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上咽頭炎の「Bスポット治療」は痛い? 医師が治療リスクなど含めて解説

 更新日:2023/03/27
上咽頭炎の「Bスポット治療」は痛い? 医師が治療リスクなどと合わせて解説

鼻や喉だけでなく、全身にさまざまな症状を来すこともある「上咽頭炎」。実はこの病気であると気付かず、全身症状でお悩みの方も少なくないようです。この上咽頭炎に対して効果が期待できるという「Bスポット療法」について、「耳鼻咽喉科山西クリニック」の山西敏朗先生に詳しく話を聞きました。

山西 敏朗

監修医師
山西 敏朗(耳鼻咽喉科山西クリニック)

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医学博士。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定専門医、日本気管食道科学会認定専門医、補聴器相談医。日本大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、社会保険中央総合病院(現・東京山手メデイカルセンター)、国立霞ヶ浦病院(現国立病院機構霞ヶ浦医療センター)、東京医科大学病院、厚生中央病院、板橋中央総合病院耳鼻咽喉科部長などを経て、2007年1月耳鼻咽喉科 山西クリニック開設。睡眠時無呼吸症候群やアレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎の治療などが専門。

上咽頭炎とは

上咽頭炎とは

編集部編集部

上咽頭炎について教えてください。

山西敏朗先生山西先生

その名の通り、「上咽頭」と呼ばれる部位が炎症を起こす疾患です。上咽頭は、鼻の奥と喉がつながった部分を指します。ここの痛みや違和感が続く場合には、上咽頭炎が疑われます。上咽頭炎は性別や年齢を問わず発症し、個人差はあるものの、頭痛や肩こり、めまい、長引く咳など、さまざまな全身症状を来すこともあります。

編集部編集部

上咽頭の病気なのに、全身に症状が現れるのはどうしてですか?

山西敏朗先生山西先生

上咽頭は空気の通り道であり、ウイルスや細菌などの病原菌が付着しやすく、免疫反応を担う組織としてはたらきます。そのため、上咽頭に炎症が生じることで、リンパ球などの「免疫細胞」が活性化され、増殖します。またそれだけでなく、これらの細胞が炎症物質を産生し、それが血流に乗って全身に広がってしまうのです。すると、遠くはなれた腎臓や関節、皮膚などにも炎症を引き起こします。

編集部編集部

全身に影響が及んだ場合、どんな症状を生じることがあるのですか?

山西敏朗先生山西先生

自律神経が乱れ、さまざまな症状が出現します。全身倦怠感や睡眠障害、過敏性腸症候群(下痢や便秘など)などを生じるほか、関節炎やアトピー性皮膚炎、腎臓病(IgA腎症、ネフローゼ症候群など)を発症するケースもあります。

編集部編集部

上咽頭炎になってしまう原因は何でしょうか?

山西敏朗先生山西先生

上咽頭炎のはっきりとした原因はわかっていません。上咽頭炎という病名は、あくまでも上咽頭に炎症が起こっている状態を指し、その原因として考えられるものにはあらゆることが当てはまるためです。上咽頭炎との関連性が考えられる例としては、細菌やウイルスによる感染や、ストレス、自律神経の乱れ、睡眠不足や生活の変化による身体的・精神的疲労、アレルギー性鼻炎などによる鼻閉、気圧の変化、あるいは喫煙など、さまざまなものが挙げられます。そのため、一般的な治療法としては痛みや違和感を抑えることを目的とした対症療法が中心となっていました。

編集部編集部

どのように診断されますか?

山西敏朗先生山西先生

まず問診で症状の詳細をお聞きします。喉の不快感がないか、鼻水が喉に流れる(後鼻漏)か、咳が長引いていないか、肩こりや頭痛がないかなどをお聞きします。次に鼻や喉の診察です。そして最も重要な検査が『内視鏡で上咽頭を直接診ること』です。上咽頭炎では後鼻漏が長引く例が多いのですが、これは副鼻腔炎(蓄膿症)にもよくある症状であるため、その鑑別も必要です。場合によってはレントゲンやCTなどの精密検査を行うこともあります。

Bスポット療法とは

Bスポット療法とは

編集部編集部

治療法にはどんなものがあるのでしょうか?

