかりと検査する必要があります。

ネフローゼ症候群と関連する症状

「ネフローゼ症候群」と関連している6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについては詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。


  • 顔がむくむ
  • 足がむくむ
  • 体重が急激に増えた
  • 尿が泡立つ
  • 疲れやすさ
  • 呼吸困難感

血中のタンパクが尿に混じって体外に漏れ出てしまうために、血液中のタンパクが減ってしまい、水分が体内に溜まってしまいます。水分が多いことで出現する症状がよく見られます。

関連する症状

  • 顔がむくむ
  • 足がむくむ
  • 体重が急激に増えた
  • 尿が泡立つ
  • 疲れやすさ
  • 呼吸困難感