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甲状腺疾患があっても妊娠できる? 妊娠した時に気をつけることは?【医師解説】

 公開日:2024/08/20
甲状腺疾患のある患者さんが妊娠したときに気をつけるべきことは?【医師解説】

妊娠した女性は、自分と赤ちゃんの健康を守るために、考えなければならないことがたくさんあります。なかでも甲状腺疾患を持つ女性が妊娠した場合、母子の健康を守るために特別な配慮が必要です。そこで、甲状腺の役割や疾患、そして、甲状腺疾患の患者さんが妊娠した際に気をつけるべきことについて、「そのだ内科 糖尿病・甲状腺クリニック渋谷駅道玄坂院」の薗田憲司先生に解説してもらいました。

薗田 憲司

監修医師
薗田 憲司(そのだ内科 糖尿病・甲状腺クリニック渋谷駅道玄坂院)

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日本医科大学卒業後、東京臨海病院初期研修、東京都済生会中央病院勤務を経て、2023年そのだ内科 糖尿病・甲状腺クリニック渋谷駅道玄坂院を開院。高校時代、糖尿病になり苦しんでいる父親を救いたいという思いから糖尿病専門医を志す。外来診療で伝えきれないダイエットや血糖値改善のための食事や運動の方法を親しみやすい医師「血糖おじさん」としてYouTubeやInstagram、書籍、メディアを通じて広く情報発信している。日本内科学会内科認定医。日本糖尿病学会糖尿病専門医。

甲状腺の役割ってなんなの? 医師が解説!

甲状腺の役割ってなんなの? 医師が解説!

編集部編集部

甲状腺について教えてください。

薗田 憲司先生薗田先生

甲状腺は首の前部に位置しており、羽を広げた蝶のような特徴的な形をした内分泌器官で、体の代謝を調節するホルモンを分泌しています。甲状腺で分泌されるホルモンを総称して「甲状腺ホルモン」と呼んでいます。

編集部編集部

甲状腺ホルモンはどんな働きをしているのですか?

薗田 憲司先生薗田先生

代謝を調整したり、体温を調整したり、心血管系の機能を維持して心拍数や血圧の調整にも関与していたりします。また、子どもの成長や脳の発達にも不可欠なホルモンです。それに加えて、女性の場合は妊娠の成立に大きく関わりがあり、甲状腺ホルモンが過多になったり過少になったりすることで、月経不順や無排卵などの症状が表れ、不妊や流産を起こしやすくなると考えられています。

編集部編集部

甲状腺がうまく機能しなくなると、どんな病気になるのですか?

薗田 憲司先生薗田先生

甲状腺の機能が低下するか亢進するかで、症状も変わってきます。また、甲状腺に腫瘤(こぶのようなもの)ができることもあります。

甲状腺の疾患にはどのようなものがある?

甲状腺の疾患にはどのようなものがある?

編集部編集部

もう少し詳しく教えてください。

薗田 憲司先生薗田先生

甲状腺ホルモンの働きが弱まることで様々な症状が表れる「甲状腺機能低下症」は、足がつりやすい、疲れやすい、皮膚が乾燥してかゆい、むくみやすい、体重が増えるなどの症状が表れます。甲状腺機能低下症には、甲状腺そのものに問題がある原発性のものと、甲状腺にホルモン分泌の指令を送っている下垂体というところに原因がある中枢性のものがあり、原発性のもののほとんどが「橋本病」です。

編集部編集部

甲状腺の機能が亢進しても症状が出るのですか?

薗田 憲司先生薗田先生

そうですね。甲状腺ホルモンが分泌されすぎても、様々な症状が表れます。甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる疾患の代表としてバセドウ病があり、主な症状には、発汗過多、食欲亢進、疲労、体重減少、手指のふるえ、動悸、眼球の突出などがあります。イライラしやすいなど精神的症状が表れることもあり、実際に心療内科や精神科から紹介されて当院を受診する患者さんも少なくありません。

編集部編集部

腫瘤ができるとどうなるのですか?

