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「溶連菌感染症」とは?症状・原因・検査についても解説!【医師監修】

 更新日:2023/07/13
「溶連菌感染症」とは?症状・原因・検査についても解説!【医師監修】

溶連菌感染症とは、レンサ球菌属Streptococcusの細菌である溶血性連鎖球菌を原因とする感染症で、一般的に鼻や喉の粘膜、扁桃腺に感染し、咽頭炎、肺炎の他、創傷、皮膚、心臓弁、血流の感染症など多くの症状を引き起こします。

溶連菌感染症について、症状、検査・診断、治療法を解説します。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

溶連菌感染症とは

溶連菌感染症とは、どんな病気ですか?

    溶連菌感染症は、A群β溶血性連鎖球菌=溶連菌の感染によって起きる咽頭炎です。
    かつて猩紅熱と言われ重症化するタイプも見られましたが、現在は抗生剤の内服によりほとんど問題無く治癒します。

    溶連菌に感染すると、感染後2~5日程度の潜伏期間の後、発熱や咽頭痛が発症します。主な初期症状は、発熱(38~39℃)の他、手足の赤い発疹、舌の表面の赤いぶつぶつ(=苺舌)などです。風邪のように咳や鼻水が出ないのが、この病気の特徴です。

    扁桃腺が弱い方が感染しやすい病気です。また、6~15歳の児童に多く見られますが、最近では成人でも感染が見られます。家族内での感染率は20〜60%と高いので、子どもが溶連菌感染症と診断された場合には、マスクを着用して飛沫を防ぎ、手洗い、うがいを徹底することが大切です。

    溶連菌の感染は、咽頭、中耳、副鼻腔、肺、皮膚、皮下組織、心臓弁、血流など様々な部位に生じます。

溶連菌感染症の症状

溶連菌感染症 症状

溶連菌感染症の症状はどのようなものですか?

    溶連菌感染症の症状は、全身倦怠感、38℃以上の発熱、唾を飲み込むと喉が痛い、喉や扁桃腺が腫れ、この中に白い部分が見られる、咳やくしゃみがほとんど出ない、鼻水、鼻詰まり等の症状があまりない、腰、肘、膝、脚など比較的大きい関節の痛みや腫れ、などで、症状の重い風邪やインフルエンザと似た症状を呈します。

    また、大人が感染すると咽頭痛に加え初期症状として頭痛が見られます。喉の痛みや関節痛、倦怠感などを感じ、インフルエンザ検査を受けても陰性と出るため、ただの風邪と判断してしまう場合があります。

    溶連菌が活発に活動するのは、11月から4月で、特に11月~2月の冬季はインフルエンザとの判別が難しい季節です。感染経路は、感染者のくしゃみや咳で飛び散った菌を吸い込んでしまう飛沫感染、タオルや食器などを通して感染する接触感染の2通りです。

    溶連球菌咽頭炎は通常5歳から15歳の小児に起こり、3歳未満での発症はまれです。症状は突然喉の痛みが発症し、悪寒、発熱、頭痛、吐き気、嘔吐、全身倦怠感が見られます。喉が真っ赤になり、扁桃の腫れ、膿の斑点、首のリンパ節に腫れと圧痛が見られます。

    喉の痛みを訴える患者で、咳や目の充血、声がれ、下痢、鼻づまりが見られる場合には連鎖球菌ではなくウイルスの感染が原因と考えられます。感染部位ごとの症状は、皮膚では感染した部位が赤くなり皮下の組織が腫れ、痛みを伴う蜂窩織炎(ほうかしきえん)やかさぶたと黄色い痂皮を伴うただれができる膿痂疹(のうかしん)が見られます。

    筋肉を覆う結合組織(筋膜)が感染すると壊死性筋膜炎が見られ、急な悪寒や発熱、重度の痛みと圧痛が感染部位に見られます。また、猩紅熱は今日ではまれですが、主に小児に発生し連鎖球菌咽頭炎後に起こりますが、連鎖球菌による皮膚感染症後に起こることもあります。学校や保育所など人同士で濃厚な接触がある環境で集団感染が起こります。

    猩紅熱の症状は、先ず顔に発疹が現れ、その後体幹、腕、脚に広がり、発疹に触れると目の粗い紙やすりのように感じます。発疹は脚と体幹の間の屈曲部のような、皮膚同士の接触やこすれ合う部分で悪化します。

    発疹が治まると皮膚は剥がれ、舌に黄色味がかった白い膜で覆われた赤い隆起が発生し、この膜が剥がれ舌が真っ赤になります(苺舌)。

合併症

溶連菌感染症の合併症はどのようなものですか?