山西敏朗先生山西先生

基本的には、局所的な症状を抑える対症療法が中心におこなわれます。このほか、古くからおこなわれている「Bスポット療法」という治療法があります。

編集部編集部

Bスポット療法について教えてください。

山西敏朗先生山西先生

Bスポット療法は、炎症を抑える作用のある薬剤(塩化亜鉛溶液)を染み込ませた綿棒を上咽頭にこすり付ける治療法です。「上咽頭擦過療法」や「EAT」とも呼ばれます。

編集部編集部

この治療ではどんな効果が期待できるのでしょうか?

山西敏朗先生山西先生

上咽頭の炎症を抑えるほか、全身症状の改善も期待できます。塩化亜鉛溶液には抗炎症作用があるため、上咽頭にこすり塗ることが重要なポイントです。上咽頭をこすると、全身に広く分布する「迷走神経」という神経が刺激されます。これにより自律神経に作用し、上咽頭の炎症を抑える効果が期待できるのです。また、炎症を起こした上咽頭のうっ血状態を改善し、リンパ液や血液の循環を改善することで、全身症状の改善が期待できることもあります。

編集部編集部

なるほど。そんな効果もあるのですね。

山西敏朗先生山西先生

慢性的な鼻や喉の痛みや違和感、後鼻漏、アレルギー性鼻炎のほか、頭痛を伴う肩こりや喘息、めまい、手のひらや足の裏に繰り返し皮疹ができる「掌蹠膿疱症」(しょうせきのうほうしょう)にも効果があるという報告もあります。

Bスポット療法のリスクや注意点

Bスポット療法のリスクや注意点

編集部編集部

Bスポット療法では、一度受けるだけでも効果が実感できるのでしょうか?

山西敏朗先生山西先生

急性のものでは一度の治療でも効果が期待できることもあるといわれています。しかし、個人差があり、複数回の治療が必要な場合が多く見受けられます。通常は2週間に1回程度の治療を1ヶ月程度続けることで改善が期待できることもありますが、炎症の程度が強い場合には、週に1~2回程度、約3か月間ほどの治療が必要なケースもあります。そのため、治療回数は患者さんの症状の程度や経過に合わせて検討します。

編集部編集部

この治療では、痛みやリスクはありますか?

山西敏朗先生山西先生

初期段階では痛みを伴います。特に炎症の程度が強い場合には、痛みを強く感じることがあり、薬を塗布するため綿棒でこすった上咽頭からは出血が生じることもあります。施術後にも、鼻をかんだり唾を吐いたりすると、血液がまざります。しかし、治療を重ね上咽頭炎が改善するとともに出血や痛みもなくなっていくことがほとんどです。

編集部編集部

治療を受けるに当たっての注意点などはありますか?

山西敏朗先生山西先生

特にありません。しかし、治療中は強い痛みを感じたり、出血したりすることがあるほか、特に炎症の程度が強い場合には治療の後にも痛みが半日ほど強く残ることがあります。時間の経過とともに症状は治まりますが、万が一症状が治まらない場合には、主治医に相談してください。

編集部編集部

ありがとうございました。最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。

山西敏朗先生山西先生

Bスポット療法は上咽頭炎の治療法として古くからおこなわれている治療法です。最近では新型コロナウイルス感染症の後遺症対策としても注目を集めています。上咽頭炎の治療として高い効果が期待できる一方、治療では強い痛みや出血を生じることもあります。しかし、治療を重ねるごとにこのような症状も改善されるため、上咽頭炎による全身症状でお悩みの場合には、この療法を検討してみてはいかがでしょうか。

編集部まとめ

Bスポット療法では、喉や鼻だけでなく全身のさまざまな症状に効果が期待できるとのことでした。しかし、治療中は痛みを生じるほか、出血することもあります。一回で症状が改善することは少なく、通常は複数回の治療が必要になります。痛みや出血は回数を重ねるごとに軽減するとのことですが、このようなリスクがあることを踏まえ、治療回数は主治医と相談の上治療を進めましょう。

医院情報

耳鼻咽喉科山西クリニック

耳鼻咽喉科山西クリニック
所在地 〒162-0041 東京都新宿区早稲田鶴巻町518-21 第一石川ビル2F
アクセス 東京メトロ東西線「早稲田駅」3a出口より徒歩5分
JR「高田馬場駅」より都営バス「早大正門行き」早大正門前下車徒歩1分
診療科目 耳鼻咽喉科

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