薗田 憲司先生薗田先生

腫瘤ができていると言われると、心配になってしまう方も多いと思いますが、甲状腺の腫瘤の95%は良性のもので、特別な治療が必要なものはあまりありません。また、たとえ悪性の腫瘍だとしても、甲状腺のがんは一般のがんより進行がゆったりとしているので、手術で根治できることがほとんどです。

編集部編集部

甲状腺腫瘤の症状はありますか?

薗田 憲司先生薗田先生

甲状腺の腫瘤は、ときに首の腫れやのどの違和感、飲み込みにくさなどで受診される方もいますが、ほとんどの場合自覚症状がありません。乳がん検診などの超音波検査で見つかるケースが比較的多いです。

甲状腺疾患の患者が妊娠した際に気をつけることは?

甲状腺疾患の患者が妊娠した際に気をつけることは?

編集部編集部

妊娠とも関係があるとのことでしたが、どのような影響があるのですか?

薗田 憲司先生薗田先生

不妊と関係があると言われています。甲状腺ホルモンは女性ホルモンの分泌にも大きく関わっており、過剰になっても不足になっても月経不順や無排卵などを起こして、不妊につながってしまうのです。

編集部編集部

そうなのですね。

薗田 憲司先生薗田先生

そもそも日本人の場合、甲状腺機能に異常をもつ方の男女比率は1対5と、圧倒的に女性に多い傾向があります。近年では、不妊の相談に来る方に、まず甲状腺の検査をする医療機関も増えているほど、隠れた甲状腺機能の障害で不妊に悩んでいる方が多くなっているのです。

編集部編集部

甲状腺機能に障害のある人が妊娠した場合、気をつけることなどありますか?

薗田 憲司先生薗田先生

まず、ヨウ素を制限する必要があります。ヨウ素は海藻類やうがい薬に多く含まれているため、海藻類の摂取やうがい薬の使用を控えるよう気をつけてもらいます。ほかには、1ヵ月に1度、甲状腺ホルモンの状態を血液検査で確認することと、薬を飲んでいる人は飲み忘れが無いよう、普段以上に注意しましょう。特に、「器官形成期」(※)である4~7週に注意が必要なので、妊娠自体に早く気づくことも大切です。

※器官形成期:赤ちゃんの中枢神経が形成され、目や心臓、手・足などの重要な器官が作られる時期。薬やホルモンなどの影響を最も敏感に受ける時期と言われている

編集部編集部

最後に、Medical DOC読者へのメッセージをお願いします。

薗田 憲司先生薗田先生

甲状腺疾患のある人の妊娠・出産については、気をつけなければいけないことがいくつかあります。言い換えれば、適切に対応さえすれば、過度に心配する必要はないのです。より安心で快適な妊娠生活を送るには、甲状腺を専門としている医療機関に相談するのがよいでしょう。とくに妊娠中のフォローアップは、例えば血液検査の結果が当日にわかるといったスピーディーさも重要。なぜなら、赤ちゃんの器官が形成されるのはわずか3〜4週間なので、「検査の結果は来週以降に」といったやり取りをしていると対応が遅れてしまうリスクがあるからです。甲状腺疾患は症状がわかりにくく、「不妊の原因を探っていたら甲状腺疾患だった」「精神科にかかっていたけれど良くならなかったが、実は甲状腺疾患だった」ということも少なくありません。遺伝性のある甲状腺疾患も多いので、ご家族に甲状腺疾患のある人は、妊婦検診などで必ず申し出るようにしてください。

編集部まとめ

甲状腺疾患を持つ女性が妊娠した場合、母子の健康を守るためにいくつかの注意点があります。健康な赤ちゃんを迎えるために、早期からの計画的なケアを心がけ、疑問や不安があれば遠慮せずに専門家に相談しましょう。

医院情報

そのだ内科糖尿病・甲状腺クリニック 渋谷駅道玄坂院

そのだ内科糖尿病・甲状腺クリニック 渋谷駅道玄坂院
所在地 〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂2-30-4 玉久ビル2F
アクセス JR・東京メトロ「渋谷駅」 徒歩1分
診療科目 内科、糖尿病内科

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