    溶連菌感染症を治療せずにいると合併症が発生する場合があります。一部の合併症は感染が周辺組織に広がり中耳炎、気管支炎、リンパ節炎などを発症します。また耳の感染が副鼻腔に広がり副鼻腔炎を発症したり、耳の後ろで隆起している骨である乳様突起に広がり、乳様突起炎を発症したりします。

    扁桃炎などの症状から少し時間が経ってから、遠く離れた臓器に合併症が発症する場合もあり、腎臓に糸球体腎炎が発症したり、リウマチ熱が発生したりします。毒素性ショック症候群は発疹、発熱、複数の臓器不全、危険な低血圧など進行が速い重度の症状を起こし、これはA群連鎖球菌または黄色ブドウ球菌が作る毒素によるものです。

    急性腎炎は溶連菌感染後2〜4週間後に発症することがあり、突然、むくみ、尿の出が悪くなり、尿に血液や蛋白が混じる血尿や蛋白尿が見られます。急性腎炎を見逃さないために、溶連菌感染2〜4週間後に尿検査を実施します。

    この時点で尿検査に異常が見られなくてもその後に急性腎炎を発症することがあるため、明らかな血尿(濃い赤色尿)やまぶたの腫れ(眼瞼浮腫)に気を付けましょう。溶連菌感染が原因のリウマチ熱は、最近はほとんど見られませんが、心臓に溶連菌が感染すると重症になる可能性が高いです。治癒しても心臓弁膜症を予防するため、長期に服薬が必要となります。

    アレルギー性紫斑病は、主に下肢に生じる出血斑、腹痛、関節痛が見られ腎炎症状も併発すると紫斑病性腎炎と言って長引く場合があります。

溶連菌感染症の原因

溶連菌感染症の原因はどのようなものですか?

    溶連菌咽頭炎はA群β溶血性レンサ球菌と呼ばれる細菌に感染することが原因で発症します。

    連鎖球菌は培養した時の形態と化学的組成の違いによりいくつかのグループに分けられ、各グループは、特定種類の感染症を引き起こす傾向にあります。人に病気を起こす可能性が高いグループは、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、緑色連鎖球菌ですが、肺炎連鎖球菌はこれらとは、別に扱われます。

    A群連鎖球菌は、ほとんどの場合は通常の接触で拡大することはありませんが、学生寮や学校、軍の兵舎など、人が密集した場所で広がることがあります。抗菌薬の投与から24時間以上経過した後であれば、他者への感染はありません。

溶連菌感染症の検査・診断

溶連菌感染症の検査と診断はどのようにしますか?

    溶連菌感染症の診断法は、病気の種類によって異なります。連鎖球菌咽頭炎では、発熱、首のリンパ節の腫れと圧痛、扁桃内部や表面の膿、咳が見られないなどの症状から連鎖球菌咽頭炎を疑います。

    連鎖球菌咽頭炎を診断することで、抗菌薬の使用によりリウマチ熱などの合併症の発生率を下げることができます。A群連鎖球菌咽頭炎の症状は、ウイルスによる咽頭感染症に類似していることが多く、ウイルス感染症は抗菌薬で治療すべきでは無いため、診断確定の補助として、迅速検査が用いられることがあります。

    迅速検査は約15分程度で分で検査結果の確認が可能です。この検査は喉から綿棒でサンプルを採取します。この検査により陽性が確認され連鎖球菌咽頭炎の確定診断ができる場合は、時間の掛かる咽頭培養検査は実施しませんが、迅速検査で検出できない偽陰性結果となる場合があります。

    小児と青年で迅速検査で陰性の結果が出た場合は、培養検査が必要です。綿棒で喉から採取したサンプルを検査室で培養し、A群連鎖球菌が原因の場合一晩で増殖します。しかし、成人では連鎖球菌感染症によるリウマチ熱の発生リスクが非常に低いため、迅速検査の結果が陰性であれば培養検査は実施しません。

    A群連鎖球菌が特定された場合、その菌に効果を示す抗菌薬を調べる感受性試験を行う場合もあります。また、症状が見られるか連鎖球菌感染症合併症を起こしたことがある患者では、連鎖球菌感染症発症者との濃厚接触の有無の確認も重要です。

溶連菌感染症の治療

溶連菌感染症 治療

溶連菌感染症の治療はどのようなものですか?

    溶連菌感染症の治療には、ペニシリン系の抗生物質(サワシリンやパセトシン、ワイドシリンなど)の経口投与を行います。重篤な感染症に対しては静脈内投与も行います。ペニシリン系抗生物質にアレルギーがある患者では、エリスロマイシン、クラリスロマイシンの内服を行います。また、セフェム系の抗生剤を使用することもあります。

    急性糸球体腎炎やリウマチ熱など、非化膿性の合併症予防のために、少なくともペニシリン系で10日間、セフェム系で7日間は内服が必要です。早めに内服を開始することが大切です。

    発熱、頭痛、喉の痛みには、痛みと発熱を軽減するアセトアミノフェンや非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)などの解熱鎮痛薬を投与します。しかし、小児ではライ症候群のリスクが高くなるため、アスピリンは投与すべきではありません。

    また、きちんと薬を服用しているにも関わらず、2~3日経っても熱が下がらない場合は、薬の効きにくい溶連菌に感染しているか、他の疾病を合併している可能性がありますので、早めに再受診することが大切です。

編集部まとめ

溶連菌感染症は、子供だけでなく成人も感染します。発熱や喉の痛みがある場合は、医療機関を受診しましょう。特に11月〜4月の流行期はインフルエンザとの判別がつきにくいので、検査が必要です。症状が治まっても抗生物質は最後まで飲み切りましょう。診断がつききちんと薬を服用すれば、回復する病気です。

この記事の監修医師