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「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」が流行拡大中、東京都は初の流行警報 9割が15歳未満

 公開日:2023/12/27
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東京都は、溶連菌による感染症で発熱やのどの痛みなどが出る「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」の流行警報を出しました。これは1999年の統計開始以降、都内で初めてのことです。このニュースについて中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の感染状況は?

東京都が統計開始以来、初めての流行警報を発表したA群溶血性レンサ球菌咽頭炎の感染状況について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

溶連菌感染症の一種であるA群溶血性レンサ球菌咽頭炎の感染状況ですが、国立感染症研究所が公表している感染症発生動向調査週報のデータによると、2023年12月4日~12月10日までの1週間に全国およそ3000の小児科の医療機関から報告された患者数は、前週より2078人多い1万5196人となりました。1医療機関あたりの患者数は前週を0.66人上回って4.83人となっています。2023年に入ってからの累計患者数は22万3657人となっています。

東京都では、2023年12月11日から17日の定点医療機関あたりの患者報告で、一定数を上回った保健所管内の人口の合計が都内全体の30%を超え、都の警報基準に達しました。そのため、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の流行警報を出しました。これは1999年の統計開始以降、都内で初めてのことです。東京都によると、2023年に入って報告された患者の9割超が15歳未満でした。なお、東京都のA群溶血性レンサ球菌咽頭炎の警報基準は「定点医療機関からの患者報告数が、都全体で警報レベル開始基準値を超えた場合、もしくは警報レベルにある保健所の管内人口の合計が、東京都全体の人口の30%を超えた場合」と定められています。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは?

東京都で流行警報発表となったA群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは、どのような病気なのか教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

A群溶血性レンサ球菌は、上気道炎や化膿性皮膚感染症などの原因菌としてよく知られている「グラム陽性菌」による感染症です。学童期の小児の感染が最も多くなっています。また、冬季と春から初夏にかけての2つのピークが認められている病気で、全体の報告数が増加傾向にあります。感染経路としては、通常は感染者との接触を介して広がっていき、家庭や学校などでの集団感染も多くみられます。急性期の感染率については兄弟間が最も高く、25%との報告もあります。潜伏期間は2~5日で、突然の発熱と全身の倦怠感、咽頭痛によって発症し、嘔吐を伴うケースもあります。治療にはペニシリン系薬剤などの薬が用いられます。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の流行状況への受け止めは?

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎については、東京都以外の自治体でも流行警報が出ている場所があります。こうした流行状況についての受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回のA群溶血性レンサ球菌咽頭炎の流行は、コロナ禍で感染の機会が抑制され、免疫力が低下していることが一因であると考えられます。また、新型コロナウイルスが5類となり、基本的な感染対策が緩和され、マスクの着用率が低下していることも影響していると考えられます。そのため、改めて基本的な感染対策(マスク・手洗い・うがい)を見直すことが重要です。発熱や咽頭痛などがあり、感染が疑われる場合は早めに医療機関を受診し、診断を受けるようにしてください。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の治療は抗生剤が有効であり、その際は決められた量と期間を遵守してください。自己判断で内服をやめてしまうと、菌が残る場合があります

まとめ

東京都が溶連菌による感染症で、発熱やのどの痛みなどが出るA群溶血性レンサ球菌咽頭炎の流行警報を出したことが今回のニュースでわかりました。今後も流行状況にも注視が必要です。

この記事の監修医師