【人食いバクテリア】致死率30%の劇症型溶血性レンサ球菌感染症 患者数が過去最多に
別名「人食いバクテリア」とも呼ばれる劇症型溶血性レンサ球菌感染症の2023年の患者報告数が過去最多となったことがわかりました。この内容について郷医師に伺いました。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは?
劇症型溶血性レンサ球菌感染症とはどういう病気なのか教えてください。
郷先生
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は1987年にアメリカで最初に報告された病気です。日本では1992年に初めて症例が報告されました。毎年の患者数は100~200人ほど、このうち約30%が死亡しているという致死率が高い感染症でもあります。主な病原体は子どもが罹患すると咽頭炎を引き起こす「A群溶血性レンサ球菌」です。劇症型溶血性レンサ球菌感染症は幅広い年代で起こりますが、特に30歳以上の大人に多いのが特徴でもあります。初期症状は、手足の痛み、炎症による腫れ、発熱、血圧低下などです。病状の進行は早く、発病後数十時間以内には軟部組織壊死、急性腎不全、成人型呼吸窮迫症候群、播種性血管内凝固症候群、多臓器不全を引き起こし、ショック状態から死に至ることも多くなっています。また、最近では妊産婦の感染例が報告されています。治療薬は、ペニシリン系の抗菌薬が用いられます。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症の患者報告数は?
劇症型溶血性レンサ球菌感染症の感染状況について教えてください。
郷先生
国立感染症研究所によると、2023年の1年間に全国から報告された劇症型溶血性レンサ球菌感染症患者の数は速報値で941人となりました。これまで1年間の患者数が最も多かった2019年の894人を上回り、現在の方法で統計を取り始めて以来最多の報告患者数となっています。また、2023年7月から12月中旬までに報告された50歳未満の患者65名中21人が死亡していたということです。国立感染症研究所は、2010年代に英国で流行した病原性・伝播性が高いUK系統株が2023年夏以降に日本国内で初めて確認されていることも明らかにし、「公衆衛生対応として、臨床医への適切な診断・治療・報告の推奨、一般市民へは感染予防策の啓発、有症状時の早期受診の推奨が必要と考えられる」として、注意を呼びかけています。
患者数報告が過去最多となったことへの受け止めは?
劇症型溶血性レンサ球菌感染症の患者数が過去最多になったことへの受け止めを教えてください。
郷先生
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は重篤な経過をたどるため、早期発見・早期治療が重要になります。しかし、あまり啓蒙されていないこともあり、重篤な状態になってから総合病院に搬送されることも少なくありません。特に糖尿病などの合併症がある人は感染しやすく重篤化もしやすいので注意が必要です。元々そのような合併症がある人は、特に注意が必要でしょう。ただし、そのような合併症がなくても感染する事例は報告されているので、少しでもおかしいと思ったらすぐに受診するようにしましょう。
まとめ
人食いバクテリアとも呼ばれる劇症型溶血性レンサ球菌感染症について、2023年の患者報告数が過去最多となったことが今回のニュースでわかりました。手洗いうがいなどの基本的な感染症予防を基本に、個人でできる感染対策はしっかりとする必要があります。